【AI 技術導入ガイド】クラウドソリューションとは?基礎知識から導入までの企業向け解説

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【AI 技術導入ガイド】クラウドソリューションとは?基礎知識から導入までの企業向け解説

近年、多くの企業が「自社でサーバを管理するのは大変だ」「システムの維持費が高すぎる」といった課題を抱えています。こうした課題を解決する選択肢の一つが「クラウドソリューション」です。

クラウドソリューションとは、簡単に言えば「インターネット経由でサーバやストレージなどの IT リソースを利用すること」です。自社でサーバを購入・管理する代わりに、 Amazon Web Services ( AWS )、 Microsoft Azure 、 Google Cloud Platform ( GCP )といった企業が提供するサービスを利用します。

本記事では、これら市場シェア上位3つのプラットフォームの特徴や具体的な活用事例、具体的な注意点を初心者の方にも分かりやすく解説します。


クラウドソリューションとは

クラウドソリューションの定義

クラウドソリューションとは、インターネットを通じてコンピューティングリソース(サーバ、ストレージ、データベース、ネットワーク、ソフトウェア等)を提供するサービスの総称です。企業は物理的なハードウェアを所有・管理することなく、必要な時に必要な分だけ IT リソースを利用できます。

クラウドソリューションが注目される背景

クラウドソリューションが注目されている背景として、以下の要因が挙げられます:

  • サービス立ち上げのスピード重視
    新しいサービスやシステムを「今すぐ」始めたいというニーズが高まっています。従来のサーバー購入・設置では数ヶ月かかる準備期間を、クラウドなら数分〜数時間で完了できるため、ビジネス機会を逃さずに済みます。
  • 管理負担からの解放
    「サーバーの管理はしたくない、本業に集中したい」という声が多く聞かれます。ハードウェアの故障対応、メンテナンス、セキュリティ対策といった運用業務をクラウドプロバイダーに任せることで、企業は本来のビジネスに専念できます
  • 試行錯誤の柔軟性
    「気軽に作って、気軽に壊したい」というニーズです。新しいアイデアを低コストで試し、うまくいかなければすぐに停止できる柔軟性が、イノベーションを促進します。失敗を恐れずに挑戦できる環境が求められています。
  • 初期投資の手軽さ
    「まずは小さく始めたい」という現実的なアプローチです。高額な初期投資なしに、必要な分だけから始められるため、予算承認のハードルが下がり、新しい取り組みを始めやすくなります
  • 老朽化したシステムの更新コスト増大
    多くの企業で10〜20年前に導入したサーバーやシステムの更新時期を迎えており、新しいハードウェア購入やデータセンター維持に膨大な費用がかかるため、初期投資を抑えられるクラウドソリューションを選択する企業が増えています

オンプレミスとの違い

オンプレミス環境では、企業が自社でサーバやネットワーク機器を購入・設置・管理する必要があり、初期投資が大きく、運用開始までに時間がかかります。一方、クラウドソリューションでは、 AWS 、 Azure 、 GCP といったクラウドプロバイダーが提供するインフラを利用するため、初期投資を大幅に削減できます。

また、オンプレミス環境では容量の拡張や縮小に物理的な作業が必要ですが、クラウド環境では需要に応じて自動的にリソースを調整できる「オートスケーリング」機能により、効率的な運用を実現できます。

一方で、オンプレミス環境には、データの完全制御、高度なカスタマイズ性、長期的なコスト予測の容易さといった利点もあります。企業の要件や業界の規制によっては、オンプレミスが適している場合もあるため、両方の特徴を理解した上で選択することが重要です。

項目

オンプレミス

クラウド

初期費用

高額な初期投資が必要
サーバ購入、設置工事など

アカウント開設は無料
設定・移行作業費は別途必要

管理・運用

故障修理、メンテナンス、
セキュリティ対策など
をすべて自社で対応

サーバの故障や
メンテナンスは
プロバイダーが対応

拡張性

新しいサーバ購入・
設置に数ヶ月必要

管理画面から数分で
容量変更可能

費用構造

使わなくても固定費がかかる

基本は従量課金
(一部固定費プランもあり)

データ制御

完全な制御が可能
データの保存場所や
処理方法を自由に決定

プロバイダーのインフラに依存
一定の制約がある

カスタマイズ性

高度なカスタマイズが可能
ハードウェア・ソフトウェア
を自由に選択

プロバイダーが提供する
サービス範囲内

セキュリティ

自社の基準で独自の
セキュリティ対策を実装可能

プロバイダーの高度な
セキュリティサービスを利用

長期コスト

予測しやすい
減価償却により計画的な
予算管理が可能

使用量により変動
予算管理が複雑になる
場合もある

導入スピード

長期間(数ヶ月〜)

