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伝統の「カイゼン」をDXで変革。 アセスメントとプロジェクト型研修で“学び”を“実践”に変える、デンソー流育成術

株式会社デンソー

  • ビジネスアーキテクト
  • データサイエンティスト
  • サイバーセキュリティ
  • ソフトウェアエンジニア
  • デザイナー
  • 全社のリテラシーを向上させるとともに、学んだ知識を実務に生かせる人材を育成したい
  • 入門
  • 輸送用機器

自動車業界が100年に1度と言われる大変革期を迎える中、日本の製造業の強みとされてきた「カイゼン」文化そのものもアップデートが求められています。そのカギを握るのがDXです。

株式会社デンソー(以下、デンソー)では、全社的なDXリテラシーの底上げと、身につけた知識を実務につなげるための人材活用が喫緊の課題となっていました。

同社は、DXアセスメントとeラーニングを組み合わせた体系的な知識習得、そして知識を実践につなげるPBL研修(Project Based Learning / プロジェクト型研修)を実施。その結果、現場主導のDXが着実に進んでいます。

本記事では、ITデジタル本部の石原 和嘉様、デジタル活用推進部 プロセス・人材変革室の白井 瑛様、戸田 直樹様に、研修実施の背景や成果、今後の展望を伺いました。

課題

  • 全社的なDXスキル向上を目指していたが、eラーニング等で個人のスキルは向上しても、DXを実践につなげることが難しかった。
  • デジタルスキル・知識を定着させ、組織・チームで変革を推進するための仕組み作りを目指していた。

解決策・実施した研修

  • 全社向けにチーム制のeラーニングとアセスメントを用意し、基礎力向上を図った。
  • さらに、現場課題をテーマとするPBL研修を組み合わせることで、学習から実践への道筋を構築した。

効果・成果

  • アセスメントでは参加者の8割以上がスコア向上し、成長を実感。
  • PBL研修からは具体的な業務改善事例が複数創出され、全社的な変革機運の高まりを実現した。

「デジタルでカイゼン文化をアップデートする」大変革期における人材育成への挑戦

今回、DX人材育成に取り組むことになった背景やきっかけを教えてください。

デンソー 石原様(以下、石原様):EVや自動運転など自動車の機能が大規模・複雑化する一方で、これまでのように業務量の増加に対して人手が増えていく訳ではありません。

これまで現場の努力と工夫で支えてきた業務も、人手だけで対応し続けることには限界がきつつあります。業務をいかにデジタルに置き換えるかが課題であり、デジタル化をあらゆる職場でさらに推進してもらう必要がありました。

このために業務のデジタル化を進めるためのスキルを習得するためのDX研修に取り組むことにしました。

現場の努力と工夫の源泉となってきた「カイゼン文化」について、デジタル時代においてどのように変わる必要があるとお考えでしたか。

石原様:当社における「カイゼン」文化は、全社員が企業力の強化に向けて工夫を凝らし、粘り強く改善を積み重ねるもので、まさしく日本のものづくりの強さを支えてきた基盤です。

このカイゼン文化を継続する一方で、「人の頑張り」に加えて「デジタル技術」をうまく使っていくこと、そして業務プロセス自体をデジタル前提で抜本的に変革することが必要となっています。

そこで「業務変革withデジタル」を掲げ、従来の人頼りであったカイゼンを、デジタル技術を活用した『カイゼン』にアップデートしていく必要があると考えました。

株式会社デンソー ITデジタル本部 石原 和嘉様

その変革を、ITデジタル本部のようなDX専門部署が担うのではなく、あえて「現場主体」で進める理由を教えてください。

石原様:DX部門が主体となる大きな変革も必要ですが、日々の業務におけるカイゼンの種を熟知しているのは現場です。眼の前の課題に対して適切にAs-IsとTo-Beを描き、実際にローコードツールなどを用いて市民開発レベルで「業務変革withデジタル」を積み重ねていくことも重視していました。

また、弊社が掲げている「デンソースピリット」の一つにチームワークを重視する「総智・総力」というものがあります。DXによる業務変革についても特定の担当部署のみで進めるのではなく、社員全員で一丸となって推進することを目指しました。

DXの必要性は認識しつつも、当社には慎重に考えて行動に移す企業文化があり、急進的な変革はなかなか進みづらい側面がありました。 だからこそ、「やらされている」のではなく、社員が主体的にデジタル技術を活用し、現場から変革を生み出すカルチャーを醸成したい、と考えています。

チーム制×アセスメントによる成長実感で、学びのモチベーションを向上

実際にどのような研修を実施されたのか、全体像をお聞かせください。

デンソー 白井様(以下、白井様):研修は大きく2段階で設計しました。まず全社的なDXリテラシー向上を目的とした「アセスメントとeラーニング」、次にその知識を実践につなげる「PBL(プロジェクト型研修)」です。

eラーニングのプログラムは、まず受講前にアセスメントで現状のスキルを把握し、1年間かけて必須5講座を含む全10講座ほどのeラーニングでDXの基礎知識を体系的に学びます。その後、再度アセスメントを受検して学習効果を測定する流れです。

