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2026年3月11日

【生成AI×DX推進】生成AIが定着しない組織に共通する構造とは? 拡張UTAUTで読み解くAI活用の阻害要因

はじめに:「導入したのに使われない」の本当の理由

生成AIのツールを導入した。社内研修も実施した。それでも、数ヶ月後には「一部の人しか使っていない」状態に戻っている──。

このような状況は、特定の企業の問題ではありません。弊社のAI活用診断ツールAMIの調査データにおいても、直近1週間でまったく生成AIを使っていないビジネスパーソンは全体の過半数を占めています。

では、なぜ定着しないのでしょうか。

答えは「やる気や意識の問題」ではありません。技術が受け入れられるかどうかには、心理・行動・組織環境にわたる構造的な要因があります。この構造を科学的に読み解く枠組みが、拡張UTAUTモデルです。

この記事では、拡張UTAUTの考え方と7つの指標、そして組織の活用レベルを示す4フェーズの判定ロジックまでを詳しく解説します。


1. UTAUTとは何か──技術受容の「統一理論」

UTAUT(Unified Theory of Acceptance and Use of Technology:技術受容と利用に関する統一理論)は、2003年にVenkateshらが提唱した技術受容の統一理論です。

それまでに存在していた複数の技術受容モデルを統合し、「人が新しい技術を受け入れ、使い続けるためにはどのような条件が揃う必要があるか」を体系化したものです。

もともとのUTAUTは、業務成果への期待・努力期待・周囲の活用状況・環境整備という4つの因子で利用意図と利用行動を説明するモデルとして、企業のシステム導入や技術普及の分析に広く使われてきました。


2. なぜ生成AIには「拡張」が必要なのか

従来のUTAUTは、社内業務システムや特定のソフトウェアを対象として設計されたモデルです。生成AIにそのまま当てはめると、重要な要素が抜け落ちてしまいます。

生成AIに固有の特性として、以下の3点が挙げられます。

  • 出力の不確実性:正解が一意に定まらず、出力を人が評価・修正する必要がある
  • セキュリティ・倫理への懸念:個人情報や機密情報の扱い、回答の正確性への不安
  • 「使いこなせるか」という自己効力感の問題:ツールが「使える」かどうかより、「自分が使いこなせるか」という個人の自信の問題

これらを捉えるために、従来のUTAUTに「自己効力感(SE)」「不安(ANX)」「信頼(Trust)」という3つの指標を加えたのが拡張UTAUTモデルです。このモデルは、早稲田大学の研究として提唱された枠組みに、生成AI特有の不確実性と企業利用のガバナンス文脈を組み込んで設計されています。


3. 拡張UTAUTの7指標──何を測るのか

拡張UTAUTでは、組織における生成AI活用を規定する要因として7つの指標を設定しています。

指標名(略称)

概要

分析軸

成果期待(PE)

生成AIを使うことで業務成果が上がると感じているか

利用回数

努力期待(EE)

操作が難しくなく、使いやすいと感じているか

利用回数

環境整備(SI)

周囲がAIを活用しているという実感があるか

組織文化

促進条件(FC)

活用を後押しするインフラやガイドラインが整っているか

組織文化

自己効力感(SE)

生成AIを自分で使いこなせるという自信があるか

マインドセット

不安(ANX)

セキュリティや正確性などへの不安・抵抗感があるか

マインドセット

信頼(Trust)

AIツールや出力データを業務に使えると信頼できているか

マインドセット

これら7指標は、大きく3つの分析軸に分けられます。

① 利用回数に影響する指標:成果期待(PE)・努力期待(EE) 「使うと成果が出る」という期待と、「操作が難しくない」という使いやすさの認知が、実際の利用頻度に直結します。

② 組織文化に関わる指標:環境整備(SI)・促進条件(FC) 「周囲が使っているかどうか」と「会社にインフラやガイドラインが整っているか」は、個人の利用を後押しする組織側の条件です。

③ マインドセットに関わる指標:自己効力感(SE)・不安(ANX)・信頼(Trust) 「自分に使えるか」「使うことへの不安はないか」「このツールやデータを信頼できるか」は、利用意図の根底にある心理的な土台です。


4. 生成AI活用の4フェーズ──組織の今がわかる

7指標と3結果の関係をもとに、組織の活用レベルはLv1〜Lv4の4フェーズで判定できます。

フェーズの判定条件

各指標のスコアは0〜100点で表されます(7段階評価の平均を正規化)。スコアが60点以上であることに加え、「望ましくない回答(低ランク)」をした回答者の割合が30%以下であることを同時に満たすことが、各指標の「クリア条件」となります。