短期間(数日〜数週間)

障害対応

自社で常時対応体制が必要

プロバイダーが24時間対応

災害対策

自社で別拠点確保が必要

自動的に複数拠点に分散


主要クラウドソリューションの種類

Amazon Web Services ( AWS )

AWS は Amazon が提供するクラウドサービスです。

  • 主な特徴:
    • 最も豊富なサービス数:200以上のサービスを提供し、他社を大きく上回る選択肢
    • 先行者としての成熟度:2006年開始でクラウド市場を牽引、豊富な導入実績と安定性
  • 適している企業:
    • クラウド導入の先行事例や豊富な情報を重視する企業

Microsoft Azure

Azure は Microsoft が提供するクラウドサービスです。

  • 主な特徴:
    • Microsoft エコシステムとの統合:Office 365、Windows Server、Active Directory との seamless な連携
  • 適している企業:
    • 既に Microsoft 製品を社内標準として採用している企業
    • Microsoft 製品への投資を最大限活用したい企業

Google Cloud Platform ( GCP )

GCP は Google が提供するクラウドサービスです。

  • 主な特徴:
    • Google Workspace との深い統合:Gmail、Google Drive、Google Meet などの業務ツールとクラウドインフラがシームレスに連携
  • 適している企業:
    • 既に Google Workspace を業務で活用している企業


クラウドソリューションの活用事例3選

事例1:段階的移行で成功した製造業

ある中堅製造業では、長年使用していた基幹システムの老朽化に直面していました。新しいサーバシステムを構築する場合、高額な初期投資が必要でしたが、 AWS への段階的移行を選択しました。

  • 実際の取り組み:
    • まず非重要なシステムから移行を開始
    • 長期間かけて段階的に移行し、システム停止時間を最小化
    • 移行に伴う社員研修を継続的に実施
  • 得られた効果:
    • 初期投資を大幅に削減(ただし、移行作業とトレーニングに相応の費用が必要)
    • 月額運用費は従来と大きく変わらず
    • 災害時のデータ復旧時間を大幅に短縮
  • 課題:
    • 移行期間中に予期しない技術的トラブルが発生
    • クラウド専門人材の確保に苦労

事例2:急成長に対応したスタートアップ

オンライン教育サービスを提供するスタートアップでは、コロナ禍でユーザー数が短期間で大幅に急増しました。 Azure を活用してこの急激な成長に対応しました。

  • 実際の取り組み:
    • Azure App Service でウェブサイトを構築
    • ユーザー増加に合わせてサーバ容量を段階的に拡張
    • Microsoft 365 と連携して社内業務を効率化
  • 得られた効果:
    • サーバ増設作業を大幅に簡素化
    • システム停止によるサービス中断を防止
    • 社内コミュニケーションツールの統一
  • 課題:
    • 予想以上に月額費用が増加(当初予算を大幅に超過)
    • 急激な拡張により、一時的にシステムが不安定になる場面があった

事例3:データ活用を始めた小売業

地域密着型の小売チェーンでは、売上データの分析を強化するため GCP を導入しました。

  • 実際の取り組み:
    • 各店舗の売上データを GCP に集約
    • BigQuery を使用して売上傾向を分析
    • 簡単なダッシュボードを作成して店長が確認できるように
  • 得られた効果:
    • 売上データの集計作業時間を大幅に短縮
    • 季節商品の仕入れタイミングを最適化
    • 店舗間での売上情報共有が容易になった
  • 課題:
    • データ分析のスキルを持つ人材がおらず、外部コンサルタントへの依存度が高い
    • 月額費用は予想通りだが、コンサルタント費用が別途必要


クラウドソリューションを導入するメリット

メリット1:初期投資の削減

従来のオンプレミス環境では、サーバ機器の購入、ソフトウェアライセンスの取得、設置工事、設定作業など、運用開始前に高額な初期投資が必要でした。また、これらの準備には長期間を要するため、ビジネス要件の変化に迅速に対応することが困難でした。

一方、クラウドソリューションでは、アカウント開設は無料で利用を開始できます(※実際の運用には設定作業や移行作業のが別途必要)。従来と比較して短期間で運用を開始できるため、新しいビジネス機会に素早く対応することが可能になります。

メリット2:事業変化への柔軟な対応

従来のオンプレミス環境では、システムの容量不足が発生した場合、新しいサーバの購入から設置まで数ヶ月の時間が必要でした。また、将来の成長を見込んで過剰にサーバを購入した場合、使用しない容量分も固定費として継続的にコストが発生していました。

クラウドソリューションでは、管理画面から短時間で容量を変更でき、使用した分だけの従量課金制により、無駄なコストを削減できます。ビジネスの成長や季節変動に合わせて、必要な時に必要な分だけリソースを確保することが可能です。

