【AI 技術導入ガイド】カスタマーサポートを革新するAIエージェントとは?メリットや活用法を解説

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【AI 技術導入ガイド】カスタマーサポートを革新するAIエージェントとは?メリットや活用法を解説

AIによる変革の波が、ビジネスのあらゆる場面を根底から変えつつあります。単純作業の自動化から、新たな事業機会の発見に至るまで、その影響は枚挙にいとまがありません。中でも、特に大きな進化の渦中にあるのが、顧客との最前線であるカスタマーサポートの領域です。

この変化の核となっているのが、本記事のテーマである「AI エージェント」です。従来のチャットボットのように決まった応答を返すだけでなく、自ら考えて行動する AI エージェントは、顧客体験を劇的に向上させ、オペレータの働き方を大きく変える可能性を秘めています

しかし、「 AI エージェントとは具体的に何なのか?」「どう活用すれば成果に繋がるのか?」といった疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

本記事では、カスタマーサポートにおける AI エージェントの基本から、具体的な活用事例、導入のメリット、そして成功に導くためのポイントまで、分かりやすく解説します。


AI エージェントとは?

まずは、 AI エージェントがどのようなもので、なぜ今注目されているのかを見ていきましょう。

AI エージェントの定義

AI エージェントとは、特定の目標を達成するために、周囲の状況を認識し、自律的に判断・行動する AI のことです。

従来のチャットボットが決められたシナリオに沿って応答するのに対し、 AI エージェントは「顧客の問題を解決する」といった目標を与えれば、過去の対話履歴やマニュアルを参照し、時には外部システムと連携するなど、目標達成のために必要な一連のタスクを自ら遂行します。

カスタマーサポートで AI エージェントが必要とされる背景

AI エージェントが注目される背景には、従来のカスタマーサポートが抱える課題があります。

  • 顧客の自己解決ニーズの高まりと多様化するチャネル
    今日の顧客は、電話だけでなくチャットや SNS など、好きなチャネルを使い、好きなタイミングで、迅速に問題を自己解決したいと考えています。しかし、従来の静的な FAQ サイトだけでは、複雑化するニーズに応えきれなくなっています。
  • オペレータの経験やスキルへの依存と品質のばらつき
    顧客対応の品質が、個々のオペレータの経験やスキルに大きく依存してしまうことは、長年の課題でした。これにより、顧客は担当者によって異なる対応を受けることになり、満足度にばらつきが生まれていました。
  • 蓄積される顧客の声( VoC )の活用不全
    日々寄せられる大量の問い合わせには、サービス改善に繋がる貴重な「顧客の声( Voice of Customer )」が含まれています。しかし、その膨大なデータを人手で分析し、体系的に活用することは非常に困難でした。

これらの課題に対し、 AI エージェントは、24時間365日一貫した品質で対応し、さらにその対話データを分析・活用するための強力な解決策となるのです。

従来のチャットボットとの違い

AI エージェントと従来のチャットボットは、どのように違うのでしょうか。その最も大きな違いは、自律性と実行能力にあります。

AI エージェント

従来のチャットボット

役割

目標達成のために自律的に
思考・行動するエージェント

あらかじめ設定されたシナリオ
に沿って応答するプログラム

能力

・文脈や意図を深く理解
・複数の社内システムと連携
・過去の対話履歴を元に応対を最適化

・キーワードに基づいた単純な応答
・限定的なシナリオ分岐
・一問一答形式が基本

「先月の請求額がおかしい」
という問い合わせに対し、顧客DBと
決済システムを自ら確認し、「〇〇の
料金でした。明細をメールでお送り
しますか?」と提案・実行する。

「請求額」というキーワード
に反応し、「請求額については
こちらのFAQをご覧ください」
と定型文とURLを返す。

このように、 AI エージェントは単なる自動応答ツールではなく、オペレータの業務を代行・支援する「賢い同僚」のような存在へと進化しています。


AI エージェントの活用事例3選

AI エージェントは、具体的にカスタマーサポートの現場でどのように活用できるのでしょうか。3つの代表的な事例をご紹介します。

事例1: 24時間365日対応の自律型FAQ対応

Webサイトやアプリに寄せられる「よくある質問」への対応は、 AI エージェントの得意分野です。深夜や休日でも、顧客からの問い合わせに即座に対応します。単にFAQページのリンクを提示するだけでなく、顧客の質問の意図を汲み取り、社内ナレッジから最適な回答を生成して対話形式で解決に導きます。これにより、顧客の自己解決率が向上し、オペレータはより複雑な問い合わせに集中できるようになります。

