はじめに

本日2017年12月31日をもって、株式会社キカガクの1期目が終了します。
会社を創業して右も左も分からない私にとって、多くの方の支援があってこその1年でした。
お会い出来たみなさま、SNSで支えてくださったみなさま、本当にありがとうございます。

明日2018年より2期目に突入し、これから更に多くの方へ貢献できるよう精進いたしますので、引き続きよろしくお願いいたします。

それでは、1年の締めということで、創業して1年目を振り返ります。

この記事はこれから会社を創業しようと思っている人に向け、そして、数年後の私に向けて書きました。
これから新しいことへ挑戦される方の助けとなりますように。

創業のはじまり

もともとは株式会社Caratの1事業として始まった機械学習の教育サービスであるキカガク
そこから本格的にこの教育サービスをビジネスとして展開していきたいという想いから、Caratの一事業ではなく、株式会社キカガクとして法人化させ、そして、単なる教育では終わらない会社にしていこうと決めました。

『キカガク』は機械学習の略として覚えてもらいやすいように、この名前に決めましたが、それ以外にも上記のように各文字をPDCAの頭文字としています。

  • キ:教育 -> 何ができるかを知ることで、機械学習を応用する場面が見えてきます
  • カ:課題設定 -> できることがわかった後にどのように実現していくかを考えます
  • ガ:学習モデル構築 -> 定めた目標を達成するためのデータ解析を行います
  • ク:組み込み -> 解析した結果を永続的に使用するためにシステムへの統合を行います

このように、いまではキカガクが『AI教育の会社』として紹介される場面が多くありますが、会社の方針として、教育だけではなく、機械学習のPDCAを回す工程の全体をスコープとして定めました。

参考記事:株式会社キカガクを設立いたしました。 | キカガク代表のブログ

ちなみに、キカガクのロゴは99designsというデザイナーがコンペティション形式でデザインを競い合い、一番気に入ったものを使用できるといった新しいスタイルのサイトで作成しました。
* 起業家として、新しいサービスを使いながら、他の人のビジネスモデルの善し悪しの検討もよく行っていました。

今でもこの判断は正解だったと思っています。
今年は1年間でオフラインの方で約1000名、オンラインで約1500名に指導することができました。
その指導した生徒の中には、実際にビジネスで活用する人も出てきており、私自身がお伝えしている『運用までを踏まえた解析の大事さ』が痛いほどよく分かると話されています。

そういった背景から、『教科書の内容を分かりやすく噛み砕いて教えることができたとしても、現場で必要なスキルを伝えることはできない』と感じ、現場で使われている実践的な内容をカリキュラムへフィードバックしていけることを弊社の強みとしています。
この『現場で使われている実践的な内容をフィードバック』するために、私自身が今年1年間で大手企業6社とコンサルティング契約を行って、現場の案件を現場の技術者の方と一緒に泥臭く進めていきました。
うまく進めることができる案件もあれば、技術的もしくは経営的にうまく進めることができない案件もあり、やはり『数学やプログラミングを学ぶ=機械学習案件の導入に成功する』といったスコープの狭さではうまくいかないことを実感しました。

しかし、『基礎なくして応用なし』であることも事実であり、創業して最初の数ヶ月間はキカガクのキである『教育』に専念することからはじめました。

1月〜3月:ひたすら目の前のイベントをこなす日々

起業当初の授業の様子

京都大学大学院の修士課程を修了して、新卒入社した会社を7ヶ月で退職して起業した私にとって、研究者としてもビジネスパーソンとしても知名度は全くありませんでした。
しかも、生活の資金もほとんどありません。

しかし、やる気と根拠のない自信だけはあった私にとって、がむしゃらに動き回ることは全く苦ではなく、Connpassのサイトに勉強会ページを作り、集客はそこにおまかせして、集まっていただけた方に勉強を教えるといった日々が続きました。
もちろんオフィスはないわけで、SpaceMarketなどの『イベントスペースを借りたい人と貸したい人』を繋ぐCtoCサービスをフル活用しながらイベントスペースを借りて、そこで勉強会を行っていました。
その時にできた最初のセミナーが『人工知能・機械学習 脱ブラックボックスセミナー』です。
参考記事:【第1回】機械学習・人工知能セミナーを開催しました | キカガク代表のブログ