2025年度は、このアセスメントとeラーニングに約830チーム・6,600名が参加、その後のPBL研修は1タームあたり約30名が参加できるものを、すでに複数回開催しています。毎回定員が埋まっており、多くの参加希望をいただいている状況です。

株式会社デンソー デジタル活用推進部 プロセス・人材変革室 白井 瑛様

アセスメントとeラーニングを組み合わせたプログラムを6,600名もの規模で実施するにあたり、工夫された点を教えてください。

白井様:最も重視したのは、皆さんが前向きな気持ちで学び続けられる環境づくりです。「やらされ感」ではなく、一人ひとりの学習・実践への意欲が続くようサポートしたいと考えました。

そのため、まず参加は手挙げ制とし、必ずチームを組んでいただくことで、eラーニングでよくある途中での離脱を防ぎ、「総智・総力」で一体となって取り組めるよう工夫しました。

また、応募の際には「参加理由」を記入していただき、学んだことを職場でどう活かしたいかを考えるきっかけとしています。

さらに、プログラムの前後にアセスメントを取り入れたことで、受講前にはご自身の課題を把握し、受講後にはスコアの変化を通じて「成長の実感」を得られるようにしました。私たち事務局も、客観的な指標で皆さんの学びの成果や成長を可視化できるという意図がありました。

PBLで知識を実践力に磨き上げる

PBLを実施された背景を教えてください。

デンソー 戸田様(以下、戸田様):eラーニングにもDXでの業務改革を学ぶカリキュラムは含まれているのですが、それだけですぐ業務での実践につなげるのは、現実的には難しいと考えました。

eラーニングで基礎的な知識を習得した上で、専門知識を持つ講師の指導を受けながら自身の業務課題に直結したかたちで学べるプロジェクト学習が有効ではないかと考えました。

石原様:知識を習得することと、それを実務の現場で活用することには距離があります。そのギャップを埋め、学んだことを活かして現場の課題を解決できるよう、PBL研修を設計しました。

実施日時や課題の提出スケジュール等が決まっているため、こうした場を用意すれば希望者が着実に学んだことを実践できる点も良いと考えました。

実際に、実施が確定した後に社内アンケートを行ったところ、「DXについて自発的に実践する時間を確保することが難しいため、このPBL研修を受けることにした」という回答も寄せられています。

PBL研修の設計において重視していた点を教えてください。

戸田様:eラーニング修了者のうち希望者に受講してもらうスタイルとし、設備点検のデジタル化や需要予測など、各部署が抱える現場の課題をテーマとして設定。eラーニングで学んだ技術をどのように使うのか、企画の立て方から実行までプロジェクト形式で学びます。

連綿と続いてきたカイゼン文化をデジタルでアップデートするための思考や視点を学び、これまでの「人が頑張る業務改善」から、すべてを自動化するような「業務変革withデジタル」の方法を学べることがポイントです。

株式会社デンソー デジタル活用推進部 プロセス・人材変革室 戸田 直樹様

製造業の現場に合わせたPBL研修を共同制作。柔軟な対応力が魅力

eラーニングに組み合わせるアセスメントとして、キカガクのDXアセスメントを選定していただいた理由を教えてください。

白井様:選定理由は大きく3つあります。

1つ目は、アセスメント内容の客観性と信頼性です。経済産業省が定める「DXリテラシー標準」と「DX推進スキル標準」に準拠しており、信頼できる指標であると判断しました。800社以上という豊富な導入実績もあり、他社や業界平均と比較して自社の現在地を客観的に把握し、人材育成方針の策定に活用できる点も魅力でした。

2つ目は、実用性の高さです。30分程度で受検できるため参加者の負担が少ないことに加え、参加者が自身の弱点を把握しやすい受検結果画面などが使いやすいと感じました。

3つ目は、コストパフォーマンスです。大規模に導入するにあたって費用面は重要なポイントですが、先述したような機能や信頼性を備えながら、コスト面でも優れている点を評価しました。

PBL研修についてもキカガクをお選びいただいたのには、どのような理由があったのでしょうか?

戸田様:経験豊富なデジタル技術やデータサイエンスの専門家が、技術の裏付けをもって業務変革の企画立案をサポートしてくれる点です。デジタル活用推進部では業務変革に当たって主にPower Platform(Microsoft)の活用を想定しているのですが、それも踏まえた実践的で質の高い指導とアドバイスを受けられる点も評価しました。

カリキュラムについても、当社の要望に合わせて一緒につくっていける柔軟性に魅力を感じました。

DX推進にありがちな「ツールの導入や活用自体が目的化する」状況を防ぎ、業務を上流から設計し効果的にデジタル技術を活用して業務変革につなげる内容を、キカガクとともにつくり上げていきました。

全体の8割がアセスメントスコア向上。PBL研修からのカイゼンも進む

アセスメントの実施は、eラーニング研修プログラムにおいてどのような効果を発揮しましたか?

