【 DX に必要不可欠】データサイエンティストを育成するカリキュラムは?

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【 DX に必要不可欠】データサイエンティストを育成するカリキュラムは?

DX の必要性が叫ばれている昨今、データサイエンティストの必要性がより増してきています。

本記事では、DX の推進に欠かせないデータサイエンティストを育成するために、データサイエンティストの役割や必要スキル、そのスキルを獲得するために学習内容についてご紹介してまいります。

また、キカガクのDX を推進するデータサイエンティスト育成やデータリテラシー向上のため研修ついては下記記事でもご紹介しております。
データサイエンス 研修をお探しの方はこちらの記事もご参考ください。

データサイエンティストの不足状況

まずデータサイエンティストの状況から見ていきましょう。

下図は DX 白書 2023 の職種別のデジタル事業に対応する人材の「量」の確保の状況ですが、不足しているという企業が全体の 94.1 % となっています。
つまり、質もそうですが、まず数においてデータサイエンティストが圧倒的に不足していることがわかります。

出典:DX 白書 2023

DX に必要なデータサイエンティストとは

では、そもそもデータサイエンティストとはどんな人材なのでしょうか。

本章では、経済産業省とIPA(独立行政法人情報処理推進機構)にて設定されたデジタルスキル標準をもとに、DX に必要なデータサイエンティストの役割についてみていきましょう。

ここで、デジタルスキル標準とは、ビジネスパーソン全体に向けた DX の基礎知識やマインドスタンスを学習するための項目や、DX を推進するうえで必要な人材とスキルをまとめた指針で、DX リテラシー標準DX 推進スキル標準から構成されています。

デジタルスキル標準についての解説はこちらの記事でも実施しています。

デジタルスキル標準を活用した DX 人材育成のポイントを解説!
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デジタルスキル標準の DX 推進スキル標準とは

デジタルスキル標準を構成する標準の一つである DX 推進スキル標準は次のように示されています。

DXを推進する人材の役割や習得すべき知識・スキルを示し、それらを育成の仕組みに結び付けることで、リスキリングの促進、実践的な学びの場の創出、能力・スキルの見える化を実現する

出典:デジタルスキル標準 ver.1.0

つまり、DX を推進する人材の役割や習得すべきスキルの標準を体系化することで、今後 DX を推進する企業の助けになることを目指しています。

なお、DX 推進スキル標準については、次の記事で詳細にご紹介しております。

DX 推進スキル標準とは?本標準に沿ったポイントや教育方法をご紹介!
DX 推進スキル標準とは?本標準に沿ったポイントや教育方法をご紹介!

DX 推進スキル標準におけるデータサイエンティストへの期待

では、その DX スキル標準において、データサイエンティストはどういった役割を期待されているでしょうか。

DX スキル標準において、次のように記載されています。

社会全体のIT化・デジタル化の進展に伴って、企業・組織内で発生するデータの量は飛躍的に増大しつつあり、企業や組織におけるデータの整 備や効果的な活用は、企業や組織の競争力を高める上で、昨今きわめて重要な課題となっている。今やデータを効果的に活用できるかどうか が、DXの成否を左右すると言っても過言ではない状況にある。

「データサイエンティスト」は、このように企業や組織のDXにおいて不可欠なデータの活用領域を中心にDXの推進を担う人材である。データ活用が中心となるDXの推進においては、中核となる人材と言える。

引用:デジタルスキル標準 ver.1.0

つまり、DX 推進において必要不可欠であるデータ周りの中核人材として、このデータサイエンティストを規定しています。

DX 推進スキル標準における 5 つの人材類型とデータサイエンティスト

DX 推進スキル標準において、下図のように DX を推進する人材として 5 つの人材類型の一つにデータサイエンティストが規定されています。

下図:DX 推進スキル標準における 5 つの人材類型

出典:デジタルスキル標準 ver.1.0

データサイエンティストについての項目を抜粋すると下記のようになります。

人材類型

役割

データサイエンティスト

DX の推進において、
データを活用した業務変革や新規ビジネスの実現に向けて、
データを収集・解析する仕組みの設計・実装・運用を担う人材

出典:デジタルスキル標準 ver.1.0

つまり、上記の期待同様、データ整備からデータ活用まで、データを用いて生産性向上や新規ビジネス価値の創出を行う DX を推進していくことがデータサイエンティストであることがわかります。

