統計検定とは?1 級取得者が難易度とメリットを徹底解説!

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昨今、AIをはじめとしてデータ分析に関する話題をニュースで見かけることが増えました。それによって、データ分析について学習したいと考えている方も多いのではないでしょうか。

データ分析の基礎となるのが統計学であり、統計に関する知識や活用力を評価する試験として「統計検定」があります。
統計検定に合格すれば統計に関する確かな能力を有していることの証明となり、就職や大学院への入学などでもアピールすることもできます。

この記事では、80,000 名以上の受講生に AI・データサイエンスの教育を行ってきたキカガクが、統計検定について詳しくお伝えします。
検定の詳細や取得のメリット、学習方法について解説していきます。ぜひ最後までご確認ください!

統計検定とは?

統計検定の概要

「統計検定」は、統計に関する知識や活用力を評価する全国統一試験です。

データに基づいて物事を客観的に判断し、科学的に問題を解決する能力は、21 世紀型スキルとして国際社会で広く認められています。
実施組織である日本統計学会は、国際通用性のある統計活用能力の体系的な評価システムとして統計検定を開発しました。様々な水準と内容で統計活用力を認定しています。

統計検定は全部で 10 種の試験からなります。
それぞれに目安となる能力が規定されており、それに合わせて難易度が設定されています。

統計検定取得のメリット

統計検定の取得は、次のような方におすすめです。

  • データ分析スキルについて興味があるので学習してみたい!
  • データ分析スキルがどの程度ついたかを確かめてみたい!
  • キャリアアップのために資格を取得したい!

データ分析スキルについて興味がある

データ分析の重要な基礎となるのが統計に関する知識・能力です。
「ヒストグラム」「散布図」「相関」といった用語を聞いたことがあったり、会話の中でなんとなく使うことがあっても、それらを正しく使用・説明できる方は多くないかもしれません。
このような方でも、統計検定取得のための学習をすることで、統計に関する知識を体系的に習得することができます。

データ分析スキルを確認する

すでに学校・職場でデータ分析を行っている人にも、統計検定の取得はおすすめです。
データ分析の手法は WEB や書籍で様々紹介されているため、ツールを使用して分析を行っている人も多いことでしょう。
今の自分がどの程度の知識を習得できているのかを確認し、さらなるステップアップに活かすために、統計検定の受験は有効です。
また分析ツールはただ使えるだけでなく、背景にある知識をきちんと整理・理解したうえで使用することが大切です。
統計検定取得のための学習によって、例えば統計的仮説検定や回帰分析の誤った使い方を防ぐこともできます。

キャリアアップを目指す

統計検定は、昨今のデータ分析人材への需要の高まりから就職・転職でプラスになる可能性があります。
データサイエンティストとして就職・転職したい方はもちろん、コンサルや金融機関などでも統計検定の取得を推奨する企業が増えてきています。取得報奨金が支給される企業もあります。
また IT エンジニアの方であれば今後、機械学習や生成 AI を使ったプロダクト・サービスに携わる機会が増えていくはずです。それらの基礎となる統計学に精通しておくことは、キャリアにおいてプラスになるケースが考えられます。

統計検定の試験概要と学習方法

統計検定は 2024 年 4 月現在、以下の 10 種の試験からなります。

検定種別試験内容受験料
1 級実社会の様々な分野でデータ解析を遂行する統計専門力統計数理 6,000 円
統計応用 6,000 円
準 1 級統計学の活用力 – 実社会の課題に対する適切な手法の活用力一般価格 8,000 円
学割価格 6,000 円
2 級大学基礎統計学の知識と問題解決力一般価格 7,000 円
学割価格 5,000 円
3 級データの分析において重要な概念を身に付け、身近な問題に活かす力一般価格 6,000 円
学割価格 4,000 円
4 級データや表・グラフ、確率に関する基本的な知識と具体的な文脈の中での活用力一般価格 5,000 円
学割価格 3,500 円
検定種別試験内容受験料
統計調査士統計に関する基本的知識と利活用一般価格 7,000 円
学割価格 5,000 円
専門統計調査士調査の実施に関する専門的知識の修得とデータの利活用一般価格 10,000 円
学割価格 8,000 円
DS 基礎具体的なデータセットをコンピュータ上に提示して、
目的に応じて解析手法を選択し、表計算ソフトExcelによる
データの前処理から解析の実践、出力から必要な情報を
適切に読み取る一連の能力
一般価格 7,000 円
学割価格 5,000 円
DS 発展数理・データサイエンス教育強化拠点コンソーシアムの
リテラシーレベルのモデルカリキュラムに準拠した内容
一般価格 6,000 円
学割価格 4,000 円
DS エキスパートデータや表・グラフ、確率に関する基本的な数理・
データサイエンス教育強化拠点コンソーシアムの
応用基礎レベルのモデルカリキュラムを含む内容
一般価格 8,000 円
学割価格 6,000 円

