【DX の目的とは?】DXを推進する理由を事例を交えて紹介

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【DX の目的とは?】DXを推進する理由を事例を交えて紹介

DX(デジタルトランスフォーメーション)を進めていくうえで、何のために DX を取り入れるのかという目的を定める必要があります。DX の目的は全社で達成に取り組むことはもちろん、職種によって設定することもできます。

本記事では DX の言葉の定義をした上で、課題や目的について解説し事例を紹介いたします。

DX とは?

DX とは、Digital Transformation の略です。 経済産業省は以下のように定義しています。

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、 顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること

引用:経済産業省「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン」

簡潔に要約すると DX とは、デジタル技術を用いて既存の価値観や枠組みを覆す革新的なイノベーションをもたらすものであることが分かります。

DX はなぜ必要?

そもそも DX はなぜ必要なのでしょうか。経済産業省が推奨する理由を含めて説明しており、国としても企業としても DX を進めることは必要不可欠なものです。その中でもなぜ必要と言われているのかとして以下の事があげられます。

2025 年の崖

出典:DX レポート

経済産業省では、2025 年におきるにおける既存の IT システムの課題を示唆しています。これは老朽化による問題であり、2025 年までに改訂が行われない場合には年間 12 兆円の経済損失が生まれると推定しています。2025 年段階で 21 年以上システムが稼働している企業の割合を 60 % と見積もっています。この課題に早急な対応が必要だとされています。

DX 推進の遅れ

出典:経済産業省「DX推進指標」とそのガイダンス

必要性の一つとして DX 推進の遅れがあげられます。上記のデータをみてみますと、DX 推進の成熟度がレベル 0〜5 の 6 段階で分けられています。全企業の目標としてはレベル 3 の「全社戦略に基づく部門横断的推進」としていますが、現在値が 1.45 と半分以下という実績で全体で DX 推進が遅れていることが把握できます。

まずは自身の企業の DX 推進の成熟度レベルがどのレベルにあるのか現状を把握し、把握した上で目標をどうするか、またいつまでに達成するかの納期を明確にする必要があります。

また、エンジニアや現場メンバー以外の管理職・経営層の方々の意識改革も必要です。いざ DX 推進を進めようにも、決済権を持つ上長が首を立てに振らないと頓挫してしまいます。ですので、DX 推進をスムーズに進めていくためにも管理職・経営層の方々へのアプローチも必要になってきます。

市場変化への柔軟な対応が可能

既存の IT システムがリリースされた時と比較し市場は大きく変化しています。既存の IT システムでは市場の変化に対応できない事もあり、DX を行うことで柔軟な対応が可能になります。現在の開発技術は以前と比べ進化しており、システムに掛かる負荷を大きく下げることが可能です。ですので、DX 推進の後に市場の変化が生じた場合でも、以前と比べ対応が簡易になります。

DX を推進する目的

企業が DX に取り組む主な目的を紹介します。ここで理解するべき事は、DX は単なる技術の導入ではなく、ビジネス価値を創出し、企業の持続可能性を確保する手段であるということです。

ビジネスプロセスの効率化

DX の初期段階では、業務の自動化や効率化が重視されます。これには、時間と労力を大幅に節約し、ヒューマンエラーを減らすためのプロセス自動化、またはデータ分析を通じた意思決定の迅速化などが含まれます。DX を利用して業務を効率化することで、企業はリソースを最適に活用し、より重要な戦略的な取り組みに注力することができます。

新たなビジネスチャンスの創出

デジタル技術を利用することで、企業は新しいビジネスモデルや収益源を開発する可能性を見つけることができます。データ分析、AI、ブロックチェーンなどのテクノロジーは、新たな商品やサービス、または顧客との新しいエンゲージメント方法を創出するための機会を提供します。

顧客体験の改善と顧客満足度の向上

デジタル技術は、顧客との接点を増やし、よりパーソナライズされた体験を提供する手段を企業に提供します。DX は、顧客のニーズを理解し、それに対応する製品やサービスを提供するための洞察を得る機会を増やします。これにより、顧客満足度を向上させ、長期的なロイヤルティを確保することができます。

競争力の強化と市場でのポジションの改善

最後に、DX は企業に競争優位をもたらす可能性があります。新たな技術を迅速に導入し、変化する市場ニーズに対応することで、企業は競争相手に先駆けてイノベーションを推進し、市場での立ち位置を強化することが可能になります。

