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【製造業の2025年、DX人材育成の秘訣とは?】 現場で役立っている取り組みとして注目すべきは、「実践的なワークショップ」と「DXアセスメント」
製造業のDX人材育成に関する実態調査
eラーニングメインのリテラシー向上施策から、より実践的な研修へシフトする傾向が明らかに
株式会社キカガクは、この1年間でDX推進による具体的な成果が出ている大手製造業(年商5,000億以上)の役員、管理職(部長・課長相当)、DX推進担当者、経営企画、人事担当者、DX推進業務に携わっている方103名を対象に、製造業のDX人材に関する育成実態調査を実施しました。
本記事では、全10問の調査結果のうち、7問について製造業DX人材コンサルタントの見解を入れて解説しています。調査の全容をご覧になりたい方は、ぜひ以下リンクからダウンロードください。
<解説者>
株式会社キカガク
執行役員CRO 兼 研修事業部 事業部長
製造業DX人材育成コンサルタント
秋山 貴史
IPA 独立行政法人 情報処理推進機構のDX動向2024によると、製造業のDX人材の確保に関しては、87.9%が不足している実態が明らかとなっています。このため、多くの企業が社内人材の育成を経営戦略の重要課題として位置づけていますが、効果的な育成手法の確立には依然として課題が残されています。
本調査では、DX人材育成において効果を感じている企業への調査から、効果があった取り組みや今後の課題を明らかにし、有効なDX人材育成のポイントを紐解いていきます。
調査結果からわかる重要なポイント
- eラーニングの導入が進み一定の効果を感じている大手企業が多いが、同時により実践的な研修へのシフトの重要性が認識されている
- 研修と合わせてDXアセスメントを実施することで、必要な内容の明確化や効果測定等が可能になり、より効率的な教育を実施できる可能性が高い
- 実践型研修を実施していくためには、製造現場の課題を理解した上で、そこに合わせたカスタマイズができる研修会社の選定が重要
調査概要
- 調査名称:製造業のDX人材に関する育成実態調査
- 調査方法:IDEATECHが提供するリサーチデータマーケティング「リサピー®︎」の企画によるインターネット調査
- 調査期間:2025年1月8日〜同年1月14日
- 有効回答:この1年間でDX推進による具体的な成果が出ている大手製造業(年商5,000億以上)の役員、管理職(部長・課長相当)、DX推進担当者、経営企画、人事担当者、DX推進業務に携わっている方103名
※ 合計を100%とするため、一部の数値について端数の切り上げ処理を行っております。そのため、実際の計算値とは若干の差異が生じる場合がございます。
≪本調査レポートの利用条件≫
1 情報の出典元として「株式会社キカガク」の名前を明記してください。
2 ウェブサイトで使用する場合は、出典元として、下記リンクを設置してください。
URL:https://www.kikagaku.co.jp/service/business
本調査の主な調査結果
eラーニングの導入率が高い一方で、現場での実践に役立つ取り組みとして回答される割合は「実践的なワークショップ」が最上位
DXを実務に活用していくにあたり、インプット中心のeラーニングだけではなく、ワークなどを通した実践機会が重要
- 実施している取り組みの上位3つは「eラーニング」72.8%、「実践的なワークショップ」45.6%、「座学中心のオフライン集合研修」40.8%
- 実施している取り組みのうち、現場での実践に最も役立つと回答された上位3つは「実践的なワークショップ」46.5%、「eラーニング」38.7%、「DXアセスメント」24.4%
- 実施率では6位の「DXアセスメント」が、役立つ取り組みとしては4位に浮上、実施企業のうち最も役立つと回答された割合では3位となり、有用性が高いと解釈できる
調査の全容をご覧になりたい方は、ぜひ以下のボタンからダウンロードください。
調査結果の詳細
DX人材育成研修として「eラーニング」を実施する大手製造業は72.8%
「Q1.現在実施しているDX人材育成研修に関する取り組みを全て教えてください。(複数回答)」(n=103)と質問したところ、「eラーニング」が72.8%、「実践的なワークショップ」が45.6%、「座学中心のオフライン集合研修」が40.8%という回答となりました。
・eラーニング:72.8%
・実践的なワークショップ:45.6%
