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【自治体DX】自治体における DX とは〜取り組み事例を交えて解説〜
DX を推進していくにあたり、「どのように DX を推進していけばよいか分からない」、「DX の推進をすでに実施しているが中々前に進まない」といった悩みを抱えている自治体の方は少なくありません。本記事では、そのような悩みを抱えている方に向け、DX をどのように進めていくべきポイントを事例を交えてご紹介いたします。
DXとは何か?
本章では、そもそも DX が何を指すのか、なぜ必要なのか、そして既に DX を成功させているビジネスや自治体の事例について説明します。
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは
DX(デジタルトランスフォーメーション)について、経済産業省は以下のように定義しています。
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズをもとに、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」
つまり DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、ビジネスや組織がテクノロジーの力を利用して変革を達成し、新しい価値を創造し、競争力を強化するプロセスを指します。
なぜ DX は必要なのか
現代の社会は急速にデジタル化しており、それに対応しない組織は競争力を失ってしまう可能性があります。DX は、組織が変化する市場環境に対応し、顧客ニーズに対する応答性を高め、組織の効率性を向上させ、新たなビジネスチャンスを探求するための鍵となります。
特に自治体においては、市民サービスの質と効率性を向上させ、市民とのコミュニケーションを強化し、データを活用してより賢明な意思決定を行うために DX が重要です。
ビジネスや他の自治体での適用
一部の自治体では、AI を活用して問い合わせへの対応を自動化したり、クラウドベースのシステムを導入してリモートワークを可能にしたり、オープンデータを活用して市民と共に新たなソリューションを開発したりしています。汎用的な DX は他の自治体が DXを進める際の参考になりますし、積極的に取り入れていくべき DX です。
DX 推進におけるメリットとは
DX を推進していくにあたり自治体にはどのようなメリットがあるでしょうか。本章では、自治体が DX を導入した際のメリット 5 つをご紹介いたします。
効率的なサービスの提供
デジタル技術を活用することで、市民サービスの提供をより効率的かつ迅速に行うことが可能になります。例えば、オンラインでの申請や支払いなど、市民の手続きを簡略化したり、AI を利用した自動応答システムで 24 時間対応を可能にしたりできます。
市民とのコミュニケーション強化
DX により SNS やアプリ、ウェブサイトなどのデジタルプラットフォームを活用した市民との直接的なコミュニケーションが強化されます。これにより、市民のニーズや意見をより迅速かつ正確に把握することが可能になります。
意思決定の精度向上
DX では、データ分析の活用が重要となります。これにより、市民の動向やニーズ、意見などを反映したデータに基づく意思決定を行うことができ、その結果、政策の精度や効果を大幅に向上させることが可能になります。
透明性の確保
デジタル技術を活用することで、市民サービスのプロセスや自治体の意思決定プロセスをより透明にすることができます。これは市民の信頼を確保し、自治体の信頼性を高めるために重要です。
新たなビジネスチャンスの創出
DX により、新たなビジネスチャンスやイノベーションの機会を創出することが可能になります。例えば、オープンデータを提供することで、新たなビジネスやサービスの開発を市民や企業に促すことができます。
これらのメリットを最大限に活用するためには、戦略的なアプローチと組織全体のコミットメントが必要となります。
自治体が取るべきステップ
DX の推進には段階的なプロセスがあり、そのステップの流れに沿うことで効率的な DX の推進を行うことができます。本章では、自治体が理想的な DX を推していく為のステップをご紹介いたします。こちらは、選考的な自治体の事例等をもとに、各自治体がその実情に応じて DX を推進する際の参考となるよう作成されています。
ステップ 0:DX 認識共有・機運醸成
自治体は、デジタル社会形成基本法の基本理念にのっとり、自主的な施策を実施する責務を有する |
DX の実現に向け、首長や幹部職員によるリーダーシップや強いコミットメントが重要 |