DX を推進することによるメリット

では、DX の推進におけるメリットはどのようなものがありますでしょうか。本章では、代表的なメリット 3 点についてご紹介いたします。

DX 人材不足の解消

出典:総務省(2022)「国内外における最新の情報通信技術の研究開発及びデジタル活用の動向に関する調査研究」

上図は各国の DX を進める上での課題や障壁の調査を行ったものですが、日本は「人材不足」において 約 70 % も課題に感じており、続いて「デジタル技術の知識・リテラシー不足」「アナログな文化・価値観が定着している」となっています。

DX を推進していくには「採用」と「育成」に注力していくことが一般的で、かつ日本企業は育成に注力している割合が大きいです。社内で DX 推進人材を育成すれば、もともとのドメイン知識、つまり自社事業に精通した人材を多く揃えることができます。また、雇用機会の維持にもつながるので、人材の効率化を図れるメリットもあります。

業務の効率化

社内全体での DX 推進が行われることで、社内での IT リテラシーが向上し実務課題を現場レベルで発見し、効率化や自動化が期待できます。

例えば、データ活用のスキルが身に付けば、これまで検討や調査にかかっていた時間が短縮され他の業務に使える時間が増えますし少ない時間で質の高い仕事ができると、残業や休日出勤が減り従業員のワークライフバランスの実現も期待できたりもします。

決定の迅速化と最適化

デジタル技術の導入により、ビッグデータの解析やリアルタイムの情報共有が可能となります。これにより、企業の意思決定は迅速化し、より正確な情報に基づく決定が可能となります。

既存システムを使い続けるリスクの回避

既存システムの継続使用には、サイバー攻撃等の脅威にさらされるリスクや既存システムの運用保守にコストがかかりすぎるため、IT 人材の育成や採用などに投資できないリスクなどが挙げられますが、DX 化により基盤システムや業務システムの改訂が行われると、万が一の場合の緊急対応などに備えた環境を構築することも可能になり、業務復旧までの時間を短くすることも実現可能になります。

既存システムへのコストを削減することで、将来に備えた先端 IT 人材の育成や採用に投資する選択肢も持てるようになり、既存システムを活用するだけでなく、現場の状況にあわせた革新的なシステムの開発に着手することができます。

新しいシステムを導入して企業に定着させるには費用や時間がかかりますが、うまくいけば事業に革新が起きて生産性が高く競争力のある事業運営が可能になるでしょう。

DX 推進事例 6 選

最後の章では、DX 推進の事例を「大企業の DX 人材育成の事例」・「中小企業の DX 人材育成の事例」をそれぞれご紹介いたします。

大企業:中外製薬株式会社(医療)

課題または注力

・DX 推進に向けての全社ごと化

取り組み

・デジタル戦略推進部の設立
・各部門とのコミュニケーションの窓口、デジタル戦略推進、

 浸透のエバンジェリストとして、各ビジネス部門に「DX リーダー」の配置

・AI やロボティクスなどを活用した「創薬プロセスの革新」「創薬の成功確率向上」

 「プロセス全体の効率化」

成果

・全社から 450 件を超える効率化・新規事業のアイデアの創造
・50 件以上の実証フェーズへの移行
・デジタル人財の強化による DXや風土改革の成功

参照:「DX銘柄2023」選定企業レポート

大企業:株式会社小松製作所(機械)

課題または注力

あらゆる分野での DX 推進
・イノベーションによる成長の加速
・稼ぐ力の最大化
・レジリエントな企業体質構築

取り組み

・「AI人材育成プログラム」 によるデジタル人材の育成
・「DX・AI人材 の育成に関する教育受講者数」

 「スマート コンストラクション・コンサルタント育成数」等

 といった目標達成に向けた具体的な KPI の設定
・スマートコンストラクションによる施工の最適化

成果

「スマートコンストラクション」導入による、工事全体の安全性、生産性、

 環境適応性を飛躍的に高めることに成功

参照:「DX銘柄2023」選定企業レポート

大企業:トラスコ中山株式会社(卸売業)