機械学習を専攻している自分としては最初から全自動でこのようなイベント運営をできればと思う気持ちもあったのですが、
オペレーションしながら優先度が高い点が見つかり、この優先度が高いものから自動化していくほど費用対効果が高い
と限られた時間の取捨選択の大事さも痛感していたため、最初はすべて一人で手動オペレーションと割り切っていました。

ちなみに、これまでエンジニアとして働いてきた私にとって、初回のセミナーでは「領収書もらえますか?」と言われた一言が衝撃的で、「そうだ、お金を受け取るということは領収書がいるのか!」とビジネスを行うには、単にサービスを提供するだけでなく、その周辺の知識もしっかりと付けておかないといけないことを自覚しました。
領収書はコンビニで購入して、50000円以上の場合は収入印紙を貼るなどの当たり前の知識もWebで検索して覚え、管理的には現金での受取りはあまり好ましくないとのことで、後々は銀行振込にしてもらうなど少しずつ改善していきました。
企業では請求書払いを好まれるケースも多く、そういうときはmisocaを使用して請求書を作成していました。
現在では、会社の経理にMFクラウド会計を使用していることもあり、MFクラウド請求書へと移行していきました。

第1回:受講生懇親会の写真

最初は世の中のニーズと一致して、特に宣伝することなく集客ができていたのですが、もちろんそれが継続することもなく、セミナーを開始して1ヶ月経った2月の後半には少しずつ人の集まりが悪くなり、これを継続的に続けていくためにはどのような施策が必要かと考えるようになりました。
本来であれば広告費をかけて集客するところですが、資金的にも余裕のなかった私にとって工夫して乗り切る必要がありました。

そこで考えついたのが『キカガクNight!』
参加費が無料で、もし面白ければその方の意思で払う金額を決めてもらうという企画でした。
受ける側にも本気になってもらい、こちらも本気で応えるこの企画。

結果は大成功

一気にイベントへの参加者が増え、この頃に1ヶ月で200名以上とお会いしたのが懐かしいです。

この企画の経緯はこちらの記事にまとめています。
参考記事:無料セミナーは悪循環に陥りがちだが、キカガクは参加無料のセミナーを開催します | キカガク代表のブログ

4月〜6月:念願のオフィス開設で会社らしく

毎回セミナーのイベント会場を抑えることが手間となり、費用対効果を考えてもそろそろオフィスの開設ができるのではないかと、オフィス開設を考え始めました。
本当は2月の後半から探し始めたのですが、なかなか良い物件が決まらず、仮に決まったとしても大家さんからのNGがでてしまったり、迷っているうちに他の人に契約をされてしまったりと、1ヶ月以上物件を決めることができませんでした。
この時に、自分の信用力の無さを実感しました。
参考:起業後にオフィスを借りることがこんなに大変だとは思ってもみなかった件 | キカガク代表のブログ

そのような中、広くて間取りも良く素晴らしい場所を発見し、早速見学を申し入れ、その日に契約書も持っていき提出しました。
他にも見学者がいたのですが、そのスピード感で決められること、そして、その大家さんが人工知能の教育はこれから必要だと事業内容にも共感していただけたことが非常に大きな決め手でした。

開設直後の池袋オフィス

この頃まで一人で会社の運営を行っていたのですが、イベント準備、集客、メール連絡、セミナー講義、問合せ対応、経理などひとりの仕事量に限界を感じ始めました。
自分で言うのも変ですが、他の人よりは同じ時間で多くのアウトプットを出すことが得意であったため、起業したての頃は他の人に期待して任せるよりも、まずは自分ひとりで歯を食いしばって頑張るべきといった持論がありました。
そのために、仕事術として下記のように『やらない事』もきっちりと決めて仕事をしていました。
参考:【起業して4ヶ月】思い切って辞めた3つの選択 | キカガク代表のブログ