・座学中心のオフライン集合研修:40.8%
・座学中心のオンライン集合研修:37.9%
・プロジェクト型学習(PBL/課題解決型学習):35.9%
・DXアセスメント:35.9%
・外部研修への派遣:34.0%
・社内メンタリング:28.2%
・その他:0.0%
・特にない:1.0%
・わからない/答えられない:2.9%
現場での実践に最も役立っている研修、「eラーニング」や「実践的なワークショップ」など
Q1で「特にない」「わからない/答えられない」以外を回答した方に、「Q2.Q1で選択した研修に関する取り組みのうち、現場での実践に最も役立っているものはどれですか。」(n=99)と質問したところ、「eラーニング」が29.3%、「実践的なワークショップ」が22.2%、「座学中心のオフライン集合研修」が10.1%という回答となりました。
・eラーニング:29.3%
・実践的なワークショップ:22.2%
・座学中心のオフライン集合研修:10.1%
・DXアセスメント:9.1%
・座学中心のオンライン集合研修:8.1%
・プロジェクト型学習(PBL/課題解決型学習):6.1%
・外部研修への派遣:5.1%
・社内メンタリング:3.0%
・その他:0.0%
・特にない:4.0%
・わからない/答えられない:3.0%
コンサルタントの解説
・インプット中心のeラーニングから実践的な研修へのシフトが重要に
多くの企業がeラーニングを導入していますが、現場で最も役立っている研修としては、eラーニングと実践的なワークショップが僅差となっています。これは、知識の定着や応用力を高めるためには、インプットだけでなく、アウトプット機会が含まれる研修が重要であることを示唆しています。
実際に、eラーニングの出口戦略としてワーク中心の集合型研修を実施している企業もあり、より「実務につなげる」ことを意識した育成の設計が重要になっています。
・DXアセスメントの実施が、人材育成の効果を高める可能性
「DXアセスメント」は、研修の実施状況(Q1)では6位と比較的低い割合ですが、現場での実践に役立っている研修(Q2)では4位にランクアップしています。このギャップは、実施率こそ低いものの効果が高いことを示唆しています。
アセスメントで現状を可視化することで、個々のレベルに合わせた研修を実施できる上に、研修前後の受検により効果を定量化することも可能です。研修と合わせてアセスメントを実施することで、より効果的な教育ができるでしょう。
研修内容のうち、すでに現場で成果が出ていること、「従業員のデジタルリテラシー向上」「現場主導のDX推進体制の構築」が上位
「Q3.研修で学んだ内容のうち、すでに現場で成果が出ていることを教えてください。(複数回答)」(n=103)と質問したところ、「従業員のデジタルリテラシー向上」が44.7%、「現場主導のDX推進体制の構築」が42.7%、「基幹システムやビジネスツールの効果的な活用による業務効率の向上」が37.9%という回答となりました。
・従業員のデジタルリテラシー向上:44.7%
・現場主導のDX推進体制の構築:42.7%
・基幹システムやビジネスツールの効果的な活用による業務効率の向上:37.9%
・データ分析ツールを用いた生産性向上施策の実施:36.9%
・データドリブンな組織文化の醸成:31.1%
・デジタルツールによる部門間コミュニケーションの活性化:31.1%
・新たな顧客価値の創造と提供:23.3%
・デジタル技術を活用した品質管理体制の構築:10.7%
・その他:0.0%
・特にない:5.8%
・わからない/答えられない:3.9%
製造業DX人材育成コンサルタントの解説
・DX推進の素地を作りつつあるものの、新たな価値創造には至っていない企業が多数
研修で学んだ内容のうち、すでに現場で成果が出ていることについては、「従業員のデジタルリテラシー向上(44.7%)」が最多の回答になっており、適切なレベルの研修を適切な形式で届ける(基礎レベルをeラーニングに実施等)ことで成果を出しています。一方で、一般的に多くの企業がDX推進によって実現することを掲げる「新たな顧客価値の創造と提供」(23.3%)や「デジタル技術を活用した品質管理体制の構築」(10.7%)などの回答割合は低く、さらに実践的な研修や、実業務へのつなぎ込みが重要になっています。
効果的なDX人材育成を実現する上で、研修に必要な要素、「学習者のレベルに合わせた研修内容の選択」が最多