統計検定には受験資格はなく、例えば 2 級は小学生、準 1 級や 1 級は中学生も合格しています。

いずれも公式ワークブックと過去問題集が販売されているため、これらを使用した学習方法が中心になります。

また実施方法は以下のようになり、1 級とそれ以外で大きく異なります。それによって適した学習方法も異なってきます。

  • 1 級:ペーパーテスト(PBT)、年 1 回実施
  • 1 級以外:コンピュータを使用したテスト(CBT)、テストセンターにて年中実施

ここからはそれぞれの試験の概要と、簡単な学習方法について解説します。

統計検定 4 級

4 級は、統計検定の資格の中で最も難易度が低い入門者向けの試験です。

出題形式4 ~ 5 肢選択問題
問題数30 問程度
試験時間60 分
合格水準100 点満点で、60 点以上
主なキーワード
  • 標本調査、棒グラフ・折れ線グラフ・円グラフ
  • 度数分布表、ヒストグラム
  • データの代表値(平均値・中央値・最頻値)
  • 分布の散らばり(範囲、箱ひげ図)
  • クロス集計表
  • 確率の基礎(確率、樹形図)

難易度の目安は、中学校~高校前半の数学で学習する確率・データの活用に関する内容です。
基本的な計算問題や知識の有無を問う問題が中心のため、数学が苦手な人でも比較的ハードルが低い内容です。

4 級用の公式ワークブックを使用するのもよいですし、中学校や高校で使用していた教科書・参考書が手元にある場合は、それらを再利用するのもよいでしょう。

統計検定 3 級

3 級は 2 番目に易しい難易度の試験で、概要は以下のようになります。

出題形式4 ~ 5 肢選択問題
問題数30 問程度
試験時間60 分
合格水準100 点満点で、65 点以上
主なキーワード
  • 量的変数・質的変数、変数の尺度(名義、順序、間隔、比例)
  • 母集団と標本、統計グラフとデータの集計(1 変数、2 変数)
  • 時系列データ(グラフ、指数(指標)、移動平均)
  • データの散らばり(四分位数、四分位範囲、分散、標準偏差、変動係数、箱ひげ図、はずれ値)
  • 相関と回帰(散布図、擬相関、相関係数、相関と因果、回帰直線)
  • 確率(独立な試行、条件付き確率)
  • 確率分布(確率変数の平均・分散、二項分布、正規分布、二項分布の正規近似)
  • 統計的な推測(母平均・母比率の標本分布、区間推定、仮説検定)

難易度の目安は、高校の数学 B で学習する「統計的な推測」に関する内容です。
正規分布・二項分布などの確率分布や、区間推定・仮説検定といった推測統計に関する内容が入るため、4 級と比べるとやや難易度が上がります。

3 級用の公式ワークブックを使用するのがよいです。
または、高校で使用していた教科書・参考書が手元にある場合はそれらを再利用しつつ、出題範囲表を見ながらプラスの内容を WEB などで検索して整理しておくという方法もあるでしょう。

統計検定 2 級

一般的に「仕事で使える」と言われるレベルはこの 2 級からと言われています。概要は以下のようになります。

出題形式4 ~ 5 肢選択問題
問題数35 問程度
試験時間90 分
合格水準100 点満点で、60 点以上
主なキーワード
  • 2 変数以上のデータ
  • データ収集法(観察研究と実験研究、標本調査法、フィッシャーの 3 原則)
  • 確率(統計的推測の基礎となる確率、ベイズの定理)
  • 確率分布(各種の確率分布とその平均・分散)
  • 標本分布(標本平均・標本比率の分布、二項分布の正規近似、t 分布・カイ二乗分布、F 分布)
  • 推定(推定量の一致性・不偏性、区間推定、母平均・母比率・母分散の区間推定)
  • 仮説検定(p 値、2 種類の過誤、母平均・母比率・母分散の検定[1 標本、2 標本])
  • カイ二乗検定(適合度検定、独立性の検定)
  • 線形モデル(回帰分析、実験計画)