首長等から一般職員まで、DX の基礎的な共通理解の形成、実践意識の醸成 |
利用者中心の行政サービス改革を進めるという、いわゆる「サービスデザイン思考」の共有 |
ステップ 1: 全体方針の決定
DX 推進のビジョンと工程表で構成される「全体方針」を決定・広く共有 |
自治体 DX 推進の意義を参考にしつつ、地域の実情も踏まえて、自団体の DX 推進のビジョンを描く |
デジタル化の進捗状況を確認し、自団体の DX の取組内容、取組み順序を大まかな工程表にする |
ステップ 2: 推進体制の準備
全庁的・横断的な推進体制の構築。DXの司令塔として、DX推進担当部門を設置し、 各業務担当部門をはじめ各部門と緊密に連携する体制を構築 |
各部門の役割に見合ったデジタル人材が配置されるよう、人材育成・外部人材の活用を図る |
一般職員も含めて、所属や職位に応じて身につけるべきデジタル技術等の知識、能力、経験等を設定した 体系的な育成方針を持ち、人事運用上の取組みや、OJT・OFF-JT による研修を組み合わせて育成 |
十分な能力・スキルや経験を持つ職員の配置が困難な場合には、外部人材の活用も検討 |
ステップ 3:DX の取組みの実行
関連ガイドライン等を踏まえて、個別のDXの取組みを計画的に実行。「PDCA」サイクルによる進捗管理 |
取組内容に応じて、 「OODA※」のフレームワークを活用した柔軟で速やかな意思決定 「Act(行動、実行)」の頭 文字をつないだ言葉で、意思決定プロセスを理論化したもの |
工程表のイメージ
自治体の具体的な DX の取組み例
本章では、前章でお伝えしました「自治体が取るべきステップ」毎に事例をご紹介いたします。
ステップ 0:DX 認識共有・機運醸成
1.【広島県】デジタル技術の活用ありきでない課題解決を目的とした DX
Point |
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DX を、「課題解決にデジタル技術の活用を検討して実行するもの」と整理 |
ツール(IT)の導入ではなく、課題解決を起点とすることで、価値のある変革を目指す |
概要 |
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一般にデジタル化は3つの段階に分類されるが、第1段階(デジタイゼーション)、第2段階 (デジタライゼーション)、第3段階(デジタル・トランスフォーメーション)いずれも「課題解決に デジタル技術の活用を検討して実行するもの」と整理。 |
「デジタル技術の活用」を起点としてしまうと、単なる業務改善や効率化に終始してしまうため、目的と 現状のギャップ を課題と位置づけ、それを解決するというビジネス起点の考え方で新たな価値の創出を 目指す。 |
DX を進めていく上で、課題解決を軸として事例です。活用ありきで考えてしまうと、単純な業務改善や効率化を中心に考えてしまうため、目的と現状のギャップを課題と位置づけて、それを解決するというビジネス起点の考え方で新たな価値の創出を目指していく事例となっています。
2.【栃木県真岡市】 各課に「DX 推進員」を選任し、全庁の意識を改革
Point |
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各課の職員から「DX 推進員」を選任し、市の DX 推進計画策定に参加 |
「DX 推進員」は、計画策定後も各課の業務改革を先導する役割を担う |
概要 |
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情報政策課がDX推進を担当するが、全庁的・横断的な推進体制を構築することの重要性に鑑み、 各課の係長級の職員から「DX 推進員」を選任。 |
「DX推進員」は、市が目指すDXヴィジョンを実現するために必要 なマインドの醸成などのための座学 研修1回、ワークショップ4回に参画。また、「DX推進員」ではない職員が「DX協力員」として 自発的に参加することも可能。情報政策課のみならず、全庁的な意識改革を推進。 |
「DX推進員」はワークショップを踏まえて、情報政策課が中心となって策定するDX戦略及びアクション プランの立案に参画するとともに、各課において、これらに基づく業務改革を推進する立場となる。 |
DX 推進に対し意識改革に注力している事例です。全庁的・横断的な推進体制を構築することの重要性を考え、各課の係長級の職員から「DX 推進員」を選任することで、業務改革を促せる環境づくりを行っております。
ステップ 1: 全体方針の決定
1.【宮城県仙台市】デジタル化ファストチャレンジ
Point |
