九州電力株式会社 様

目次
九州電力株式会社(以下、九州電力)では、全社的なDX推進を進める中、九州全域に点在する多様な現場へ情報や変革への熱量をどう届けるかが課題となっていました。4年間の意識調査で顕在化していた「DXを何から始めればいいかわからない」という現場の葛藤。この壁を打破すべく、2025年9月に始動したのが、各職場において身近なデジタル相談窓口となる人材を配置する「DXアンバサダー制度」です。
本制度では、志望した人材をDXアンバサダーとして認定し、社内コミュニティを活用した「心理的安全性の高いコミュニティ」を構築。実務直結型の研修や対面ミーティングなどを組み合わせることで、試行半年で課題解決事例62件、年換算約9,400時間の業務効率化につながる成果をもたらしました。今回は、制度を牽引したDX推進本部 DX戦略グループ 副長 大塚 康裕 様、同グループ 川口 舞 様、そして実際にDXアンバサダーとして活動している北九州支店 営業部 筑豊営業センター 営業グループ 後藤 純平 様に、組織の空気が変わるまでの軌跡を伺いました。
※掲載内容は取材当時(2026年4月)時点の情報です。
課題
解決策・実施した研修
効果・成果
九州電力 大塚様(以下、大塚様):当社は「ずっと先まで、明るくしたい。」という理念のもと、持続可能な社会への貢献を目指しています。
2025年5月に策定した「九電グループ経営ビジョン2035」では、2035年のありたい姿を掲げ、6つの重点戦略を軸に九州とともに成長することを目指しています。その中で、『企業変革をリードするDX推進』は重要な戦略の一つとして位置付けられています。
九州電力 川口様(以下、川口様):電力自由化やカーボンニュートラルへの対応など、私たちを取り巻く環境は急速に変化しています。デジタル技術やAIを駆使して日々の生産性を高め、新しい価値を創出していくこと。それこそが、私たちが目指すDXの本質です。
大塚様:DX推進本部は、全社的なDX戦略の策定や全社のDX施策の企画・推進を担うとともに、業務改革や新規事業創出に向けた技術的な提案・支援を行う部署です。加えて、社内の機運醸成やデジタルリテラシー向上に取り組み、社員研修の充実や専門人材の育成を通じて、九電グループ全体のDX推進を牽引しています。

大塚様:毎年、従業員に対してDXに関する現状や取り組みをどのように感じているか把握し、今後の施策に反映することを目的としたアンケート調査を実施しており、そこではいつも同じ壁にぶつかっていました。それは、現場までDXの波が届いていないということです。
そこで、2024年度末に発電所や営業センターといった各地の現場へ赴きヒアリングを実施したところ、「何から始めたら良いかわからない」「自分の職場で何ができるかわからない」「誰に聞いたり相談すればいいかわからない」という声が多数寄せられました。
また、DX推進本部に対しても「現場とDX推進本部との接点が限られていて相談がしにくい」と、心理的距離を感じさせる声もありました。
川口様:現場訪問でのヒアリングの結果、DX推進本部内で「デジタルについて気軽に聞いたり相談できる人材として“DXアンバサダー”を各職場に設置する」という構想が生まれました。
その後に開催された経営層参加の会議で現場訪問の結果を報告し、DXアンバサダーの設置を提案したところ、CDOをはじめとする経営層から「すぐにでも実施するように」と、非常に強い後押しをいただきました。そこから約1か月という短期間で実施が決定し、同年9月の試行に向けて一気に走り出しました。
川口様:各職場での自律的かつ効果的なDX推進を目的に、DX意識の啓発やデジタルツールの利活用促進を担う人材です。具体的には、以下の役割を担当します。
①DXサポート:市民開発ツールや生成AIなどのデジタルツール利活用促進や定着化活動など各職場におけるDX施策の推進
②拠点長等への支援:職場のトップへDXの必要性を伝え、職場全体で推進しやすい環境を醸成
③情報発信等:職場内での活用事例に関する情報の収集・発信や実績報告