事例2: オペレータのリアルタイム業務支援

AI エージェントは、顧客とオペレータの対話をリアルタイムでモニタリングし、オペレータの業務を支援することも可能です。例えば、顧客との通話中に、関連する過去の問い合わせ履歴やナレッジベース内の該当箇所をオペレータの画面に自動で表示させます。これにより、オペレータは保留時間を削減し、迅速かつ正確な回答を提供できるようになります。特に新人オペレータの即戦力化や、応対品質の平準化に大きく貢献します。

事例3: 潜在的な顧客課題の検知とプロアクティブな解決

AI エージェントは、顧客からの問い合わせを待つだけでなく、自ら課題を発見し、能動的にアプローチすることもできます。例えば、ECサイトで特定のエラーページを何度も閲覧している顧客を検知し、「何かお困りですか?」とポップアップで解決策を提示したり、 CRM データを分析して「近々契約更新を迎える顧客」にアラートを出し、解約リスクを未然に防いだりといった活用が考えられます。


AI エージェントを導入するメリット

AI エージェントの導入は、企業に3つの大きなメリットをもたらします。

メリット1: 顧客満足度( CS )の飛躍的な向上

24時間365日、待たせることのないスピーディな対応は、顧客満足度を大きく向上させます。また、 AI エージェントは膨大な顧客データや対応履歴を瞬時に参照できるため、一人ひとりの状況に合わせた、よりパーソナライズされたサポートを提供することが可能です。

メリット2: オペレータの生産性向上とエンゲージメント向上

定型的な問い合わせや単純作業を AI エージェントに任せることで、オペレータはより専門性が高く、共感が求められる複雑な問題に集中できます。これにより、オペレータ一人ひとりの生産性が向上するだけでなく、「人間にしかできない価値ある仕事」に注力できるため、仕事への満足度やエンゲージメント( EX )の向上にも繋がります。

メリット3: コスト削減と新たなビジネスインサイトの発見

オペレータの採用・育成コストや、時間外対応にかかる人件費を大幅に削減できます。さらに、 AI エージェントは日々蓄積される膨大な顧客との対話データを分析し、「製品Aに関する問い合わせが急増している」「Webサイトのこの部分で離脱する顧客が多い」といった、これまで見過ごされがちだったビジネス改善のヒントや新たなニーズを発見するための貴重なインサイトを提供します。


AI エージェント導入時の注意点・ポイント

多くのメリットがある一方、カスタマーサポートに AI エージェントの導入を成功させるためには、カスタマーサポート特有の注意点を押さえておく必要があります。

注意点1: 複雑な感情を伴う問い合わせへの対応限界

顧客からのクレームや相談の中には、深い共感や配慮が求められる、非常にデリケートなものが含まれます。 AI は論理的な問題解決は得意ですが、人間の感情の機微を完全に理解し、寄り添うことはまだ困難です。 AI に任せる範囲を見極め、感情的な対応が必要な場合は速やかに人間のオペレータへ引き継ぐ、といった丁寧なプロセス設計が不可欠です。

注意点2: 緊急時や例外的な状況における判断の難しさ

AI エージェントは、事前に登録されたデータやナレッジに基づいて判断を行います。そのため、過去に例のないシステム障害や、想定外の問い合わせといった、緊急・例外的な状況に直面した場合、適切な判断を下せない可能性があります。万が一の事態に備え、人間のオペレータが介入・判断するためのエスカレーションルールを明確に定めておくことが重要です。

注意点3: 個人情報や機密情報の取り扱いに関するセキュリティリスク

カスタマーサポートでは、氏名や住所、時には決済情報といった、非常に機密性の高い個人情報を取り扱います。 AI エージェントがこれらの情報にアクセスする場合、不正アクセスや情報漏洩を防ぐための万全なセキュリティ対策が求められます。導入するソリューションが、業界のセキュリティ基準や関連法規を遵守しているか、厳しく評価する必要があります