課題または注力

・11 の「ありたい姿」達成に向けた DX の推進

取り組み

・部門横断型のジョブローテーション人事によるビジネスノウハウの共有
・IT スキルに特化したスペシャリストの育成
・デジタル推進部を新設

成果

・デジタル活用により最適な在庫管理を追求し続けた結果、

 在庫出荷率が 2022 年 12 月末現在で 91.7 %の実績

参照:「DX銘柄2023」選定企業レポート

中小企業:株式会社フジワラテクノアート(醸造機械・食品機械・バイオ関連機器製造業)

課題

・社員が 2050 年に向けたビジョンと手段である DX の必要性を理解し、

 自分事とするまでに時間を要した。

・創業 90 年と歴史がありベテラン社員も多く、IT リテラシーは高くはなかった。

取り組み

・部門横断の委員会にて自社主導で DX に

 挑戦し、システム構築・運用をやり切ることで

 手ごたえを感じ、必要なスキルを自 発的に学んだり資格試験に挑戦することで従業員の

 デジタルスキルが向上した。さらに、それに啓発された他社員もスキル向上を目指して

 挑戦し、デジタル人材増加の好循環が生まれた。

・基幹システムの刷新等により、全工程が進化し、情報セキュリティ強化、

 人材・スキル向上等を実現した。

成果

• 業務プロセスと進捗の可視化による効率的な製造、工数・事務作業・ミスの削減、

 メンテナンス用部品の納期短縮、紙の使用量削減、デジタル人材の育成等

 いくつもの成果をあげている。

参照:経済産業省 DX Selection2023

中小企業:株式会社土屋合成(プラスチック製品製造業)

課題

・DX 推進に向けて従業員の協力を得るために時間と労力を要したことである。

 DX 推進以前の初歩の IT 化やデジタル活用の段階から、 当該取組を進めることに対して

 従業員の間では抵抗があった。

・従業員にとって既存の業務プロセスの変化は、新たな仕事が増えるのか?

 という嫌悪感や自分の仕事がなくなるのか?という恐怖感を抱かせてしまい、

 それを払拭するための理解と納得の獲得に苦戦した。

取り組み

・データを必要な時に、部門を超えて、全社最適で活用できるようにした。

  ビジョンの実現に向けた変革に対して、IT システム及び IT システム部門・担当者が

 迅速かつ的確に対応できるようになっている。

成果

・売上高がコロナ以前と比較して約 120 %となり、過去最高益となった。

 デジタル技術を活用し、少ない人員でも 365 日 24 時間、効率的なものづくりができる

 企業に生まれ変わった。その効率化で生まれた余剰リソースを活かし、新製品の

 試作・量産化に取り組むことで、付加価値の高い製品の生産へとシフトした。

参照:経済産業省 DX Selection2023

課題

・現社長がまだ支店長の立場だったときに基幹システムの開発に着手したが、

 リーマンショック後という事もあり、資金的な余裕もなく銀行からも

 融資は厳しいと伝えられていた。リース会社に話を持ち掛け、リース契約にして

 もらうことで費用を捻出した。

・システム会社への月額 12 万円の保守料と開発費のリース料月額 12 万円、

 合計 24 万円の支出が必要であったが、一人分の人件費だと思い投資を決断した。

 開発から 3 年後にシステム会社が倒産するという危機も経験した。

取り組み

・社内業務の効率化・省力化や顧客視点でのサービス改善において、

 自ら問題を見つけ改善案の指示を出せる人材を「DX プロデューサー」と定義し、

 社内で育成している。また、各従業員にあった「学び」を計画的に行っていく

 プロジェクトを立ち上げる。

・自社開発のオリジナル基幹システムと Web サイトや各種 Web サービスを

 連携させた社内 IT システムで情報共有している。

成果

・年に 2 ~ 3 個の新規事業が立ち上がり、それらを育てながらデジタル技術によって

 既存業務の効率化・省力化を行う企業風土となった。また、子育てしながらも

 働きやすい会社となり女性従業員が全体の 75 %になった。

・コロナ禍でも年間 7,000 社の顧客を獲得。既存事業の落ち込みを新事業でカバーし、

 過去最高売上を 3 年連続更新した。

参照:経済産業省 DX Selection2023

まとめ

いかがでしたでしょうか。 DX の言葉の定義をした上で、課題や目的についてを事例もあわせてご紹介いたしました。自社や個人の ぜひ DX 推進の目的を明確にした上で、どのように進めていくべきかの参考としていただけますと幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました。

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