大塚様:実務直結のコンテンツ力に加え、以前の研修で感じたキカガクの「受講生を置き去りにしない熱量」と「コミュニティ運営の知見」に惹かれました。
私たちが目指したのは、DXアンバサダー個人にDXツールの活用方法を一方的に教育することではありません。なぜなら、教育だけでは現場での実践や継続的な活用につながりにくく、アンバサダーが孤立するリスクがあるためです。そこで、彼らが現場で孤立せず、お互いに支え合える「横のつながり(コミュニティ)」を創出し、自律的に活動が広がっていく仕組みの構築を目指しました。一般的な教育ベンダーは研修パッケージの提供にとどまりますが、キカガクは「コミュニティ運営そして、成果創出の伴走」までカバーしてくれる点が決め手でした。
川口様:これまでの経験から、どれだけ優れたeラーニングや集合研修を用意しても、それだけでは現場の実践につながるわけではないという学びがありました。
そこで、今回の取り組みでは、私たち事務局とパートナーであるキカガクの双方が、「どれだけ現場に寄り添い、アンバサダーと丁寧に関われるか」が勝負だと感じていました。単に効率化や仕組み化に頼るのではなく、一人ひとりのDXアンバサダーと向き合う。この覚悟を、キカガクは当初から共有してくれていました。
川口様:当社には、営業や発電など、多彩な事業部門があります。研修では、どの業務でも活用できる市民開発ツールや、生成AIなど汎用的なツールの使い方を実践的に学ぶとともに、DXアンバサダーが現場で自走して各部署のDX推進を加速できるよう、「職場に持ち帰って展開できる」レベルのスキル習得を目指しました。
例えば市民開発領域では「知っている」状態ではなく「実際にフローやアプリをつくれる」レベルまで習熟させる、といったことです。
何より、DXアンバサダーの多くは本業を抱えながら参加しています。彼らの負担を最小限に抑えるため、短時間で実務に必要なコア要素を学べるカリキュラムにカスタマイズしました。
さらに「自ら学ぶ→思考する→実行する→他者に教える」というサイクルを定着させるため、研修後もDXアンバサダー同士が定期的に勉強会を企画し、教え合う仕組みを構築しました。
川口様:コラボレーションツールを活用した社内コミュニティ上に業務別、エリア別、さらには「雑談・相談」といった用途別のチャンネルを整備し、横のつながりも強化しました。また、DX推進活動や貢献を称え合う「Thank youフォーム」という仕組みも構築し、活動が評価され続ける環境を整備するとともに、ナレッジが共有されやすいよう工夫しました。
しかし、場を用意するだけではコミュニティは動きません。一番の敵は「こんな投稿をしていいのだろうか」という心理的ハードルです。

そこで、「日本一、心理的安全性の高いコミュニティ」を目指しました。DXアンバサダーが何か一言でも書き込んでくれたら、事務局とキカガクの担当者が即座にスタンプのリアクションやコメントを返す。この徹底した即時反応により、「ここは、何を言っても温かく受け止めてもらえる場所なんだ」という安心感を醸成していきました。
DXアンバサダー制度の最大の成功要因として、川口様を中心としたこういった細やかなアクションの実践も大きいと感じています。
川口様:コミュニティへの投稿って、すごく勇気がいることだと思うんです。40名もの多様な部門、年代のメンバーがいる中で送信ボタンを押すとき、「反応してもらえるかな」「変な目で見られないかな」と誰もが葛藤します。その気持ちがわかるからこそ、絶対に温かい反応を届けてあげたかったんです。
また、DXアンバサダーからの質問への回答が滞ってしまったら、その職場のDX推進まで止まってしまうかもしれません。「彼らの挑戦を絶対に立ち止まらせないこと」が、事務局としての私の覚悟でした。
効率を考えれば、ある程度まとめて回答するほうが楽かもしれません。しかし、泥臭く、一人ひとりの熱量にその場で寄り添い続けたからこそ、徐々にDXアンバサダー同士が自発的に教え合い、感謝し合う循環が発生していったのだと感じています。
一方、私自身が得るものも多々ありました。能動的に参加してくれているDXアンバサダーの皆さんと新しいものをつくり上げていくことは大きなモチベーションになりました。相談への対応が感謝として返ってくる、職場で展開した効果についての報告がある、なかなか投稿されなかった方が投稿を始める、といった動きに立ち合うこともうれしかったです。
九州電力 後藤様(以下、後藤様):川口さんが言う通り、非常に心理的安全性の高い場になっています。コミュニティ参加者は初対面のメンバーがほとんどですが、上手くいった事例はもちろん、困りごとなどを投稿しても温かく受け止めてもらえる、非常に相談しやすい環境でした。DXアンバサダーとして孤独感を感じずにいられるのはこのコミュニティのおかげです。
また、キカガクからの最新情報の提供もありがたかったです。仕事をしながら自身では得られないような量の最新情報をタイムリーに受け取ることができ、業務に活かすスピードの向上にも繋がりました。

