【データエンジニア/BIツール活用者育成】データ基盤構築とBI活用で研究員のデータ分析力を底上げする第一三共の人材育成

DX Blog

【データエンジニア/BIツール活用者育成】データ基盤構築とBI活用で研究員のデータ分析力を底上げする第一三共の人材育成

第一三共株式会社は、2030 DXビジョン「先進的グローバルヘルスケアカンパニーとして、データとデジタル技術を駆使してヘルスケア変革に貢献する」の実現に向けて取り組んでいます。

今回は、製剤技術研究所におけるDX推進の一環として、データエンジニアおよびBIツール活用者育成を目的に、キカガクのSQL入門+データベース設計コースおよびBIデータ分析ハンズオンコース(Tableau)を組み合わせた研修プログラムを導入しました。

本研修における取り組みや成果について、第一三共株式会社 製剤技術研究所 DX推進リーダー 柳沼様、同研究所 佐藤様にお話を伺いました。

目指す育成ゴールと課題

全社DXビジョン実現に向けた、研究現場の課題

本研修を依頼した背景をお聞かせください。

柳沼様:第一三共の第5期中期経営計画には「DX推進によるデータ駆動型経営の実現と先進デジタル技術による全社変革」が戦略を支える基盤の一つとして定められており、2030 DXビジョン「先進的グローバルヘルスケアカンパニーとして、データとデジタル技術を駆使してヘルスケア変革に貢献する」を掲げてDXの活動を全社的に推進しています。

第一三共では、デジタルやITに関する知識が深いことに加えて、各組織のビジネスに必要な経験とスキルを兼ね備えた状態をDX人材と定義しています。つまり、自分たちが取り組むビジネスや提供する価値を理解したうえで、デジタル技術を使った改善策を現場で思考し、実践できる人材を育成しています。

▼第一三共においてDX人材に求められるスキル一覧

出典:第一三共株式会社|DX人材の育成 第一三共が定義するDX人材とは

私たちが所属している製剤技術研究所では、上表のスキル一覧のうち、日常の研究業務に直結する「データ分析スキル」の強化に注力しており、レベルごとの目標人数を設定した人材育成計画に基づき、2020年頃から研究所内のDX研修を企画推進しています。

近年では、機械学習やディープラーニングなどの高度な知識やスキルを用いてデータ分析プロジェクトの中心的な役割を担うことができる、レベル3以上のデータ分析スキルを有する研究員が徐々に増えてきています。データ駆動型研究を研究所全体へさらに浸透させるために、2つの課題がありました。

1点目は、データを一元管理するデータ基盤を構築するために、データエンジニアリングに長けた人材が必要であること。2点目は、プログラミングができない研究員がBIツールを使って、効率的にデータ分析を行えるようにすることです。

課題の詳細を教えてください。

柳沼様:研究所のデータ基盤構築を推進していく上で、全社データ基盤IDAP(Integrated Data Analysis Platform)を管理運用している本社DX推進部門との円滑な連携が必要不可欠です。そのためには、データを利活用する研究所のニーズを正確に把握できる人材に加えて、データエンジニアリングの視点から議論ができる人材が必要でした。

また、実用性の高いデータベースの構築には、データを「使う側」の視点、つまりデータ構造や実際の利活用を念頭に置いた設計が大切であると考えています。今後さらに、データベースの拡充に伴い、大規模かつ高次元のデータを扱う機会が増えることが想定されるため、Pythonなどを用いた高度なデータ解析ができる専門家の役割はより一層重要になります。

一方で、少数の専門家のみで研究所内のデータ解析を網羅的に支援することは工数的に困難であるため、多数の研究員がBIツールを用いて標準レベルのデータ分析を容易に行えるように、研究員のデータ分析力の底上げを図ることがデータ駆動型研究を浸透させるために必要であると認識しています。

キカガクの選定・継続の理由

決め手は「柔軟性」と「実践的支援」。キカガクと描く育成の最適解

数ある研修会社の中から、キカガクを選ばれた理由をお聞かせください。

佐藤様:以前の研修実績から、キカガクの講義はわかりやすく、受講生のレベル感に応じて研修の時間配分や内容を柔軟に調整いただける点を高く評価していました。初学者の方にも学んでいただく機会として適切だと判断しました。

また、講師との距離感が近く、オンラインでありながら双方向性の高い講義スタイルや、講師の方々が創り出す、学びやすい雰囲気作りも魅力でした。受講者一人ひとりの進捗や理解度を都度確認し、躓いている方には講師から能動的にフォローする点や、質問に対して柔軟かつ真摯に対応する姿勢も高く評価しています。

2021年頃よりキカガクの研修をご活用いただいていますが、継続してくださっている理由は何ですか?