7月〜9月:大きな連携で一気に進展

今年の5月に発表され、日本中を沸かせた『Preferred Networks とマイクロソフト、ディープラーニングソリューション分野で戦略的協業』。
そして、この発表の中で3つの軸として『人材育成』にフォーカスが当たっています。

この5月の発表を前にして、Facebook Messanger経由で一通の連絡がありました。
なんと日本マイクロソフトの方から。

AIで有名な日本の会社とマイクロソフトがアライアンスを進めており、そのトレーニング展開に弊社と協業したいとのご連絡でした。

あまりにも突然の連絡であり、全く実感がわかず、まだ私一人の弊社にそんな大きな話が来るはずがないと、その連絡には返信をしていませんでした。
* 今となっては、本当にすいません m(_ _)m 汗

しかし、その数日後、会社のお問い合わせから同じメッセージがまた一通届き、これは本当の話ではないか?と少し信じました。

ただ、自分がマイクロソフトの社員であれば、弊社に声をかけることなど、まずありえないため、どう考えても腑に落ちない。。。
そんな中、実際に会って話してみることにしました。
まず話せば良いのではと思われるかもしれませんが、私自身、会ってみると楽しくなってすぐに決めてしまう性格なので、会う前にある程度フィルタリングするように気をつけています。

会ってみると、その場で意気投合。
マイクロソフト社員の方も京都大学出身ということで、懐かしい学生時代の話に花を咲かせました。

聞いてみると、キカガクの講義の評判を聞き、声をかけていただけたそうで、地道ですが、目の前のお客様の満足度を考えた授業を精一杯頑張ってきた甲斐があったなと実感したときでした。

間違いなく今年一番お世話になったマイクロソフトの廣野さんとの一枚

そして、マイクロソフトの執行役員の方、そして、Preferred Networksの社長へのプレゼンを無事に終え、弊社が日本マイクロソフト・Preferred Networks公認のトレーニング企業となることができました。
参考:キカガク、マイクロソフト・Preferred Networksの人工知能分野における人材育成施策に参画。ディープラーニング ハンズオンセミナーを7月から開催。

そこから、7月19日の初回セミナーに向け、企画からカリキュラム作成(PFNの方のレビューまでいただきました)、チラシ作成、現場のオペレーション整備など、人生初めての協業でわからないことだらけでしたが、多くの方に助けてもらいながら、がむしゃらに夜遅くまで働き続け、なんとか記念すべき第1回目のセミナーを迎えることができました。

【満足度100%】第1回ディープラーニングハンズオンセミナーを開催

 

そして、その中で社員として、今西くんがジョインしてくれました。
彼は7月からジョインしてくれ、この1月からCLO (Chief Learning Officer)という教育事業ならではのポジションについてもらうことになるほど、この1年間頑張ってくれました。

ほんと、彼に出会え、そして彼がキカガクを選んでくれて感謝です。
これからも一緒に頑張ろうね。

キカガク新卒1人目はこの私です。

9月〜12月:怒涛のイベント登壇

7月からはじまったDeep Learning ハンズオンセミナーが一段落して、今西くんにセミナー講義も任せられるようになり、時間に余裕ができたため、他の人からお話を頂いていたイベント登壇やセミナー協業を進めていきました。

自社以外で登壇させていただいたセミナー
・9/1:Microsoft Japan Partner Conference 『Microsoft Azure と Chainer によるディープラーニング実装ハンズオンセミナー』
・9/7:PyconJP2017 Chainerで学ぶディープラーニング入門
・9/26:株式会社ジーアングル 『AI・機械学習 × ロボットアプリの可能性
・10/1:Yuxio(ゆきしお)さん主催 『データ分析・機械学習LT会
・10/24:Deep Learning Lab『満足度100% ディープラーニングハンズオンで始めるAI ビジネス
・11/18:ヒューマンネットワーク高専 『日本の産業を盛り上げたい その答えは人工知能・機械学習の教育でした
・12/7:リテールAI研究会 『AIビジネス活用の現状と現場で起きている問題
・12/17:Chainer Beginner’s Hands-on #02 『Chainerで学ぶディープラーニング入門
・12/18:東証一部上場企業役員向け 『AIビジネス活用の現状と現場で起きている問題

