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JR東日本グループのDXを担う牽引役として――同社が若手34名×自社データ分析研修で示した変化への一歩

東日本旅客鉄道株式会社

  • 陸運業
  • 若手
  • 実践
  • データサイエンティスト

人口減少にともなう労働力不足が進む中、社会インフラを担う鉄道業界では、業務の自動化・省力化を支えるデジタル活用の高度化が一段と求められています。多様なリアルアセットから日々生まれるデータの利活用は、東日本旅客鉄道株式会社(以下、JR東日本)にとっても長年の経営課題でした。

こうした環境変化に先手を打つべく、同社はIT・デジタル戦略系統で採用した入社1〜5年目の若手34名を、5カ年で"次世代のDX推進者"へと育成する若手社員育成プログラムとしての研修を設計。2025年度は自社ECサイト「JRE MALL」の実データを用いた、実践的なデータサイエンティスト育成研修を実施しました。

研修を統括した同社イノベーション戦略本部 デジタルストラテジー推進ユニット 坂本 俊輔 様、同ユニット 兼 Digital&Data イノベーションセンター 小林 史佳 様・篠原 悠久子 様に、本研修の設計思想と、キカガクとの取り組みを伺いました。 ※所属は研修実施当時

※記事内に記載する部署名・所属は取材時点(2026年4月)の情報

課題・背景

  • IT・デジタル戦略系統の若手社員34名を、DX推進の牽引役へ育成する必要があった。
  • デジタルスキル標準を軸に毎年テーマを設定、2025年度はデータサイエンティスト編を計画。
  • 実践的な学びを実現するため、自社の実データを研修に取り入れたかった。

解決策・実施した研修

  • 自社ECサイトの実データを使った演習で、カリキュラムをカスタマイズ
  • 月1回程度×全5回の長期スケジュールで、現場業務と両立しながら学べる設計
  • 年次・スキルを分散した班編成で、縦横のつながりも醸成

効果・成果

  • 受講後アンケートで「実データでの分析」をほぼ100%の受講者が高く評価
  • 駅勤務の社員からデータ活用相談が寄せられるなど、配属先で波及事例を創出。
  • 業務と研修内容が結びつき、人材類型を超えた連携意識も向上。

「当社グループのDX推進をリードしていく」IT・デジタル戦略系統若手社員34名を"次世代のDX推進者"として育てる、階層型研修の全体像

DX人材育成の背景となる、御社の現状や課題感についてお聞かせください。

JR東日本 坂本様(以下、坂本様):当社は鉄道会社として、駅や車両、線路といった多種多様な「リアルアセット」を抱えています。日々の安全な運行やメンテナンスを維持するためには多くの「人の手」が欠かせません。深刻化する人口減少と労働力不足は、当社にとっても避けて通れない大きな課題です。その解決のカギを握るのは、リアルアセットから産み出される膨大なデータとデジタル技術の活用だと考えています。

また、「現場で生まれる膨大なデータをまだ十分に使い倒せていない」というもどかしさを、私たちは長年抱えていました。宝の持ち腐れにせず、データを武器に変えられる人材を社内に増やしていくことの重要性も高まっています。

東日本旅客鉄道株式会社 イノベーション戦略本部 デジタルストラテジー推進ユニット 坂本 俊輔 様

DX人材の育成について、どのような難しさや配慮すべき点があったのでしょうか?

坂本様:当社はコース別採用を実施しており、DX推進の主軸となる人材については「IT・デジタル戦略」系統として採用しています。

入社1年目から5年目までを若手人材の育成期間と位置付けていますが、入社1年目は鉄道事業の理解のため、まずは駅や車両メンテナンスなどの第一線の業務に従事します。その後、2〜3年目にシステム系のグループ会社へ出向し主にシステム開発等の業務を通じIT・デジタル領域の経験を積み、4〜5年目以降は本社組織(主にイノベーション戦略本部やマーケティング本部、鉄道事業本部)に配属となり、幅広い事業領域におけるDXの推進をリードしていきます。

研修は、このように職場が分散して活躍するIT・デジタル戦略系統の若手社員34名が一同に会する場となります。現在どのような業務に就いているかに関わらず、当社で活躍していく上で、データ理解や活用の基本的な知識とスキルを養える場として設計する必要がありました。