DX 推進スキル標準におけるデータサイエンティストが担う業務

また、DX 推進スキル標準では、データサイエンティストの業務を次のように定義しています。

「データサイエンティスト」は、データの分析にとどまらず、データを活用したビジネス戦略の検討から、データの収集の方法や仕組みの検討、データ分析を行うための環境の設計・構築・運用に至るまで、幅広い業務を担う。さらに、データ活用の仕組みを現場の業務に導入し、その使い方につい て現場のユーザーに対する説明や教育を行い、実際に現場の業務を変革するといった業務も担当する。

このように、「データサイエンティスト」が担当する業務には、データ活用の領域においては、戦略の策定から、仮説検証、実装、運用、効果検証・ 改善などのすべてのプロセスを担当するため、他の人材類型である「ビジネスアーキテクト」や「デザイナー」に求められるようなビジネススキルのほか、 「ソフトウェアエンジニア」や「サイバーセキュリティ」に求められるような技術スキルなども必要となる場合もある。

データ活用の領域に関する専門性を中心に幅広い業務を担うことから、本スキル標準が想定するレベルの人材として活躍するためには多様なスキルが求められるという点が、「データサイエンティスト」の特徴である。

引用:デジタルスキル標準 ver.1.0

つまり、本標準におけるデータサイエンティストの役割はデータの基盤整理から利活用という業務だけでなく、戦略策定からデータ活用の浸透など多岐にわたることがわかります。

DX 推進スキル標準におけるデータサイエンティストのロール

まず、上記のデータサイエンスティストは次のロールに分かれます。ロールとは、DX 推進スキル標準の対象である企業・組織や個人にとって活用しやすいように、「人材類型」を業務の違いにより詳細に区分したものとなっています。
また、そのロールごとに役割を見ていきましょう。

人材類型

ロール

役割

データサイエンティスト

データビジネスストラテジスト

事業戦略に沿ったデータの活用戦略を考えるとともに、
戦略の具体化や実現を主導し、
顧客価値を拡大する業務変革やビジネス創出を実現する

データサイエンスプロフェッショナル

データの処理や解析を通じて、
顧客価値を拡大する業務の変革や、
ビジネスの創出につながる有意義な知見を導出する

データエンジニア

効果的なデータ分析環境の設計・実装・運用を通じて、
顧客価値を拡大する業務変革やビジネス創出を実現する

出典:デジタルスキル標準 ver.1.0

つまり、DX におけるデータサイエンティストは目的に応じて、上記の 3 役ないし、3 役的な動きが必要とされることがわかります。

DX に必要なデータサイエンティストのスキルとは?

では、具体的に DX 推進スキル標準におけるデータサイエンティストに求められる必要スキルをロール別に見ていきましょう。今回は各ロールにおいて、重要度 A とされているスキルに絞ってご紹介します。

人材類型

ロール

重要度

必要スキル

データサイエンティスト

データビジネスストラテジスト

A

・データ理解/活用
・データ/ AI 活用戦略
・データ/ AI 活用業務の設計/事業実装/評価

データサイエンティスプロフェッショナル

A

・数理統計/多変量解析/データ可視化
・機械学習/深層学習

データエンジニアリング

A

・データ活用基盤設計
・データ活用基盤実装/運営

出典:デジタルスキル標準 ver.1.0

上記のように 3 役明確に人材を規定できる会社はロールごとに必要スキルを育成していけば良さそうです。

ただし、会社によっては、上記 3 役が明確に分けられているわけではなく、各人材がそれぞれ横断的に上記スキルを獲得していく必要があります。これは会社の状況や自社課題に合わせてアレンジしていく必要があります。

例えば、下記コニカミノルタ株式会社はデータサイエンティストの育成はすでに大成功しており、データサイエンティスト自身に業務をより効果的に実施してもらうため、データエンジニアスキルの育成を行っています。

【事例:OA 機器業界】株式会社コニカミノルタ様:更なるデータ活用のためデータ基盤を設計・構築できる人材を育成したい
【事例:OA 機器業界】株式会社コニカミノルタ様:更なるデータ活用のためデータ基盤を設計・構築できる人材を育成したい

データサイエンティストの育成に必要なカリキュラムは?