難易度の目安は、大学の 1・2 年次に学習する統計の内容です。
分布や推定・検定方法の種類が 3 級と比べて増加し、分析結果の読み取りなどもより専門的になります。
大学数学で学習する微分・積分や線形代数の知識があることが望ましいですが、それに不安がある方でも、各分布や分析手法の特徴をきちんと整理できていればある程度対応できます。

学習には 2 級用の公式ワークブックを使用するのをおすすめしますが、書き口がとっつきづらいと感じる方も多いです。
そのような場合には、統計学の専門書のうち、初心者向けの書き口が易しめのものを選択するのもよいでしょう。

統計検定準 1 級

準 1 級は CBT 試験の中で最も難しく、これに合格できれば大学で学ぶ応用的な統計学の手法については習得できているといえます。概要は以下のようになります。

出題形式5 肢選択問題、数値入力問題
問題数25 問~ 30 問
試験時間90 分
合格水準100 点満点で、60 点以上
主なキーワード

出題範囲表を確認すると、出題範囲はかなり広いことが分かるかと思います。
統計を使って業務を行っている人でも、これらの手法のすべて何も見ずに使用できる人はごくわずかなのではないかと思われます。

試験を受けるためには、これら様々な手法を単なる暗記ではなく、体系的に整理しておくことが重要です。
学習は、準 1 級用の公式ワークブックを中心に進めていくのがおすすめです。
統計の専門書で、これらの内容が 1 冊にまとまっている書籍は他にはなかなかありません。

また、適宜 2 級用のワークブックを手元におき、分からない内容を復習しながら進めるのもよいでしょう。

統計検定 1 級

1 級は難易度でいうと最も難しく、統計の大学専門課程(3・4 年次)で習得すべきことについて、専門分野ごとに検定を行います。

さらに他の試験とは異なり PBT 試験になります。
解答はすべて論述式のため、最終的な答えだけでなくそこに至る過程も採点の対象となります。

概要は以下のようになります。

出題形式「統計数理」と「統計応用」の 2 つの試験から構成され、
いずれも解答は論述式。
【統計数理】
 ・5 問出題され、受験時に3問選択。
【統計応用】
 ・下記の 4 つの分野があり、申込時点で 1 分野を選択。
 ・各分野 5 問出題され、受験時に 3 問選択。
  ・人文科学
  ・社会科学
  ・理工学
  ・医薬生物学
試験時間「統計数理」 90 分(午前)
「統計応用」 90 分(午後)
合格水準「統計数理」、「統計応用」それぞれの試験ごとに合否を決定。
〈統計検定 1 級合格の要件〉
統計検定 1 級合格には、「統計数理」および
「統計応用(少なくとも 1 分野)」の合格が必要。
合格者には「統計検定 1 級」の合格証を発行。
主なキーワード

出題内容は準 1 級と同様にかなり広く、論述試験であることから要求される理解もより深いものになります
ただし、1 級の合格には「統計応用」を少なくとも 1 分野合格できればよいため、準 1 級と比べて知識自体は少なくて済むケースもあります。

学習方法は、統計数理には専門書 1 冊をしっかり通読、統計応用には各分野の専門書を何冊か読むことをおすすめします。

1 級用の公式ワークブックもありますが、こちらは必要な知識を整理できているかを確認するために使用するのがよいでしょう。

統計検定 統計調査士・専門統計調査士

統計調査士・専門統計調査士は、近年重視されている「証拠に基づいた政策・意思決定」(evidence based policy)において、適切な統計データの利活用を推進する能力を評価する検定試験です。

統計調査士検定は、公的統計に関して、基本的な内容を正確に理解し適切に利用する能力を評価します。
専門統計調査士検定は、調査の企画から集計・分析・利活用までを体系的に進めることができる能力を評価します。

