【具体的な失敗事例多数】情シス・人事部 100 名に聞いた DX 失敗の落とし穴は?

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【具体的な失敗事例多数】情シス・人事部 100 名に聞いた DX 失敗の落とし穴は?

すべての会社に DX が必要かというとそのようなこともありません。

例えば、企業の DX 推進をサポートしている Kaizen Platform 代表取締役の須藤憲司氏は下記のように述べています。

僕は、世の中のすべての会社がDXした方がいいとは思っていないんです。やるべき会社とやらなくていい会社があると思っています。DXによって将来の自分たちの商売に大きな影響が出るところは絶対にやった方がいい。でも、そうじゃない業態って実はたくさんあるんです。

たとえば和菓子屋さんは、和菓子がおいしければ本来的には問題ないはずですよね。材料とか、店構えとか、包装とかに気を使うべきで、そういうところにデジタルをどう使うかは考えることはあっても、トランスフォームする必要はないと思います。その一方で、商売としてDXをやらないとまずい業態もたくさん存在します。自動車メーカーはこの先本当に自動車を売る会社のままなんだろうかと考えると、トヨタさんはモビリティサービスの会社になるんだと言っている。

これは将来十分に考えられる話ですよね。自分たちが何の商売をしているのかを考えたとき、デジタルによって自分たちを変えなければいけない会社と、単にデジタルを使えばいい会社の2つがあると思います。自分たちが顧客に何を提供したいかによって、そこは分かれる。何の商売をしているか、どんな体験を提供する商売をしているか。それを考えていけば、自ずとどちらに属する会社なのかが分かるんじゃないでしょうか。DXをやらなくていい会社は、本当にたくさんあると思っています。

引用:CNET JAPAN DXを「しなくていい会社」もある--Kaizen Platform須藤氏が考える真のデジタル化

つまり重要なのは、自社のミッションを達成する上で DX が 本当に必要か考え、DX 自体が目的化しないことが重要になります。

DX が必要な理由

既存システムを使い続けるリスクの回避

既存システムを使い続けることは、サイバー攻撃等の脅威にさらされるリスクや既存システムの運用保守にコストがかかるだけでなく、IT 人材の育成や採用などに投資できないリスクなどが考えられます。

生産性・業務効率の向上

既存システムを刷新しデジタル化することにより、全社横断的なシステムを構築、データ活用も進み、生産性や業務効率が向上します。

新規ビジネスの創出

DX を進めると生産性の向上が見込めるだけではなく「新たなビジネスの創造」にも期待できます。DX によってこれまでは取得できなかったデータが取れるようになり、このデータを基にして、新しいサービスを開発することが可能になります。

DX の失敗の原因

メリットが多くある DX ですが、ほとんどの企業が DX を推進することに難しさを感じています。DX の失敗としてよくあるものとして下記があります。

既存システムが複雑化・ブラックボックス化されており IT 化できない

既存システムが事業部ごとに構築されていたり、複雑化・ブラックボックス化されていることによって、全社横断的な使い方ができず IT 化がなかなか進まないということがあります。DX のために既存システムを変えようとしても現状把握にコストがかかり、成果がでないままプロジェクト失敗に終わるということがあります。

既存システムの刷新は長期間かつ大規模な予算を確保する必要があり決断ができない

大規模な既存システムの刷新には、予算を大幅に確保する必要あり、経営計画から練り直す必要があります。しかし、IT 領域の明るくない経営者にとっては既存システムを刷新した後のエクイティストーリーをなかなか描き切ることができません。また、未経験のプロジェクトに対する ROI の算出も難しく、経営陣を説得できる材料を集めきれません。また、中長期な目線で既存システムを刷新した後にどのように競争優位性を築いていくのかを考えないといけず、ロードマップ策定の段階での高いハードルがあり、DX が頓挫することがあります。

DX 人材の不足

有効求人倍率は DX 人材によっては 10 倍を超えることもあり、DX 人材の確保が難しい状況が続いています。外部から採用することが厳しいため、社内研修等を実施している会社も多いですが、アカデミックな研修内容に終始してしまい、業務に直接的に活かせなかったり、社員のモチベーション形成が難しかったり、ROI が不明なため、なかなか成果がでません。とはいっても現状のリソースでは DX 推進は無理のため、人材確保の段階で DX が失敗します。

情シス・人事部 100 名へのアンケートで見えてきた、DX 失敗に関わる落とし穴は?

では実際の DX 推進担当者・及び DX 人材の採用/育成担当者が実施し、落とし穴だったポイントについて見ていきましょう。

弊社実施のアンケートにて、DX 推進における「実施した施策のボトルネック」について調査しました。調査結果から DX に失敗してしまう可能がある落とし穴がみえてきました。

失敗例:情報システム部における DX 人材確保の落とし穴は?

落とし穴 1:経営層とのコミュニケーション

ビジネス部門の担当者は現行の課題改善を意識した行動を行う。経営者は中長期の事業戦略から計画を進める行動を行う。つまり、両者のギャップを埋めること

経営層、事業部長の IT リテラシーの低さ、および DX・IT への理解の浅さ

明確な経営課題を設定できぬまま DX を進めようとしたため、手段が目的になってしまっていた

落とし穴 2:現場とのコミュニケーションや業務理解

既存業務のやり方を変更するにあたり、社員から不安の声や抵抗感が発生。 情シス部門についても新しい知識習得へ前向きなスタッフと抵抗感が出るスタッフが出た

自らの業務に無関係と思い込むデジタルに対する主体性のなさ、スキルの不足 、学習機会の不足

各部門の意識を統一することと DX 推進の価値を浸透させることが重要

業務の棚卸しは最も大変な作業でした。 ヒアリングだけでは分からず、現場で業務の遂行状況を見て整理をしていきました

落とし穴 3:方向性や優先順位の策定

自社内でまず何から取り組むべきかの方向性を出すところに苦心しました

どこから着手するかの優先順位をつけるのが難しい

人材育成と具体的な案件の発掘です。 IT 系のリテラシーが高い会社ではないので、推進者に役割を持たせてもネタがあがってこない状況でした

経営陣も推進担当者も DX という言葉ありきで、具体的にどのようなことを進めていくべきなのかその目標が見えない

失敗例:人事部における DX 人材確保の落とし穴は?