そういった背景を踏まえ、どのようなコンセプトのもとに研修を設計しているのでしょうか。

坂本様:経済産業省が提唱する「デジタルスキル標準(DSS)」の「DX推進スキル標準」では、5つの人材類型(※)が定義されています。当社ではIT・デジタル戦略系統の社員には、当社グループのDX推進を牽引するエキスパート人材としての活躍が期待されており、デジタルスキル標準をベースに活躍やキャリア形成のための教育・育成を行っております。若手社員に対しては「DX推進スキル標準」の人材類型の1つを年間テーマとして研修を行い、育成期間の5年をかけてDX推進スキルを体系的に習得する長期プログラムを設計しています。それぞれの人材類型としての役割を担うIT・デジタル戦略系統の社員が相互に協力することでDX推進を牽引できると考えています。

2025年度のテーマはデータサイエンティストでしたが、受講者全員にデータサイエンティストを目指してもらうわけではありません。育成期間の中でどの人材類型に自分の軸足を置くかを見定めるとともに、他の人材類型についても基本的な知識とスキルを習得して理解を深め、将来的に役割を超えて連携できるベースを構築することも狙いとしています。

※編集部注
取材後に「デジタルスキル標準ver.2.0」が発表され、新たな人材類型としてデータマネジメントが設定、人材類型は6つとなっています。本記事は、取材時点の情報に基づいて記述いたします。

技術的な学びだけでなく、マインドセットや組織のつながりも重視されているのですね。

坂本様:その通りです。先述のように、研修対象の社員は様々な部署に分散しています。「IT・デジタル戦略系統の一員である」というアイデンティティを再認識する場としても研修を位置付け、エンゲージメント施策としての面も持たせたいと考えました。

また、グループワークなどで受講者同士がコミュニケーションする機会をなるべく多く設け、現在は異なる配属先にいる若手社員同士の「縦横のつながり」をつくる場として機能させることも意図しました。

実データ演習の実績と、誰も取り残さない丁寧な講座運営

研修設計・運営のパートナーにキカガクを選定された決め手をお聞かせください。

坂本様:大きく2点が挙げられます。

1点目は、実務に活かせる技術の基本や本質を、体系的に学べる研修を用意していること。2点目は、当社が所有する実データを使って演習を設計してくれることでした。

2点目を非常に重視しており、パートナー企業の選定にあたってはこれが可能であることを必須ポイントとしました。

前年度の研修後に受講者からアンケートを取った際、「当社の実際のデータで分析などを行う機会がほしい」という声が一定数ありました。こうしたニーズに応えることで、受講者のモチベーションや満足度も高まると考えたのです。

キカガクは導入先企業の実データを使った演習の実績が豊富で、企業ごとのカスタマイズについて洗練したノウハウを有している点を評価しました。 

JR東日本 篠原様(以下、篠原様):もう一つの決め手は、「誰も取り残さない」という教育姿勢でした。坂本が申し上げましたように、対象社員は年次も異なっていますし、様々な部署に分散しており、日常業務の中でデータに触れる機会や知識・スキルのレベル感にはかなりバラつきがあります。

演習やグループワークを効果的に取り入れたキカガクの研修は、参加者全員が能動的に取り組みやすく、それぞれの学びを持ち帰りやすいカリキュラムだと感じました。

東日本旅客鉄道株式会社 イノベーション戦略本部 デジタルストラテジー推進ユニット 兼 Digital&Data イノベーションセンター 篠原 悠久子 様

JR東日本 小林様(以下、小林様):世の中の最新技術やトレンドを、スピーディーに教材へ取り入れている点も魅力的でした。私たち事務局側も「常に新しい知識を吸収して、自身のスキルも研修もアップデートしていきたい」と考えていましたので、キカガクのスタンスは非常に心強く感じました。

研修設計の工夫と、キカガクの伴走で乗り越えた「自社データを使う」という壁

具体的な研修内容をお聞かせください。効果を高めるため、どのような工夫を盛り込まれましたか?