試験の概要は以下の通りです。

統計調査士

出題形式5 肢選択問題、数値入力問題
問題数30 問
試験時間60 分
合格水準100 点満点で、70 点以上

統計検定 3 級合格程度の基礎知識に加えて、社会人に求められる公的統計の理解とその活用力の修得を評価します。

主なキーワード
  • 統計の意義と役割統計法規統計調査の基本的知識
  • 統計調査員の役割・業務
  • 統計の見方、統計データの利活用

専門統計調査士

出題形式5 肢選択問題、数値入力問題
問題数40 問
試験時間90 分
合格水準100 点満点で、65 点以上

統計検定 2 級合格程度の専門知識に加えて、社会・経済で広く利用される統計や各種の調査データの作成過程、および利用上の留意点などに関する総合的な知識水準を評価します。

主なキーワード

ベースとなる統計の知識は 3 級・2 級なのでそれほど高くありませんが、適切な調査設計のための幅広い知識が整理されている必要があります。

学習方法は、公式ワークブックか統計調査に関する書籍を 1 冊選び通読するのが良いでしょう。
また、まずはそれぞれのベースとなる統計検定 3 級・2 級を受験し、その学習を通じて統計の能力を培うのもおすすめです。

統計検定 データサイエンス(DS)基礎・発展・エキスパート

DS 基礎・発展・エキスパートは、データサイエンスの知識を具体的な問題に活用することのできる能力を評価する目的で設定された試験です。
近年のデータサイエンスへの注目の高さは言うまでもありませんが、専門的なデータサイエンティストだけでなく、一般的なビジネスパーソンにとってもデータ分析の能力を身に着けることが求められつつあります。

DS 基礎・発展・エキスパートの受験によって、個人の求められる専門性に合わせて、データサイエンスの能力を評価・証明することができます。

試験の概要は以下の通りです。

DS 基礎

出題形式多肢選択問題、数値・文字入力問題
コンピュータ上で Excel を使って処理
した結果を基に答える形式
問題数大問 8 題(大問 1 題当たり小問 5 問程度)
合計小問 45 問程度
試験時間90 分
合格水準100 点満点で、60 点以上

DS 発展

出題形式多肢選択問題、数値入力問題
問題数30 問程度
試験時間60 分
合格水準100 点満点で、60 点以上

DS エキスパート

出題形式多肢選択問題、数値入力問題
問題数40 問程度
試験時間90 分
合格水準100 点満点で、60 点以上
主なキーワード

いずれの試験も応用力を問われていて、統計の知識だけでなくモデリング・機械学習の知識や実践力が求められます。

学習の方法ですが、DS 基礎については公式ワークブックがあります。まずはその内容を確認して不足している知識を補うのがよいでしょう。
一方、DS 応用・エキスパートについては、出題範囲表の内容をすべて網羅することを目標において学習するのは現実的ではないと考えます。機械学習や深層学習の書籍は数多く出版されていますし、WEB 記事や解説動画なども多く作成されていますので、まずはそれらを使ってベースとなる知識やコーディング力を習得しましょう。その後、自分の興味を持った分野から知識を深めていくのがおすすめです。

統計検定はどの資格を取得すればよい?目的別におすすめの級をご紹介

統計検定 4 級・3 級:データ分析の学習を始めたい人

4 級・3 級は、データ分析のための統計知識を身につけるための入り口としての取得に適しています。
文系出身者や学生など、これからデータ分析について学び始めたい人の最初のステップとするのがよいでしょう。

統計の知識がない・少ない方は、まずは 4 級または 3 級を取得し、さらに 2 級以上の合格につなげていくのがおすすめです。

2 級との関係

ワークブックなどの内容を確認した時に 4 級・3 級の難易度が低いように感じられる方は、いきなり 2 級の学習から始めることも十分であると考えられます。

統計検定 2 級:大学で統計を学習し始めた人・ビジネスでデータ分析を使用し始めた人

2 級を取得していれば、基本的なデータ分析の能力があることの証明になります。
大学で統計の学習を始めた人、これからビジネスでデータ分析を行う人は、まずは 2 級の取得を目標に学習を始めるのがおすすめです。
また、これらの経験がなくても、高校や大学の数学に苦手意識がない方であれば十分 2 級の内容に対応できるはずです。

準 1 級・1 級との関係

準 1 級・1 級は 2 級の延長線上にあります。
最終的に準 1 級や 1 級の取得を目指している方も、知識を整理し学習のペースを確立する目的で 2 級を取得することは十分意味があるといえます。