また、弊社にて人事部 50 名に「DX 人材確保において成果のでていない施策とその理由」についてアンケートをとりました。その結果次のような回答になりました。

落とし穴1:新卒・中途採用

賃金制度の改定が追いついておらず、高付加価値人材に対して十分な待遇提案ができていないため、中途採用の応募者は一定数あるが、報酬面の柔軟対応ができておらず、承諾までに至っていない

社内ネットワークと実務能力不足のため、新卒採用の場合知識はあるが社内のコンセンサスを掴み切ることは困難

明確なミッション設定と具体的な成果給が示されていないため、人材紹介会社に中途採用の募集をかけているが、良い人材を採用には至っていない

DX 推進に資する人材要件が現在の当社の状況を踏まえて、明確に定義するのが困難である。また、中途採用市場における報酬高騰により、人事制度上、確保・リテンションが難しい。そのため、DX 推進の為に役員ポジションからヘッドハンティングをして外部から人材を登用し、その下に社内・社外の人材を補強すべく、配転、中途採用に取り組んでいるがいまいち成果がでていない

落とし穴 2:社内外研修

必要なスキルの定義ができておらず、インプットすべきスキルセットが明らかになっていないため、DX 人材のスキル向上を図っていきたいが、スキルインプットについて体系的な仕組みの整備ができていない。

どのような研修が DX 推進人材の育成、強化に対して効果的であるかを具体化しきれておらず、社員(受講者)にとって魅力的な研修コンテンツを提供できていないため、新しい研修の企画や外部業者への発注等は行っているが、受講率の伸び悩みもあり、実務面での成果に繋がっている感触が得られていない。

任意での研修や費用補助では動機づけに結びついておらず、業務外の自由参加の研修や DX 関連資格の取得費用や自己研鑽費用補助をしても専門性が身につくレベルには至っていない。

落とし穴 3:資格取得制度の充実

現在の仕事が忙しい、または現在の仕事で満足している社員も多く、資格奨励などを行っても、応募者が思ったほど集まらない。

現在の業務と切り離して資格の勉強をすることに対する本人及び部署としてのニーズが不明確であり、受け入れられておらず IT ベンダーが推奨する検定や研修プログラムを展開したが扱えず人材がいまいち増えない。

世間一般的には DX 人材の定義が定まっておらず、また浸透もしていない。 そのため、自学でのスキル習得は本来の会社が求めるスキルとアンマッチとなる可能性が高い。

落とし穴 4:配置転換

どこの会社・組織でも必要とされており、異動に繋がらないケースが多いため、思うように異動調整ができず、必要とする人材を確保できていない。

社内のポテンシャル人材を期待し配置転換行っているが、ポテンシャルのある人材はすでに流出していたり、本社に異動していたりするため、ベースとなるビジネススキルが弱く、活躍が限定的。

社内の DX 人材はそもそも少なく、社内に適正人材がいてもその部署が離さない為、異動が困難。

上記アンケートから見えてきた、DX で失敗しないためには?

上記のアンケートより、情報システム部や開発部等の DX 推進部において DX で失敗しないためには次の 3 つが重要になりそうです。

  1. 地道な DX や IT への正しい理解と必要性の醸成・実行へのモチベーション管理
  2. 上下左右の関係者との継続的なコミュニケーションと調整
  3. 全社的なリテラシーを向上させ、ロードマップと優先順位を策定する

また DX 人材確保・育成で失敗しないためには、上記落とし穴を把握した上で、次のことを意識する必要がありそうです。

新卒・中途採用

新卒では社内の力学を把握できず、推進力不足で失敗の可能性が高いので、権力を持ち社内調整できるメンバーとともにプロジェクトをすすめる。また中途採用は、DX 推進人材の評価や社内の報酬制度がマーケットに追いついておらず、採用までいたらないことが多い。その根源として DX の重要性の醸成が必要のため、DX 人材の ROI を調査し、魅力的な報酬制度の導入が必要そうです。

配置転換

社内公募により課題への意識が高い人材起用や、IT リテラシーの素養ある人材同士を配置転換させることによる横連携等を実施することにより解決を図っていく必要がありそうです。

社内外研修・資格取得制度の充実

社員への DX の必要性や重要性の醸成がうまくいかないと、社内外研修を実施しても効果が薄いようです。まずは自社なりのDX人材の定義と、資格取得支援や社内研修の形式的な仕組みだけでなく、モチベーションや危機感をつくる仕掛けが必要になりそうです。

以下で DX 人材育成方法についてまとめておりますのでご参考ください。

まとめ

なぜ DX が失敗するのか具体的な事例を用いてご紹介いたしました。

まずは失敗しないための重要な項目を認識いただき、踏まえた上で自社にとって最適な対応を意識して行動することがよいです。

自社が現状本当に DX を進める必要があるのかを把握した上で、今後の指針をとってみるとよいでしょう。

「なぜ DX は失敗するのか」についてのアンケート結果のご紹介

情報システム部、人事部のアンケートに聞いた、DX 推進・スキル・育成における成功・失敗事例についてまとめております。本記事の詳細を確認することができますので、ぜひご参考ください。

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