「Q4.効果的なDX人材育成を実現する上で、研修に必要だと感じる要素があれば教えてください。(複数回答)」(n=103)と質問したところ、「学習者のレベルに合わせた研修内容の選択」が47.6%、「最適な研修形式の選択(eラーニング/集合研修/ワークショップetc.)」が45.6%、「現場の問題解決につながる内容・ワーク設計」が45.6%という回答となりました。
・学習者のレベルに合わせた研修内容の選択:47.6%
・最適な研修形式の選択(eラーニング/集合研修/ワークショップetc.):45.6%
・現場の問題解決につながる内容・ワーク設計:45.6%
・自社の育成目標に合わせた研修内容の構築・カスタマイズ:39.8%
・講師の教え方や講義の質:34.0%
・研修効果の測定と振り返り、改善:29.1%
・研修後のフォローアップと継続的なサポート:26.2%
・その他:0.0%
・特にない:5.8%
製造業DX人材育成コンサルタントの解説
・現在地の把握とレベルに合った学習が成果の土台となる
研修において重要な要素として「学習者のレベルに合わせた研修内容の選択(47.6%)」が最多となっており、「最適な研修形式の選択(eラーニング/集合研修/ワークショップetc.)(45.6%)」と合わせて育成成果を出す土台になっていることがわかります。先のDXアセスメントの重要性とも整合性が取れており、まずは自社の状況を理解し、適切に研修を設計する必要があります。
・ワークの設計やカスタマイズで現場課題の解決に寄せることで、DX推進体制構築につなげている
また、「現場の問題解決につながる内容・ワーク設計(45.6%)」も同様に重要視されており、研修内容を現場課題に特化させることで、DX推進体制の構築に繋げられることがわかります。研修で学んだ内容が現場で成果を出している項目として、「現場主導のDX推進体制の構築」が2番目に多く(42.7%)挙げられており、現場課題に寄り添った研修が、組織全体の変革を促進していることが示唆されます。
4割以上が、研修内容を現場で活用する上で、「個々人の活用意識が不足している」や「全社的なリテラシー不足」の課題あり
「Q6.研修で学んだ内容を現場で活用するにあたって、課題に感じることを教えてください。(複数回答)」(n=103)と質問したところ、「個々人の活用意識が不足している」が43.7%、「全社的なリテラシー不足」が40.8%、「データ基盤やツール導入などスキルを活かす環境整備ができていない」が33.0%という回答となりました。
・個々人の活用意識が不足している:43.7%
・全社的なリテラシー不足:40.8%
・データ基盤やツール導入などスキルを活かす環境整備ができていない:33.0%
・学んだ内容と実務の関連性が低い:30.1%
・経営層・マネジメント層のデジタル活用への理解不足:28.2%
・育成した人材を適切な業務やプロジェクトにアサインできていない:20.4%
・その他:1.0%
・特にない:5.8%
・わからない/答えられない:1.9%
今後強化したい人材育成の取り組み、第1位「個々人のデジタル活用意識の向上」
「Q7.今後のDX推進を成功させるために、特に強化したい人材育成の取り組みを教えてください。(複数回答)」(n=103)と質問したところ、「個々人のデジタル活用意識の向上」が49.5%、「より実践的なデジタルスキルの習得強化」が43.7%、「社内でデジタル活用を指導できる人材の育成」が40.8%という回答となりました。
・個々人のデジタル活用意識の向上:49.5%
・より実践的なデジタルスキルの習得強化:43.7%
・社内でデジタル活用を指導できる人材の育成:40.8%
・全社的なデジタルリテラシーの向上:37.9%
・プロジェクトへの参加・立ち上げなど実践機会の提供:32.0%
・社員が継続的に学べる仕組みの構築:27.2%
・経営層・マネジメント層のデジタル変革に対する意識変容:21.4%
・アセスメントツールを使用した人材のスキルと教育ニーズの可視化:12.6%
・その他:0.0%
・特にない:2.9%
・わからない/答えられない:1.9%
製造業DX人材育成コンサルタントの解説
・アウトプットまで見据えた研修設計の重要性
Q6の「個々人の活用意識が不足している」という課題は、インプット中心の研修だけでは人材育成効果が限定的になってしまうことを示しています。知識を身に付けることと並行して、学んだことを実践で活用しようとする意識改革が必要です。具体的には、ワーク型やプロジェクト型の体験を伴う研修や、成功事例の共有、実際のプロジェクトへのアサインなどが考えられます。
・意識変容、行動変容につながる研修が求められる