統計検定準 1 級:ビジネスでデータ分析の深い知識を使用する人、キャリアアップにつなげたい人

準 1 級は出題範囲が広く、単に計算や検定手法の適用だけでなく、前提条件に基づいた適切な手法の選択や正しい結果の解釈も必要になります。

準 1 級を取得していれば、ビジネス現場でデータドリブンな意思決定を行う際に説得力や信頼感を高める効果があるでしょう。
また、キャリアアップを考えた場合にも、準 1 級を取得していることは他者との差別化になり、プラスに働く可能性があります。

1 級との関係

準 1 級は CBT 試験の中で最難度の試験で、詳しくは後述しますが、問題の形式も 1 級とは違った難しさがあります。1 級と準 1 級は別競技と考えたほうが良いかもしれません。

統計検定 1 級:ビジネスでデータ分析の深い知識を使用する+数学が得意な人

ビジネスでの使用については準 1 級と同様ですが、論述試験である 1 級は数学の試験に慣れていることが望ましいです。大学受験や大学の講義試験などで、数学の問題を解くことに抵抗がない方であれば、スムーズに学習が進められるでしょう。

なお、1 級の取得には「統計応用」を少なくとも 1 分野合格できればよいです。そのため、1 級を取得することだけを考えれば、必要となる知識は準 1 級よりも少ないと言っても差し支えありません(その分、深い理解が求められます)。

よって、数学が得意な方は、準 1 級 → 1 級と順に取得するよりも、いきなり 1 級を取得することを検討されるのもよいと思われます。

統計数理と統計応用の関係

「統計数理」の理解がしっかりしていれば「統計応用」の学習はかなり効率的に進みます。まずは土台となる「統計数理」の学習に注力するようにしましょう。

統計調査士、専門統計調査士:調査業務を行う人

これらの試験は主に、統計調査の設計や活用のための能力を測ります。そのため、民間の調査機関での業務に就いている人やそれを目標にしている人におすすめの試験です。

また、自治体ではデータ活用が近年進められているため、公的機関での業務においてもこれらの試験の能力は重宝されることが考えられます。

組織における効果

調査設計を受託する機関においては、これらの資格保持者を抱えていることで、組織の実施能力やデータの解析力をアピールすることが期待されます。

DS 基礎・発展・エキスパート:データサイエンス力をつけたい・試してみたい人

これらの試験は近年始まったばかりであるため、資格試験としての評価はまだ定まっていないという印象が大きいです。

一方で、データサイエンス力の価値に魅力を感じている人にとっては、学習を進めるうえでの良い指針になると考えられます。
データ分析コンペなどへの参加と合わせてこれらの試験の受験を検討されてはどうでしょうか。

データ分析コンペとの違い

コンペ参加時には、分析手法を WEB で調べたりチームで相談したりしながら進める方がほとんどだと思います。

もちろんそれで問題ないのですが、何も見ることができない試験という場で対応できるように学習することは、データサイエンス力の地盤を固める効果があります。

これらの試験の学習には、コンペとは違う側面から自らの能力を高めることが期待されます。

おすすめの学習プラン(統計検定 2 級以上)

ここからは、統計検定 2 級・準 1 級・1 級に絞って、おすすめの学習プランをご紹介します。
これらのプランを参考に、自身のスキルに合わせて学習を進めてください。

統計検定 2 級の学習プラン

公式テキスト・問題集の活用

公式テキストは、試験範囲を網羅しているため、試験に向けて効率よく学習できます。

公式問題集は、出題範囲・形式にのっとって構成されています。
特に CBT 試験に対応しているので、実際の試験での出題形式を把握した上で対策することができます。

これらのペアで学習する際は、以下のように進めるのがおススメです。

  • 一度問題集を解いてみて、現在の理解度を測る
  • テキストを一通り読み進める
  • 読み終えたら、問題集で再度実際の問題にチャレンジする
  • 解説を読み、わからない部分をテキストに戻って確認する

統計学の入門書

2 級の対策となる統計学の入門書も多くあります。

例えば、基礎から学ぶ統計学は高校 1 〜 2 年で学ぶ数学までを前提とした書籍で、ハードルの低い入門として評価が高いです。具体例をもとに解説していて、図がたくさん掲載されており色もカラフルなので、公式テキストがとっつきにくい場合にはこちらで学習するのもおすすめです。