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DX 推進計画の策定に先駆け、デジタル化推進への取組みに着手 |
DX推進計画では、DXについて「組織の在り方の変革」にまで踏み込んだ内容に |
概要 |
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「できることはすぐ実行」の考えの下、デジタル化ファストチャレンジとして以下の取組みを実施。 ①「窓口手続のデジタル化」・・・押印の廃止、添付書類の簡素化、キャッシュレス決済の導入等 ②「デジタルでつながる市役所」・・・オンラインでの子育て相談、市民対応にモバイル端末の活用等 ③「デジタル化で市役所業務の改善」・・・WEB会議システムの活用、AI・RPAの活用等 |
DX推進計画において、DXを「単なる新しいデジタル技術の導入ではなく、制度や政策、組織の在り方等 を新技術に合わせて変革し、地域課題の解決や社会経済活動の発展を促すこと」と定義し、施策を構築。 |
この事例では、DX の定義を「単なる新しいデジタル技術の導入ではなく、制度や政策、組織の在り方等を新技術に合わせて変革し、地域課題の解決や社会経済活動の発展を促すこと」とし、全体での意思統一をしっかりと行っています。認識がずれてしまうと、スピード感を持って課題に取り組めむ事が難しくなってしまったり、途中で頓挫してしまう可能性を未然に防いでいます。
2.【千葉県松戸市】行政デジタル化ビジョン
Point |
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3 つの「基本方針」、5 つの「基本的な考え方」、10 の「今後の重点施策」の三部構成 |
関係者間の認識のずれを防止するため、マイルストーンを設定 |
概要 |
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来庁を原則としたサービス提供の在り方を改め、手続き・申請のための来庁率を下げる |
デジタル及び業務効率化推進により、新たな政策立案や価値の創造等の捻出 |
市民の持つ情報・市の保有する情報について産学官連携も含め相互に有効活用する |
この事例では、「行政デジタル化ビジョン」に基づいて、目指すべき姿としての 3 つの「基本方針」に基づき、分野ごとの方向性を 5 つの「基本的な考え方」に分類。その実現に向けた具体的な施策を 10 の「今後の重点施策」として整理しています。
ステップ 2: 推進体制の準備
1. 【福島県磐梯町】全庁一丸でデジタル変革をおこすための体制整備
Point |
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副町長の直下に全庁・横断的な DX 推進担当の組織を設置 |
CDO、CDO補佐官、地域プロジェクトマネージャー等に外部人材を積極的に任用 |
概要 |
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仕組みを変えずして、全庁一丸となってデジタル変革に取り組んでいくことは極めて困難との考えの下、 副町長の直 下に全庁・横断的な DX 推進担当組織としてデジタル変革戦略室を設置。 |
CDO、CDO 補佐官(ICT,セキュリティ担当・デザイン担当)、地域プロジェクトマネージャー、 地域活性化起業人 及び地域おこし協力隊として外部人材を迎え入れ、DX を強力に推進。 |
複数の外部人材とも円滑に業務を行うことができるよう完全オンライン、ペーパーレス、 リモートを前提とする組織に。 |
この事例では、仕組みを変えずして、全庁一丸となってデジタル変革に取り組んでいくことは極めて困難と考え、副町長の直下に全庁・横断的なDX推進担当組織としてデジタル変革戦略室を設置し、CDO、CDO 補佐官(ICT,セキュリティ担当・デザイン担当)、地域プロジェクトマネージャー、地域活性化起業人及び地域おこし協力隊として外部人材を迎え入れ、DX を強力に推進し、複数の外部人材とも円滑に業務を行うことができるよう完全オンライン、ペーパーレス、リモートを前提とする組織に体制整備を行っております。
ステップ 3:DX の取組みの実行
1. 【栃木県】市町を巻き込んだDX推進に向けた職員研修
Point |
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首長に対するトップセミナーや、全職員を対象にした役職に応じた研修を実施 |
県が市町に研修教材を提供するなど、市町職員の人材育成を支援 |
概要 |