実際、今後の取り組みとして「個々人のデジタル活用意識の向上」(49.5%)と「より実践的なデジタルスキルの習得強化」(43.7%)が上位に挙げられており、インプット中心の形式的な研修から、意識変容や業務変革の実践につながるような研修へとシフトする必要性を認識していることがわかります。
DX人材育成を外部に依頼する場合には、「製造現場の課題やニーズへの深い理解」などを重視
「Q8.DX人材育成を外部の研修会社に依頼する場合に、特に重視する条件を教えてください。(複数回答)」(n=103)と質問したところ、「製造現場の課題やニーズを深く理解している」が44.7%、「自社の状況に合わせた研修内容にカスタマイズできる」が43.7%、「講師が専門知識と実務経験をもっている」が43.7%という回答となりました。
・製造現場の課題やニーズを深く理解している:44.7%
・自社の状況に合わせた研修内容にカスタマイズできる:43.7%
・講師が専門知識と実務経験をもっている:43.7%
・研修後も実践的なアドバイスがある:36.9%
・具体的な成功事例を持っている:35.0%
・業界の最新動向を知っている:32.0%
・研修効果の測定方法を提供してくれる:21.4%
・その他:0.0%
・わからない/答えられない:5.8%
製造業DX人材育成コンサルタントの解説
・企業理解・業界理解を持った上でのカスタマイズで効果的な研修が可能に
DX人材育成を外部に依頼する場合に最も重視する条件として、「製造現場の課題やニーズを深く理解している」ことが挙げられています。これは、外部研修会社が単に知識を教えるだけでなく、企業の具体的な課題を理解し、それに合わせた研修を提供する必要があることを示しています。
「自社の状況に合わせた研修内容にカスタマイズできる」ことも重視されています。これは、画一的な研修ではなく、企業の個別ニーズに応じた研修が求められていることを示しています。
製造業にはハードウェア人材にソフトウェア技術を身に着けてもらう、モノづくり中心からサービス中心の思考に切り替えるなどの重要なテーマがあり、かつそのために必要なインプットは扱う製品によっても異なります。そのため、こういった個別のニーズに対応できる研修会社の選定が重要になってくるでしょう。
まとめ
今回の調査では、DX推進で成果を上げている大手製造業においても、人材育成において「個々人の活用意識不足」(43.7%)や「全社的なリテラシー不足」(40.8%)といった課題が顕在化していることが明らかになりました。
多くの企業がeラーニングを導入する一方で、現場で役立つ研修の要素として「現場の問題解決につながる内容・ワーク設計」(45.6%)が重視されていることからも、知識のインプットだけでなく、アウトプットを意識した研修設計が不可欠です。また、DXアセスメントの活用により、個々のスキルレベルに合わせた最適な研修を提供することで、より高い効果が期待できます。
製造業がDXを成功させるためには、現場のニーズに合わせた実践的な研修と、社員一人ひとりの意識改革が不可欠です。今回の調査結果が、各企業におけるDX人材育成戦略の一助となれば幸いです。
資料では、研修を現場での実践につなげるために有効だった施策や、より詳細な研修効果などを含む完全版をご紹介しています。皆様のご参考になれば幸いです。
目次
- 製造業のDX人材育成に関する実態調査
- eラーニングメインのリテラシー向上施策から、より実践的な研修へシフトする傾向が明らかに
- 調査結果からわかる重要なポイント
- 調査概要
- 本調査の主な調査結果
- 調査結果の詳細
- DX人材育成研修として「eラーニング」を実施する大手製造業は72.8%
- 現場での実践に最も役立っている研修、「eラーニング」や「実践的なワークショップ」など
- 研修内容のうち、すでに現場で成果が出ていること、「従業員のデジタルリテラシー向上」「現場主導のDX推進体制の構築」が上位
- 効果的なDX人材育成を実現する上で、研修に必要な要素、「学習者のレベルに合わせた研修内容の選択」が最多
- 4割以上が、研修内容を現場で活用する上で、「個々人の活用意識が不足している」や「全社的なリテラシー不足」の課題あり
- 今後強化したい人材育成の取り組み、第1位「個々人のデジタル活用意識の向上」
- DX人材育成を外部に依頼する場合には、「製造現場の課題やニーズへの深い理解」などを重視
- まとめ
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