白井様:研修スタート時、キカガクのアセスメント結果であるSS~Eの7段階のうち、デジタル知識を持ち実務に活用できる「デジタル活用人材」に相当するレベルとして参加者全員がBランクを獲得することを目指していました。

初年度、eラーニング受講前のBランク達成者は30%弱でしたが、eラーニング受講後は60%を超え、倍以上の向上を達成できました。「アセスメントにより自分の実力を客観的に視覚化できて良かった」という声もありました。カテゴリごとにデータ化されるため、弱点が把握できることも効果的な学習につながったと感じます。

石原様:受講前アセスメントで「思っていたよりもスコアを取れなかった」という声も多く、学びに向き合うモチベーションをかき立てることもできたのではないかと思います。また、参加者の8割以上が受講後アセスメントで受講前よりもランクが上がっており、成長実感も提供できたと捉えています。

我々事務局側も教育効果や他社と比較しての当社の位置づけを把握し、経営層へ定量的な報告ができました。

PBL研修は、実際にどれくらい現場の業務改善につながっていますか?

戸田様:PBL研修の成果として、「業務変革withデジタル」を実践できる人材が着実に増えていると実感しています。

単にツールを使うのではなく、既存の業務プロセスを俯瞰し、デジタル活用を前提に根本から見直すという視点が醸成されました。それにより、現場の課題解決や業務の質・速度の向上に直結するスキルが身についてきているように感じています。

参加チームのほとんどが研修終了後もPBL研修のテーマに継続して取り組んでおり、そのうち半数以上がアプリケーションの構築といったアウトプットを創出していると把握しています。一例として、工場設備の点検業務をデジタル化し、その結果をデータで一元管理して保全活動に活用する、といったケースがあります。

石原様:習得したデジタルの知識をどのように活かせば業務変革のアイディア発案につながるか、具体的なレクチャーを受けられた点も評価しています。

受講者が上流から設計して実務に適用していく考え方を身につけた結果、DXを推進する当部への相談内容も的を射た内容となっており、スムーズかつ実効的な対応が行えるようになった手応えがあります。

また、PBL研修の最後に行われる成果発表会も、他部署の取り組みを知るとともに部署を超えた交流にもつながっており、有意義な場だと感じています。 

多くのDX人材を育成し、変化に前向きなカルチャーを確立する

DX人材育成に関する、今後の目標についてお聞かせください。

石原様:研修2年目の現在、アセスメントとeラーニングの参加者は全社員のうち約25%を占めています。最終的な目標はもちろん100%ではありますが、当面は50%を目標として、そのためにアセスメントの結果から参加率の状況などを把握し、社内各部署のトップに働きかけを行おうと考えています。また、グループ各社への拡大も進めていきたいですね。

デジタルに何ができるかを理解した上で業務変革のアイディアを出せる人材を可能な限り多く育成し、「まず挑戦して失敗も経験と捉え、カイゼンに役立てて業務の質向上を図っていく」カルチャーを確立していけたら、と考えています。

白井様:DXの本質は、変化に前向きになることだと思っています。これまで培ってきたいい部分は大切にしつつも、この研修を通じて企業風土に風穴を開け、「デンソーは変わってきた」と感じられるように導いていきたいですね。

戸田様:現場レベルの課題をその現場で解決する、そのためにDXを活用できる人材を多く育成していきたいです。デジタル化は、「進まなければ会社が立ちゆかなくなる」くらいの危機感を持って取り組むべきテーマだと受け止めています。しかし、それに向けて肩肘張るのではなく、「取り組むのが当たり前」という状態にしていくことが、我々の使命だと考えています。

パートナーとして、今後のキカガクに期待することを教えてください。

戸田様:キカガクにはこれからも多くの企業にPBL研修を提供し、その経験から製造業におけるDX推進の知見を蓄積して解決策を見出し、育成プログラムに反映されることを期待しています。製造業に限らず横のつながりをつくる機会となる、交流イベントもぜひ積極的に実施していただきたいです。

石原様:研修事例が増える中で、DXのどのような点について理解が進んでいないのか、どんなところに陥りやすい課題があるのかの傾向を把握し、それを反映したカリキュラムや教育法のブラッシュアップができると、より発展的な研修が行えるのではと考えています。過去の失敗事例や成功事例も共有いただけるとうれしいですね。

左:株式会社キカガク DXコンサルタント&セールス 横井 亮太

最後に

最後までお読みいただきありがとうございました。

キカガクでは業界業種を問わず 1000 社以上の企業に導入いただき、DX 人材育成における様々な課題解決をご支援しております。

20 社以上の育成事例もご紹介しておりますので、ご興味のある方はぜひご参考ください。

また、弊社キカガクが提供しているサービスの特徴やコース詳細についての資料は下記になります。コースごと学習内容の詳細やスケジュール等今回ご紹介してきれていないコースやサービスもご用意あります。DX 研修を検討されている方のご参考になれば幸いです。

ご担当者

ITデジタル本部 石原 和嘉様 デジタル活用推進部 プロセス・人材変革室 白井 瑛様 戸田 直樹様

DXスキル種別

ビジネスアーキテクト

データサイエンティスト

サイバーセキュリティ

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デザイナー

課題

全社のリテラシーを向上させるとともに、学んだ知識を実務に生かせる人材を育成したい

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