メリット3:運用負担の軽減

オンプレミス環境では、ハードウェアの故障対応、サーバ室の環境管理(温度・湿度調整)、定期的なハードウェア更新、基本的なセキュリティ対策など、多岐にわたる運用業務を自社で担当する必要がありました。これらの業務には専門知識を持つ人材の確保と、常時対応できる体制の構築が必要でした。

クラウドソリューションでは、これらのインフラレベルの運用業務をクラウドプロバイダーが担当するため、企業は本来のビジネスに集中できるようになります。深夜や休日のハードウェア障害対応から解放され、IT 部門のリソースをより戦略的な業務に振り向けることが可能です。


クラウドソリューション導入時の注意点・ポイント

注意点1:セキュリティリスクの理解

クラウドソリューション導入時に最も重要なのが、「責任共有モデル」の理解です。これは、クラウドプロバイダーと利用企業が、それぞれ異なる部分のセキュリティを担当するという考え方です。

クラウドプロバイダーは、データセンターの物理的セキュリティ、ネットワークインフラの保護、基盤システムの脆弱性対応を担当します。一方、利用企業は、アクセス権限の管理、データの暗号化、アプリケーションレベルのセキュリティ、社員のアカウント管理を担当する必要があります。

実際のリスクとして、設定ミスによる情報漏洩事例が多数報告されており、社員の退職時のアカウント管理漏れや、複雑な権限設定による意図しないアクセス許可などが発生しています。これらの対策には、セキュリティ専門知識を持つ人材の確保が必要で、外部コンサルタントの活用も検討すべきです。また、セキュリティ対策には継続的な費用がかかることを予算に組み込む必要があります。

注意点2:最適な移行手法の選択

クラウド移行を成功させるためには、自社の現状と目標に応じて最適な移行手法を選択することが重要です。移行方法には様々な手法があり、それぞれ異なるメリットと適用場面があります。以下では、代表的な手法を 3 つ紹介します。

  • リフト・アンド・シフト: 既存システムをそのまま移行する方法で、短期間での移行が可能で初期コストを抑えられます。
  • リファクタリング: クラウド向けに一部改修する方法で、クラウドのメリットを活かしながら段階的に最適化できます。
  • リプレース: クラウド専用に新規開発する方法で、最大限の効果を得られる一方、計画的な進行が必要です。

重要なのは、現在のシステムの状況、予算、スケジュール、求める効果を総合的に評価し、自社に最も適した手法を選択することです。また、一度にすべてを移行するのではなく、重要度の低いシステムから段階的に進めることで、リスクを最小化しながら経験を積むことができます。

成功のためには、現状分析の徹底、移行手法の慎重な選択、段階的な実行計画の策定、社内体制の整備が重要です。

注意点3:コスト管理の重要性

クラウドの従量課金制は柔軟性がある一方で、適切な管理を怠ると予想以上のコストが発生するリスクがあります。多くの企業がクラウド導入後に直面する課題として、当初の予算を上回る請求が挙げられます。

コスト増加の最も多い原因は、使わなくなったサービスの停止忘れです。開発やテスト用に起動したサーバを停止し忘れたり、一時的に作成したデータ保存領域を削除し忘れたりすることで、使っていないのに料金が発生し続けます。また、必要以上に高性能なサーバを選択してしまうケースや、データ転送料金の見積もり不足も重要な要因となります。

効果的なコスト管理のためには、予算設定とアラート機能を活用し、設定した金額に近づいた際に通知を受け取れるようにすることが基本となります。また、月次での利用状況レビューを実施し、不要なサービスがないかを定期的に確認する体制を整えることが必要です。コスト最適化には専門的な知識が必要なため、社内に専門人材がいない場合は、導入初期段階で外部の専門家からの支援を受けることを推奨します。


まとめ

クラウドソリューションは、自社でサーバを管理する従来の方法に代わる選択肢として、多くの企業で採用が進んでいます。AWS、Azure、GCP という主要3つのプラットフォームは、それぞれ異なる特徴を持っており、企業の現状と目的に応じて選択する必要があります。

成功のための重要ポイント:

  • 十分な準備期間と予算の確保
  • 専門知識を持つ人材の確保または外部支援の活用
  • 段階的な移行計画の策定
  • 継続的なコスト監視とセキュリティ管理

クラウドソリューションは魔法の解決策ではありませんが、適切に導入・運用することで、企業の IT 基盤を現代化し、ビジネスの成長を支援する有効な手段となります。導入を検討される際は、自社の現状をしっかりと分析し、現実的な計画を立てることが成功の鍵となります。


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