坂本様:学びの解像度を最大限に高めるため、「内製カリキュラム」と「キカガクのカリキュラム」を組み合わせた2階建ての構成にしました。

私たちが担当する内製部分では、「JR東日本のデータサイエンティストとしての心構え」や「ビジネス観点での問いをどう立てるか」というマインドを伝授します。そして、その問いを解決するための「技術的な武器(Pythonによるデータ分析等)」を、キカガクのパートで身につけるという役割分担です。

グループ編成にも工夫を凝らしました。年次やITスキルのレベルが偏らないよう意図的に分散させた9つのグループを編成し、グループワークを主軸に置きました。それぞれが自身の得意領域を持ち寄り、ディスカッションなどを通じて学び合う設計としています。

また、スケジュールは「月1回・全5回」の緩やかなペースに設定しました。短いスパンで集中的に行う方が効果的だという見方もありますが、特に第一線の職場業務に従事している社員の場合は勤務調整の兼ね合いもあるため、月1回の実施が現実的だと考えました。

キカガクの対応について、どのような所感をお持ちですか?

坂本様:初回の打ち合わせから「運用フローが整っており、安心して任せられる」という印象でした。ヒアリングや、要望への対応もとても丁寧でした。

実データの活用にあたっても、外部に公開できる情報が限られる中でも、研修を担当する講師の方が丁寧にデータを分析し、効果的な研修を実現するための調整なども実施いただけました。

私は当社の窓口役を担いましたが、キカガクの担当者とちょっとしたことも気軽に相談できるような、確かな信頼関係を構築できた点も心強かったです。

研修中、各回終了後にアンケートを実施し、翌週にはフィードバックの会議が行われて改善点をディスカッションする、高速でPDCAを回せる体制になっている点も助かりました。

小林様:グループによっては議論が盛り上がりゴール到達に時間がかかることもありました。そんな時も、講師の皆様が状況をさり気なく見て取って的確なアドバイスするといったフォローや、ペース配分の調整をフレキシブルに行ってもらえたことも良かったと感じています。

篠原様:講師の説明が的確で、とてもわかりやすかったです。身構えて研修に向き合う受講者もいる中、程良くリラックスさせながら締めるところは締めるといった様子には、「研修のプロフェッショナル」ならではの運営力を感じました。

今回の研修には、「社内の実データを使う」という大きな挑戦がありましたね。

坂本様:おっしゃる通り、「安心・安全」を第一とする当社にとって、社外のパートナー企業に本物のデータを預け、研修で扱うことは非常に高いハードルでした。

データのサイズ感やカリキュラムとの適合性をキカガクと何度もすり合わせ、多種多様なデータの中から今回はECサイト「JRE MALL」のデータを題材に選びました。

このデータを選んだのは、データサイエンティスト演習の分析に適していると判断しました。その他、研修としてキカガクによる技術的なインプットの活用しやすさにつながると考えました。

このデータは、マーケティング本部が管理しています。取得に際しては、個人情報保護などセキュリティ面にも万全を期しました。私や小林は以前この部署に所属していた経験があり、当時の上司や同僚の協力を仰ぎながら地道に調整を進めていき、無事に研修での活用を実現できました。

受講後に生まれた変化──実データに触れた経験が若手社員の意欲を高める

研修の成果をどのように感じていらっしゃいますか?

坂本様:研修後の受講者アンケートで、「自社の実データを教材に分析を学べた」ことに対してほぼ100%という高い評価を獲得しました。「分析するのが楽しみだった」という声もあり、キカガクの伴走なしでは得られない成果だったと思います。

講師の説明についても「わかりやすい」と評価が高かったです。これまでデータと接点がなかったり苦手意識があった社員から、「データを扱う際に必要な考え方を、講師の説明から学び取ることができた」というコメントも寄せられました。

受講者のレベル感にバラつきがある中で、誰もがついてこられる研修になっていたと感じます。

小林様:データサイエンティストを志望して入社したものの実務をイメージできていない社員にも、今回の研修で「実際に自分でデータを動かす」成功体験を提供できました。

今後のキャリアプランや、データサイエンティストとして分析を行うためにどのようなドメイン知識が必要なのかを考えるきっかけとなったことにも、大きな意義を感じています。

東日本旅客鉄道株式会社 イノベーション戦略本部 デジタルストラテジー推進ユニット 兼 Digital&Data イノベーションセンター 小林 史佳 様

篠原様:長期プログラムの狙いでもある「人材類型間の連携意識」についても、効果的だったと感じています。データサイエンティストとスムーズに連携するためのデータの扱い方や基礎的な知識が身につくだけでなく、グループワーク等で強みを活かし合う体験もできました。

研修で得たものを配属先でどう活かすか、自走して考える社員が出てきていることも成果だと思います。

実務でのアクションにつながっている事例はありますか?