AI エージェントを導入するまでの3ステップ

AI エージェントの導入を決定した場合、どのような手順で進めればよいのでしょうか。ここでは、企業のカスタマーサポート課題に応じたカスタムソリューション開発を前提とした、失敗リスクを最小化しながら効果的に導入を進めるための3つのステップをご紹介します。

ステップ1:カスタマーサポート業務プロセスの現状分析と要件定義

目的:
自社のカスタマーサポートプロセスを詳細に分析し、課題を特定や導入する業務範囲を明確にし、最適な AI エージェントソリューションの要件を定義する

実施内容例:

  • カスタマーサポート部門への詳細なヒアリング実施(現在の業務フロー、課題、目標の調査)
  • カスタマーサポート業務プロセスの可視化と課題の優先度付け
  • 顧客データや問い合わせデータの種類と取り扱いルールの整理
  • 既存のCRMやナレッジ管理システムとの連携要件の確認
  • AI エージェントで解決すべき課題の明確化と機能要件の策定

完了条件例:

  • カスタマーサポートプロセス全体が詳細にマッピングされ、解決すべき課題が明確になっている
  • 顧客データや問い合わせデータの取り扱いルールとセキュリティ要件が整理されている
  • 機能要件と技術仕様が定義されている
  • カスタマーサポート部門からの導入合意と協力体制が構築されている

ステップ2:概念実証( PoC )の実施

目的:
定義した要件に基づいて AI エージェントソリューションの有効性を検証し、本番導入の判断材料を得る

実施内容例:

  • 限定的なカスタマーサポート業務(例:特定の製品に関する問い合わせ対応)での実証実験の実施
  • 必要に応じて課題解決に特化したプロトタイプ AI エージェントシステムの設計・開発
  • オペレータによる実際の利用とフィードバック収集
  • 効果測定(応答時間、自己解決率、対応精度など)と改善点の洗い出し

完了条件例:

  • AI エージェントの基本機能と効果が実証されている
  • オペレータが実際に使用し、操作性と効果を確認できている
  • 設定した目標効果(顧客満足度向上、応答時間短縮など)の実現可能性が確認されている
  • 本格開発に向けた技術的課題と解決策が明確になっている

ステップ3:本番システム開発と段階的導入

目的:
PoC の結果を踏まえ、業務要件を満たす AI エージェントシステムを開発し、段階的に導入する

実施内容例:

  • プロトタイプの知見を活かした本格システムの設計・開発
  • セキュリティ・可用性・拡張性を考慮したシステム基盤の構築
  • 特定のサポートチームまたは問い合わせチャネルから段階的な導入開始
  • 運用監視体制の構築と継続的な改善プロセスの確立

完了条件例:

  • 本格運用システムが安定稼働し、必要な機能が実装されている
  • 段階的導入が成功し、カスタマーサポート関連の KPI 改善が確認されている
  • 運用・保守体制が整備され、継続的改善の仕組みが構築されている
  • 次段階の展開に向けた準備が整っている

これらのステップを踏むことで、企業固有のカスタマーサポート課題に最適化された AI エージェントシステムを構築し、リスクを最小化しながら効果を最大化できます。特にプロトタイプ開発を含む PoC での十分な検証を行うことが、本格システム開発と運用成功の鍵となります。


まとめ

本記事では、カスタマーサポート領域における AI エージェントの活用について、その基本からメリット、導入のポイントまでを解説しました。

  • AI エージェントは、自律的に思考・行動し、顧客の問題解決やオペレータの業務支援を行う
  • 導入することで、「顧客満足度の向上」「生産性向上」「コスト削減」といった大きなメリットが期待できる
  • 成功のためには、「目的の明確化」「ナレッジ整備」「人間との協業体制」が重要となる

AI エージェントは、もはや未来の技術ではなく、カスタマーサポートの現場を大きく変える現実的なソリューションです。自社の課題解決の選択肢として、 AI エージェントの導入を検討してみてはいかがでしょうか。


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