佐藤様:第一に、受講者からの満足度が非常に高いことです。それに加え、コースのバリエーションが豊富な点、我々の要望に応じて内容を柔軟にカスタマイズいただける点が大きな魅力です。

毎回の研修前には、受講者のスキルレベルや業務内容を考慮し、講義テーマを綿密にすり合わせていただいています。また、数日に及ぶ研修では1日が終了する度に次回に向けた振り返りやカリキュラムの調整などを実施してくださる点も柔軟性の高さを感じます。

我々のニーズに最適な研修テーマ・内容を設計いただけるため、受講者にとって適切なレベルの講義が設定でき、高い満足度につながっているのだと思います。

業務内容に紐付いた実践的な内容で、実際のデータを使った課題解決事例も交えるなど、受講者の興味を引く工夫をしていただけます。業務への落とし込みまで考慮された教育プランであることに加え、当社のデータ利用環境まで深くご理解いただいているため、運営側として安心してお任せできることも継続の理由です。

実施した研修について

データベースとBIツールの連携を意識した研修プログラム設計

今回は2つの研修を実施されたとのことですが、それぞれの対象者と内容について教えてください。

佐藤様:SQL入門+データベース設計コース」と「BIデータ分析ハンズオンコース(Tableau)」を実施しました。

SQL入門+データベース設計コースは、データベース利活用の中心的プレイヤーや意思決定層を対象に10名程度の規模で実施しました。前半でリレーショナルデータベースの基礎とそれを操作するSQL言語の基礎について座学とハンズオン形式実施し、後半でリレーショナルデータベースを構築するにあたっての理論やER図の作成方法などを講義していただきました。

「BIデータ分析ハンズオンコース(Tableau)」は、日頃は研究業務を担っていて、普段からデータを扱う人に広く参加してもらいました。機械学習経験者も一部いますが、メインは未経験者であり、挙手制で25名程度に参加していただきました。データ分析の基礎から、Tableauの使い方をハンズオン形式で講義していただいたあと、演習形式のグループワークを実施し、実際の業務で活用できる状態にしていただきました。

「SQL入門+データベース設計コース」受講者は基本的にBIコースも受講しており、本研修を通じてデータベースの構築からBIツールによる可視化・分析まで、一気通貫でデータ活用の流れをイメージできるよう設計しました。

研修の効果

満足度100%を実現。参加者の声から見る研修の成果

「SQL入門+データベース設計コース」はいかがでしたか?

佐藤様:データベース設計の概念から物理設計まで段階的に、かつ理論と実践を交えながらハンズオン形式で学べた点が好評でした。特に、エラー対応を経験できたことが学びにつながったという声もありました。

【受講生アンケートより】

「BIデータ分析ハンズオンコース(Tableau)」のよかった点を教えてください。

佐藤様:参加者の多くがTableau初心者だったため、ゼロから丁寧に導入部分を教えていただき、何のために可視化するのかという目的から理解できたのが良かったです。Tableauの有用性や視覚的な分析の魅力を実感し、継続的な学習意欲につながりました。

【受講生アンケートより】

すべてのコースで満足度が100%という高評価ですが、その理由をどう分析されますか?

柳沼様:前提として、参加者の多くが本領域に強い関心を持っており、意欲を持って自主的に教育を受講したことが要因の一つであると思います。その上で、「知識が増えた」「できることが増えた」という成長実感を得られたことが、満足度に繋がったものと想像します。最近は、Tableauを活用した研究発表などを目にする機会が増えてきており、研修後もきちんとスキルが定着しているように感じます。

佐藤様:2日間集中して学べる環境を作れた点も効果的な学習と高い満足度につながったと考えています。また、インプットだけでなく、グループワークを通じてアウトプットし、同僚と議論することで理解を深める機会があったことも好評でした。

「持ち帰って分析」が減少し、意思決定の迅速化と会議の効率化を実現

研修を通じて、どのような効果がありましたか?