他には、完全独習 統計学入門も 2 級の入門書としてはよい書籍です。こちらも前提となる数学の知識を低めに設定していて、スムーズに学習を進められると思われます。

これらの入門書をもとにまずは学習を進めて、足りない部分を公式テキストや問題集で補うとよいでしょう。

無料コンテンツの活用

無料コンテンツでおすすめなのは、統計WEBが作成した統計学の時間です。
統計学の基礎から応用までを丁寧に解説されていて、統計検定 2 級までの内容を網羅しています。練習問題もあり、問題演習の量も確保しながら学習することができます。テキストではなく、こちらでも 2 級の合格には十分です。

ほかにはいちばんやさしい、医療統計や、米国データサイエンティストのブログのデータサイエンス講座(統計編)なども、2 級以上の学習に利用できます。
これらは、テキストや統計学の時間で分からない箇所があったときに解説を読む、という使い方が良いでしょう。

YouTube のコンテンツだと、統計学の基礎とけたろうチャンネルは 2 級以上のベースとなる内容がまとまっています。

また、予備校のノリで学ぶ数学・物理(通称「ヨビノリ」)の確率統計の動画も詳しい解説でわかりやすいです。ヨビノリは、大学数学の基礎である微分積分や線形代数の解説動画も多く上がっており、それらも学習に活用できます。

学習スケジュール

統計検定 2 級に合格するためには、一般的に 50 〜 60 時間程度の学習が必要といわれています。また、合格のためには統計検定のテスト形式に慣れる必要があり、それらの対策も必要です。

週 5 時間程度は学習時間を確保しつつ、試験の少なくとも 2 週間くらい前からは公式問題集でテストの形式に慣れるとよいでしょう。
2 級はそこまで出題範囲は広くなく、暗記で乗り切れる部分も少なくはないため、長くとも 3 ヶ月くらいのスパンでの受験を目標にして、そこから逆算して週の学習時間やスケジュールを考えるとよいでしょう。

統計検定準 1 級の学習プラン

公式テキスト・問題集の活用

統計検定準 1 級は出題範囲が広く、1 冊に内容がまとまっている公式テキストをベースに学習を進めるのがおすすめです。
注意点は、内容を 1 冊で網羅している分、1 つ 1 つの解説は十分でないケースが多いことです。そのため、以下のように学習を進めるのが良いでしょう。

  • 公式テキストを読む(前から順に、または目次をもとに興味のある部分から)
  • わかりづらい部分、理解が不足していそうな部分を、別の書籍や WEB で検索して調べる
  • 問題を解いて理解を確認する


特にすでに 2 級を取得している人や統計学の知識が一定程度ある人は、公式テキストをすばやく通読して、知識が不足している部分を把握すると効率的に学習が進みます。

テスト対策の問題演習は、公式問題集を使って確保するのが良いでしょう。CBT 試験に対応している最新刊を使用しましょう。

準 1 級は 2022 年から CBT 試験に移行されたため、それ以前の過去問は PBT 試験時のものです。
CBT 試験の方が記述式ではないため容易なのでは?と思う方もいるかもしれませんが、そんなことはありません。統計学としての難易度は同程度ですが、CBT試験になって 1 問 1 答式の色合いが濃くなり、人によっては試験の難易度はむしろ高くなったと感じるかもしれません。
試験対策の問題集としては、必ず CBT 試験対応のものを使用しましょう。

テキストに追加する書籍

公式テキストにプラスするおすすめ書籍をいくつかご紹介しておきます。

まずは統計学入門です。少々昔の書籍ですが、準 1 級以上で求められる「統計学の本質をきちんと理解する」のに評価が高い1 冊です。じっくりと 1 冊に取り組みたい方におすすめの 1 冊です。

他には、統計モデルと推測は確率の基礎的な内容からロジスティック回帰モデルなどのモデルを解説しています。

また、準 1 級では「時系列データ解析」の内容が必ず出題され、この分野は苦手意識をもつ方も少なからずいます。時系列データの入門書として現場ですぐ使える時系列データ分析がおすすめです。前半は全体の理解のために通読し、後半はトピックを選んで読むのが効率的でしょう。