坂本様:駅勤務の社員から「業務改善に向けてシステムを活用できないか」という具体的な相談がありました。「その際のデータの受け渡しはどのようにすればいいか」と踏み込んだ話にもなり、社内ネットワークのコーディネートの場としても機能したと感じています。

研修で習得したデータ視点と自身の業務を結びつけたり、技術力の向上を実感できた受講者も多く出ています。

トップ主導で「AI・DX元年」を打ち出した、4万人企業の未来予想図

DX人材の育成やDX推進について、今後の展望をお聞かせください。

坂本様:当社はDXを、鉄道を中心とするモビリティ事業やまちづくりに代表される生活ソリューション事業の二軸経営を推進していく上で、成長の基盤としての土台と位置付けています。

経営トップ主導で2026年を「AI・DX元年」と位置付けました。IT・デジタル戦略系統の人材だけではなく、約4万人の全社員がデジタルリテラシーを当たり前のように身につけ、活用できる環境を作っていきます。本年をDXのさらなる飛躍の年とすることを目指してまいります。

小林様:現在、各支社や第一線の職場にはDX推進を担う「DXプロ」や「DX推進エバンジェリスト」と呼ばれる、変革をリードする社員たちがいます。こうした社員をハブにしながら、DXを全社的に広げていく体制の構築に取り組んでいるところです。

こうした現場主導のデータ活用を支えるため、データベースやガバナンスの整備といった土台づくりも進めたいと考えています。

加えて、社員一人ひとりの働き方の中にデータ分析が自然に組み込まれている状態を目指したいと考えています。「業務の合間に分析を行う」のではなく「業務の中に分析を取り込む」考え方への転換も、課題として捉えて取り組んでいきたいと考えています。

これほど巨大な組織において、先進的で挑戦的なDX人材育成をスピーディーに推進できている原動力は、どこにあるとお考えですか?

坂本様: 要因の一つとして、経営層の深い理解があると考えています。

2019年に、駅員や乗務員を含む全社員へのタブレット端末の配布を行いました。「安心・安全の維持は大前提。その上で現場の社員が自由な発想でどんどん新しい挑戦をしてほしい」というメッセージを常に経営層から発信し、仮に失敗してもそれを許容し、次の糧にするような風土を作ってくれました。

その後ローコードをはじめとする市民開発が各職場で行われ、全社的にデジタル技術を使った業務改善をしていく気運醸成にもつながった大きな出来事だったと考えています。

こういった経営層の強力なコミットメントと、現場への信頼が、私たちの挑戦を後押しする原動力になっています。

小林様:経営層との関わりで言えば、週に1度、DX推進の取り組みについて情報交換や議論、提言を行うコミュニケーションの場を設けています。こうした施策も、スムーズな推進につながっているかもしれません。

今後、キカガクに期待されることをお聞かせください。

坂本様:今年の研修ではデータサイエンティストをテーマとしましたが、デジタルスキル標準を基盤とした教育プログラムは引き続き取り組んでいきます。

キカガクには、常に最新の知見を私たちのカリキュラムへ迅速に反映していただき、どの受講者にとっても有意義な研修運営などを通じて、今後も当社のDX人材育成をサポートしてもらいたいと期待しています。

研修事務局の皆様。左から、小林様、篠原様、小松様、坂本様、久保田様

最後に

最後までお読みいただきありがとうございました。

キカガクでは業界業種を問わず 1000 社以上の企業に導入いただき、DX 人材育成における様々な課題解決をご支援しております。

20 社以上の育成事例もご紹介しておりますので、ご興味のある方はぜひご参考ください。

また、弊社キカガクが提供しているサービスの特徴やコース詳細についての資料は下記になります。コースごと学習内容の詳細やスケジュール等今回ご紹介してきれていないコースやサービスもご用意あります。DX 研修を検討されている方のご参考になれば幸いです。

ご担当者

東日本旅客鉄道株式会社 イノベーション戦略本部 デジタルストラテジー推進ユニット 坂本 俊輔 様 イノベーション戦略本部 デジタルストラテジー推進ユニット 兼 Digital&Data イノベーションセンター 篠原 悠久子 様 小林 史佳 様

業界

陸運業

対象者(階層別)

若手

DXリテラシーレベル

実践

DXスキル種別

データサイエンティスト


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