佐藤様:我々が育成を目指す人物像に近づいていると思います。これまでExcelなどを使った簡単なデータ分析以外馴染みのなかった研究員が、「知っている・使える」レベルへとステップアップしました。研修後、Tableauを継続的に活用する場面が増え、知識やケイパビリティの向上が見て取れます

研修の成果は、日々の業務における議論の質とスピードにも表れています。以前は提示された断片的なデータを見てディスカッションし、「このデータ軸ではどうなるか」といった問いが生まれても「一度持ち帰って検証します」となるケースも少なくありませんでした。研修後は、その場でTableauを操作して多角的な分析が可能になりました。これにより、即座に答えを導き出し、関係者全員で共通認識を形成できることで、意思決定の迅速化と会議の効率化に大きく貢献しています。

柳沼様:本社DX推進部門との連携においては、全社戦略とベクトルを揃えながら、自部門の課題解決に効果的なDX戦略を立案/実行していくことが重要になります。今回の研修を通じて、データエンジニアリングに関する基礎知識を学んだことで、研究所のニーズを以前よりも正確に言語化することができるようになり、本社DX推進部門との議論がより深まったと感じています。

データ取得から統合、可視化(Tableau)、および機械学習による解析(Python)について、一連のデータフローに沿って網羅的に理解を深めることで、各要素技術の活用だけでなく、それらを連携させた全体構想を描きやすくなりました。データ解析環境やBIツールとの親和性に優れたクラウドプラットフォームの選定など、データ基盤の導入効果を高めるための重要な視座を得ることができました。

データエンジニアリング領域は生成AI活用の観点からも有益だと感じています。今後の期待などありますか?

柳沼様:製剤技術研究所においても、生成AIの活用を推進しています。日々生まれるデータを一元管理することの重要性は、機械学習と同様に、生成AIを効果的に活用するための根幹と考えており、技術伝承の観点からも生成AIには期待を寄せています。今後は、構造化データだけでなく、ベテラン研究員の暗黙知も含めた非構造化データまで対象を拡大していきたいと考えています。

今後の展望

データ駆動型研究の先に見据える、高品質な医薬品開発の未来

今後の展望についてお聞かせください。

柳沼様:製剤技術研究所のDX推進リーダーとして、データ取得から統合、可視化、機械学習による解析まで一連のデータフローをシステム化し、過去に得られた知見をデータとして新たな製品開発に最大限活用するための研究基盤構築を推進していきます。さらに、データ駆動型研究の風土醸成を通じて、より効率的に合理的な意思決定が可能な組織へ変革していきます。

多くの研究員が自身の研究課題に標準レベルのデータ分析を自在に適用し、そこに高度な解析ができる少数精鋭の専門家が技術支援を提供できる研究体制の構築を目標に、二本柱の人材育成を継続していきます。属人化された経験や勘ではなく、データという客観的事実に基づき意思決定を行うことを組織文化として浸透させることで、より高品質な医薬品開発につなげていきたいと考えています。

私たちの使命は、高品質な医薬品を安定的に患者様へ提供することです。データ駆動型研究を通じて、世界中の多様な医療ニーズに、より高いレベルで応え続けていきたいと思います。

最後に

最後までお読みいただきありがとうございました。

キカガクでは業界業種問わず 1000 社以上の企業に導入いただき、DX 人材育成における様々な課題解決をご支援しております。

業界業種多種多様な業界 20 社以上の育成事例もご紹介しておりますので、ご興味のある方はぜひご参考ください。


どういった DX 人材を育成すればよくわからないDX 研修の内容をどうすればよいか決めきれない自社の課題を解決するような研修をカスタマイズしてほしい、などありましたら、下記フォームから弊社コンサルタントにお問い合わせください。御社の希望や予算等をお伺いし、適切な研修をご案内させて頂きます。


また、弊社キカガクが提供しているサービスの特徴やコース詳細についての資料は下記になります。コースごと学習内容の詳細やスケジュール等今回ご紹介しきれていないコースやサービスもご用意あります。DX 研修を検討されている方のご参考になれば幸いです。

オペレーターの女性
オペレーターの女性

資料請求

Document Request

DX 推進にお悩みの方はお気軽にご相談ください。


キカガクについて詳しく知りたい方

今注目のスキル可視化サービス

お問い合わせはこちら

導入企業の事例を紹介