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県が自治体DX支援に実績のある企業と連携し、それぞれの役職に応じた研修等を設計。 ① 県知事・市長・町長や幹部職員に対しては、自治体CDO経験者に講師を依頼し、DXに向けた気付きを 促すトップセミナーを開催。 ② 県及び市町のその他職員に対しては、DX に向けたマインドセットを習得させるための研修動画を 提供。 ③ さらに県は、各所属に設置する「DX 推進員」に対して、DX を推進するために必要なマインドセット を習得させるとともに、具体的な取組手法を学ばせるために、所属で抱える課題解決に資する ワークショップを実施。あわせて、 市町の希望する職員に対しても同様のワークショップを別途開催。 |
この事例では、県が自治体 DX 支援に実績のある企業と連携し、それぞれの役職に応じた研修を実施しています。首長、知事に対してのトップセミナー、全職員向けに講演と具体的な DX の事例紹介を行い、DX 推進委員には所属で抱える課題解決に対するワークショップを実施し、DX 推進に取り組んでおります。
DX を自治体の未来に繋げるデジタル時代の自治体へ
DX の導入は自治体の未来を大きく左右します。新たなサービスの提供、市民とのより良いコミュニケーション、より賢明な意思決定など、DX は自治体をデジタル時代に適応させ、市民により良い生活を提供するための手段となります。最終章では、DX と自治体の未来、DX 導入で得られる恩恵、そして持続可能な DX 戦略を維持するために必要なことについて説明します。
DX と自治体の未来
デジタル化は避けられない未来のトレンドであり、これに適応しなければ自治体は市民の期待に応えることが難しくなります。DX は市民サービスの改善、業務効率化、データ駆動型の意思決定など、自治体の運営を根本的に変革する可能性を秘めています。これにより、自治体はデジタル時代における市民のニーズに応え、持続可能な社会を実現するための重要な役割を果たすことができます。
DX 導入で得られる恩恵
DX を導入することで、自治体は多くの恩恵を受けることができます。これには、効率的でパーソナライズされたサービスの提供、市民とのより良いコミュニケーション、データに基づく意思決定、プロセスの透明性の確保、新たなビジネスチャンスの創出などが含まれます。これらの恩恵は、自治体が市民の生活の質を向上させ、持続可能な未来を実現する上で不可欠です。
持続可能な DX 戦略を維持するために
DX は一時的なプロジェクトではなく、組織全体の文化変革と持続的な取り組みを必要とします。そのため、DX 戦略を維持するためには、組織全体のコミットメント、定期的なスキルアップトレーニング、デジタルテクノロジーと市民ニーズに対する深い理解、そして継続的なデータ収集と分析が必要です。
また、失敗から学び、柔軟に戦略を調整する能力も重要です。これにより、自治体はデジタル時代の変化に対応し続け、市民サービスを継続的に改善することができます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。本記事では、そのような悩みを抱えている方に向け、DX をどのように進めていくべきポイントを事例を交えてご紹介いたしました。ぜひ他の自治体の DX の推進事例をご参考いただき、より良い DX 推進に向け取り組んでいただければと思います。
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目次
- DXとは何か?
- DX(デジタルトランスフォーメーション)とは
- なぜ DX は必要なのか
- ビジネスや他の自治体での適用
- DX 推進におけるメリットとは
- 効率的なサービスの提供
- 市民とのコミュニケーション強化
- 意思決定の精度向上
- 透明性の確保
- 新たなビジネスチャンスの創出
- 自治体が取るべきステップ
- ステップ 0:DX 認識共有・機運醸成
- ステップ 1: 全体方針の決定
- ステップ 2: 推進体制の準備
- ステップ 3:DX の取組みの実行
- 工程表のイメージ
- 自治体の具体的な DX の取組み例
- ステップ 0:DX 認識共有・機運醸成
- ステップ 1: 全体方針の決定
- ステップ 2: 推進体制の準備
- ステップ 3:DX の取組みの実行
- DX を自治体の未来に繋げるデジタル時代の自治体へ
- DX と自治体の未来
- DX 導入で得られる恩恵
- 持続可能な DX 戦略を維持するために
- まとめ
- サービス資料のご紹介
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