無料コンテンツの活用

2 級で紹介されたものに加えて、AIcia Solid Project の動画も理解に役に立つ部分が多いです。準 1 級の範囲であれば、ベイズ統計の内容はこちらの動画で学習するのがおすすめです。

学習スケジュール

統計検定準 1 級に合格するためには、300 時間程度の学習が必要といわれることもあります。もちろん、すでに 2 級に合格している方や統計の知識が豊富な方の場合は短くなりますが、それでも一朝一夕で合格できる試験ではありません。
そのため、3 ~ 6 か月程度の長期戦になることを想定して学習スケジュールを立てましょう。

統計検定 1 級の学習プラン

使用する書籍

1 級は論述式の試験であるため、統計学の深い知識や学問的な背景の理解が求められます。そのため、統計学の良書をしっかりと通読し、統計数理に合格できるだけの力を養うのがおすすめです。

良書としてよく挙げられるのは、現代数理統計学現代数理統計学の基礎 の 2 冊です。前者は講義形式の書き口が特徴で読みやすく、後者はシンプルでより数学書に近い書き口と演習問題が豊富なのが特徴です。
どちらか 1 冊をじっくり読んで理解することができれば、統計数理に合格できるだけの十分な力が身につきます。

試験が近づいてきたら、公式問題集を過去問演習として使用しましょう。(学習開始時に過去問を何年か分解いてみて、雰囲気をつかむのもよいでしょう。)

統計応用は、分野ごとに出題される内容が異なるため、まずは自分の理解しやすい分野・得意分野をもとに受験する分野を決めてから対策しましょう。過去問をベースにするのもよいですし、公式テキストからトピックを拾って必要に応じて専門の書籍を追加したり WEB で調べたりするのも効率的です。

学習スケジュール

1 級は、2024 年 4 月現在、年に一度(毎年 11 月に)実施されます。ほかの試験と違い、決められた試験日から逆算して学習を進めることが必要です。

「現代数理統計学」や「現代数理統計学の基礎」などの専門書をしっかりと通読するのは、どんなに早くても 1 か月、通常は 3 か月程度はかかります(演習問題をしっかり解きながらの場合は、さらに時間がかかります)。
遅くとも試験の半年前から学習に取り掛かり、日々の学習に充てられる時間をもとにペースを決めて学習を進めましょう。

試験の 1 ~ 2 か月前からは過去問の演習で試験に慣れることも重要です。
統計数理・統計応用の両方を受験する場合には過去問演習の時間も倍になることも見越して計画を立てましょう。

統計検定の合格体験記

統計検定の合格体験記として公開されているものをいくつかご紹介します。

統計検定 2 級

キカガクブログの記事で、試験の内容・学習方法・受験時の心構えなどをまとめて紹介しています。

統計検定 2 級:合格体験記とオススメのコンテンツ
学習したコンテンツや具体的なスケジュールが書かれていて、イメージがつきやすい記事です。筆者のよっしゃさんは Udemy の講座を利用したようですが、そのような有料コンテンツを活用するのもよい方法だと思います。

【合格体験記】2 ヶ月半の学習で統計検定 2 級に挑戦
文系大卒の方の学習の進め方が紹介されており、参考になる方も多いかもしれません。

統計検定 2 級に爆速で合格する。
短期間での効率的な合格について書かれています。こちらは理系の方や統計の素養がある方の参考になりそうな内容です。

統計検定準 1 級

私立文系が統計検定準 1 級に合格するまで
学習に役立つコンテンツを中心に体験記が書かれています。特に、2 級から準 1 級までの学習の流れに触れられていて、ステップアップのイメージがつかみやすい記事です。

統計検定準 1 級を 1 回不合格になったのち、最優秀成績賞で合格した話【攻略法】
準 1 級合格までの内容が書かれているのはもちろんのこと、準 1 級の難易度の高さが伝わる記事になっています。

統計検定 1 級

統計検定 1 級に受かりたければこれをやれ
統計検定 1 級合格に必要な力はどういうものなのかが端的に書かれています。

統計検定 1 級合格までの勉強記録
2 級合格から 1 級までの過程、分野ごとの対策が書かれていて、参考になる部分が多いと思います。

最後に

いかがだったでしょうか。統計検定の概要と、自分に合った試験や学習の仕方がイメージできていれば幸いです!
統計について学習してデータを活用するための力を身につけ、みなさんの人生をより豊かにしていきましょう!