では実際に DX を推進するデータサイエンティストを育成するために必要な学習項目(カリキュラム)例をご紹介します。
上記のスキルを育成するには、どういった学習を実施すればよいか見ていきましょう。

必要スキル

スキルの説明

カリキュラム例

データ理解/活用

グラフ/図表等を含む統計情報や
各種分析手法を適用したデータ分析結果を正確に理解し、
その意味や背景を深く洞察するスキル

・データ理解(データ理解、意味合いの抽出、洞察)
・ データの理解/検証(統計情報への正しい理解、データ確認、俯瞰/メタ思考、データ 理解、データ粒度)

データ/ AI 活用戦略

事業戦略や組織的課題、顧客ニーズ等を踏まえて、
データ/ AI 技術を活用した課題解決方法や
新たなビジネスモデルを提案するスキル

・着想/デザイン(着想、デザイン、AI 活用検討、開示/非開示の決定)
・課題の定義(KPI、スコーピング、価値の見積り)

データ/ AI 活用業務の設計/事業実装/評価

データ/ AI 戦略上の目的の実現に向けたアプローチを設計した上で、
データ/ AI 分析の仕組みを現場に実装し、
継続的に改善するスキル

・アプローチ設計(データ入手、AI-ready、アプローチ設計、分析アプローチ設計)
・分析評価(評価、業務へのフィードバック)
・事業への実装(実装、評価・改善の仕組み)
・プロジェクトマネジメント(プロジェクト発足、プロジェクト計画、運用、横展開、方針転 換、完了、リソースマネジメント、リスクマネジメント)

数理統計多変量解析/データ可視化

統計学的知見に基づく手法を用いて、
データを解析し、その結果を洞察するスキル

・基礎数学 (統計数理基礎、線形代数基礎、微分/積分基礎、集合論基礎)
・予測 (回帰/分類、評価)、推定/検定、グルーピング(グルーピング、異常検知)
・性質/関係性の把握(性質・関係性の把握、グラフィカルモデル、因果推論)
・サンプリング
・データ加工(データクレンジング、データ加工、特徴量エンジニアリング)
・意味合いの抽出/洞察
・データ可視化(方向性定義、軸出し、データ加工、表現・実装技法、意味抽出)
・時系列分析、パターン発見、シミュレーション/データ同化、最適化

機械学習/深層学習

機械学習や深層学習、
自然言語処理・画像認識・音声認識などの手法を用いて、
適切なモデルを構築し評価するスキル

・機械学習
・深層学習
・強化学習
・自然言語処理
・画像認識
・映像認識
・音声認識

データ活用基盤設計

データから成果を生むデータ活用基盤の準備において、
必要なシステム環境や収集データ、
テーブルなどの要件を固めるスキル

・環境構築(システム企画、システム設計、アーキテクチャ設計)
・データ収集(クライアント技術、通信技術、データ抽出、データ収集、データ統合)
・データ構造(基礎知識、要件定義、テーブル定義、テーブル設計)

データ活用基盤実装/運営

データから成果を生むデータ活用基盤を実装し、円滑かつ効果 的に運用するために必要なデータを扱うスキル

・データ蓄積(DWH、分散技術、クラウド、リアルタイム処理、キャッシュ技術、データ蓄 積技術、検索技術)
・データ加工(フィルタリング処理、ソート処理、結合処理、前処理、マッピング処理、サ ンプリング処理、集計処理、変換/演算処理)
・データ共有(データ出力、データ展開、データ連携)
・プログラミング(基礎プログラミング、拡張プログラミング、アルゴリズム、分析プログラム、 SQL)
・AIシステム運用(ソース管理、AutoML、MLOps、AIOps)

出典:デジタルスキル標準 ver.1.0

変革を伴う DX を推進できるデータサイエンティストを育成するために、データ戦略の立案から解析・AI 活用、データ基盤整理まで幅広い知識やスキルが必要となります。

例えば、「機械学習/深層学習」の領域一つとっても、内容は機械学習・深層学習(ディープラーニング)をベースとして、画像認識、自然言語処理、映像認識、音声認識と一つの分野だけで数日から、実現場の活用まで見据えると数ヶ月必要な項目もあります。

なので、上記の学習内容をまるっとそのまま実施するのではなく、自社の目指すべきビジョンや自社における課題を前提として、そこから逆算して上記から必要項目を上記からピックアップし、カスタマイズすることが何よりも重要になります。

最後に

最後までお読みいただきありがとうございました。
本記事では DX を推進する中核人材となるデータサイエンティストに求められる役割やスキルを見てきました。デジタルスキル標準にもあるように、真の意味で DX を推進するには、このデータサイエンティストの育成が不可欠となります。


キカガクでは、多くの企業のデータサイエンティストの育成を支援してまいりました。
データサイエンティストを育成するにあたり、どういった業界の企業がどういった課題を解決するために、上記の研修をどう組み合わせ、カスタマイズを実施したのか等を様々な業界業種 20 種類以上の導入事例でご紹介しております。本記事を含め、データサイエンティストの育成に悩まれている方のご参考になれば幸いです。

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