そして、この9月から12月の間には上記のイベント登壇だけでなく、下記の3つのセミナーも増やしていきました。

システム自動化セミナー:機械学習を使う前にシステムを自動化するだけで解決できる案件が多いと気付き、Webシステム構築からデータ収集まで網羅した内容です。
データサイエンスセミナー:データの前処理が非常に重要であるにも関わらず、なかなか『機械学習』といった枠組みではお伝えしきれない部分にフォーカスを当てた内容です。
データエンジニアリングセミナー:機械学習のモデルを学習した後に運用することまで説明されているセミナーがほとんどなく、この『運用』にフォーカスを当てた内容です。

上記のセミナーもオフラインで脱ブラックボックスセミナーを行う中で受講生からでてきた要望であり、現場の意見を取り入れたとても良い内容となりました。
ただし、2日間のセミナー内容のカリキュラム作成は非常に大変であり、各セミナーごとに企画からセミナー開始まで約1ヶ月ずつかかり、こちらもなんとか時間がない中で合間を縫って作成し続けました。

そして、自社セミナー以外にも他の方々と協力して面白い企画も始めました。

実践!機械学習 ビジネス活用講座 | 日経ビッグデータ
 これから求められる『橋渡し人材』を育成するための1ヶ月間のセミナーです。

アルゴリズム論 | G’s Academy 
 ライブラリが充実する中、自ら考えて実装できるようになる人材を育成するための授業です。
従来のアルゴリズム論の内容とは異なり、これからはライブラリを駆使しながら、いかにうまくプロダクトへ組み込むかを演習形式で習得してもらいます。
– Pythonの基礎、アルゴリズムの高速化
– データの圧縮、リコメンド、最適化

Data Science BOOTCAMP | SOMPOホールディングス・G’s ACADEMY
 Fitbitや運転情報を使用して現場のデータ解析を学べる企画です。
メンターとして参画しており、第2回チーム発表では担当チームが優勝しました。

データサイエンティスト養成研修 | 京都府・SOMPOホールディングス
 行政にもデータ活用を進めていくべく、京都府のデータサイエンティスト養成人材に主席講師に抜擢していただきました。

【キカガク流】人工知能・機械学習 脱ブラックボックス講座 – 初級編 – | Udemy・ベネッセホールディングス
 人気講座である脱ブラックボックスセミナーをUdemy用にアレンジしました。
データサイエンスで最も人気のある授業に選んでいただいています。

そして、色々な取材もしていただきました。

このようにこの3ヶ月間、自分のセミナー運営等の仕事以外に、取材、新規企画、メンター活動などほぼ休みのない日々でしたが、非常に充実していました。
お話をいただいたみなさま、ありがとうございました。
来年からもさらに面白い企画をできるよう頑張りますので、よろしくお願いいたします。

まとめ

1年前の自分からは想像もつかない1年となりました。

ただし大事にし続けたことは同じで、『目の前のお客様にどのような話をすると一番喜んでもらえるのか?』、そして、『その成果を出すために最小限の労力で実現できる方法は?』でした。
今でも正社員は私と今西くんの2人であり、その少ないリソースの中で、通常のセミナー運営と他社との協業をたくさん進めて行かなければいけません。
そのためにがむしゃらに頑張るのではなく、『考えながら走り続けること』が最も大事でした。

企画は走り始めなければ始まらない。
でもがむしゃらに走り続けると体力不足で倒れてしまう。
そのためにも、まずは身軽に走り出すけれども、その走り方には工夫をして、体力を持続しながら走り続ける。
そんなことを毎日毎日考えていた1年でした。

来年もたくさんの企画を仕込んでおり、さらに大きくなれる一年にしていきます。
社員も増えます。
責任も増します。
日本の産業を自分たちなら盛り上げられると信じ、来年からも貪欲に取り組んでいきます。

最後になりましたが、みなさま、本年は大変お世話になりました。
そして、2018年も引き続き、株式会社キカガクをどうぞよろしくお願いいたします。

良いお年を。

株式会社キカガク 代表取締役社長
吉崎 亮介