なぜ2つの条件が必要か? スコアの平均値だけを見ると、「積極的に使っている層」と「まったく使っていない層」が二極化している組織でも、平均で60点を超えることがあります。分布の条件を加えることで、「本当にその組織全体で底上げできているか」をより正確に判定できます。

各フェーズの定義

フェーズ

クリア済みの指標

状態のイメージ

Lv1

-

信頼(Trust)・自己効力感(SE)が低く、AIに対する不安や不信感が強い段階

Lv2

信頼(Trust)・自己効力感(SE)

心理的な土台ができ始め、利用意図(BI)が生まれつつある段階

Lv3

信頼(Trust)・自己効力感(SE)・成果期待(PE)

「使うと成果が出る」実感が加わり、利用が安定してきた段階

Lv4

信頼(Trust)・自己効力感(SE)・成果期待(PE)・促進条件(FC)

環境整備も整い、組織全体で利用行動(UB)が最大化されている段階

フェーズを上げるための打ち手

重要なのは、フェーズを飛ばして対策することはできないという点です。促進条件(FC)をいくら整えても、信頼(Trust)や自己効力感(SE)が低い状態では効果が出づらい。成果事例を共有しても自己効力感(SE)が閾値に届いていなければ利用意図(BI)につながらない。この順序性こそが、「研修を実施したのに定着しない」という現象の構造的な説明になっています。


5. AMIで組織のフェーズを診断する

これらの7指標をアンケートで数値化し、組織・職種・部門ごとにフェーズを可視化するのが、キカガクのAI活用診断ツールAMIです。

AMIでわかること:

  • 組織全体・部門別のUTAUTスコア(7指標の現在値)
  • フェーズ判定(Lv1〜Lv4のどこにいるか)
  • ボトルネックの特定(どの指標が低く、何が阻害要因になっているか)
  • 職種横断の比較(例:営業職 vs エンジニア職でどう違うか)

例えば弊社の調査では、営業・カスタマーサクセス職は信頼(Trust)が50点・自己効力感(SE)が47点と、ともに閾値の60点を下回っており、**Lv1(種まきフェーズ)**に該当することが明らかになっています。この場合、まず打つべき施策は「成果事例の共有(成果期待(PE)の強化)」や「環境整備(促進条件(FC)の強化)」ではなく、信頼と自己効力感を育てる教育研修です。

実際の営業部署における診断結果と施策の設計については、別記事「【生成AI×営業DX】生成AIが営業現場で使われない本当の理由」で詳しく解説していますので、あわせてご参照ください。


6. 診断から施策へ──AMIが示す「やること」の順番

拡張UTAUTのフレームが優れているのは、「何が足りないか」だけでなく「何から手をつけるべきか」の優先順位を明示できる点です。

フェーズ

優先施策の方向性

キカガクでの対応例

Lv1

信頼(Trust)・自己効力感(SE)を高める教育

生成AIハンズオン研修、セキュリティ・ガバナンス研修

Lv2

成果期待(PE)につながる業務体験を積む

業務特化型研修(例:営業提案資料作成)、管理職向け推奨研修

Lv3

促進条件(FC)を整えて仕組みとして定着させる

業務フローへの組み込み、AI活用の標準化支援(SalesPortalなど)

Lv4

さらなる高度化・ROI可視化

AXコンサルティング、継続的な再診断・改善サイクル

キカガクでは、AMIによる診断から教育・AXコンサルティング・システム開発まで一貫してご支援しています。


最後に

「なぜ使われないのか」に答えるためには、個人のモチベーションではなく、信頼(Trust)・自己効力感(SE)・成果期待(PE)・促進条件(FC)という構造的な要因に目を向ける必要があります。拡張UTAUTはその構造を可視化するための共通言語です。

AMIを活用することで、貴社・貴部署が今どのフェーズにいるのかを把握し、次のフェーズへ進むための具体的な一手を見つけることができます。

キカガクでは、生成AIの活用度診断から教育・AXコンサル・開発まで一貫して、 お客様の業務課題に応じたAIソリューションの企画・設計・実装を支援しています。 ✔ 「自社でAI活用を任されているが何から手をつければ良いかわからない」 ✔ 「まずは自社・自部署のAI活用度を診断し、推進の阻害要因を特定したい」 ✔ 「AI活用における施策企画から一緒に考えてほしい」 このようなお悩みをお持ちのでしたら、まずはお気軽にお問い合わせください。

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