後藤様:キカガクの担当者や事務局が九州全域の各拠点に実際に足を運んでくださり、対面での「地域ミーティング」を開催してくれました。
これまでの研修は「やりっぱなし」が当たり前でしたが、こんな風に泥臭く伴走していただけたことに驚きました。社内コミュニティには少し書きづらいような本音を、対面の場でざっくばらんに話して、解決策を探れる場があるのはとても心強かったです。翌日以降のモチベーションにもつながりました。

川口様:リアルで直接顔を合わせることで、オンラインでは見えなかった小さな「つまずき」をその場で解消できました。この地域ミーティングの直後から、社内コミュニティでの発言や相談のスピードが一気に加速したんです。オンラインとオフラインが相乗効果を発揮しました。
川口様:全体的な評価としては、現場主導のDX推進の仕組みを構築できたと捉えています。試行の成果は私たちの想定以上で、経営層からも全社に広げていくようプッシュを受けました。
半年間で、DXアンバサダー主導による勉強会は108回を数え、各職場での課題解決事例は62件に上りました。業務効率化の成果は、この半年間だけで「4,717時間」。これを年換算すると、実に約9,434時間もの時間が創出された計算になります。
職場メンバーがDXアンバサダーへ感謝の声を投稿する「Thank youフォーム」への投稿は467件に達し、現場からの“ありがとう”が積み重なる中で、DXアンバサダー制度に対する全体の満足度評価は「4.88 / 5.0」という、極めて高いスコアを記録しました。

各職場にDXアンバサダーを配置したことで日常業務の中での発信や実践が可能になったこと、“やらされる活動”ではなく“現場の困りごと起点の活動”であるため小さな成功事例も着実に積み上がっていったことが、これらの成果が出た背景にあると考えています。
後藤様:最大の変化は、私自身のマインドセットです。以前は研修を受けて「あぁ、勉強になったな」で終わる受け身の姿勢でしたが、「自ら試し、学び、現場へ展開して届ける」という自走姿勢に変わりました。自分で実践して周囲に教えることで、ツールの理解が深まり、自身の提案力やアウトプット力も高まったと感じています。
職場で感じる変化としては、以前はデジタルに苦手意識のあったメンバーが「後藤さん、生成AIってどう使うの?」と気軽に聞いてくれるようになり、今では議事録作成を生成AIでテンプレート化して、チーム全体で活用するなど、実際の業務効率化に繋がっています。職場の中に「とりあえず使ってみよう」という前向きな空気が広がっているのが嬉しいですね。
川口様:他の職場からも嬉しい報告が続々と届いています。「全くDXに関心がなかった拠点長が、DXアンバサダーと熱心にDXの対話を重ねるようになった」「抵抗感を持っていたメンバーが、DXアンバサダーの丁寧な教え方によって、自ら進んで業務アプリを開発した」など、まさに現場発の変革が起きています。
全社員への浸透はこれからですが、DXアンバサダーを起点に現場の行動変容が確実に生まれています。また、本制度で培われた「相互称賛と助け合い」の文化は、他プロジェクトへも好影響を与え始めています。

大塚様:これまで試行段階として各拠点の自律的なDXを推進してきましたが、今後は本格運用に移行し、その取り組みを全社規模で加速させます。あわせて、各拠点で生まれた成功事例をコミュニティ等で全社へ水平展開することで、「一拠点の成功を全社の価値向上へ」つなげていきたいです。
川口様:DXを一部の部署の「特別な活動」にするのではなく、すべての現場において「当たり前の日常」として息づく状態を作る。それこそが、私たちの描く未来です。
後藤様:私は、所属組織の「第2、第3のDXアンバサダー」を育てていきたいと考えています。今回、私がキカガクの皆さんから心のこもった「伴走型支援」を肌で学んだように、今度は私が現場のメンバーに優しく寄り添い、小さな成功体験を一緒に作って、仲間を増やしていきたいです。
大塚様:キカガクには、単なる「研修ベンダー」ではなく、同じビジョンを追いかける「共創パートナー」として、これからも伴走し続けてほしいと思っています。
昨年度の試行では、研修・コミュニティ・地域ミーティングを連動させ、現場で「学ぶ・試す・共有する」サイクルを確立できたことに大きな価値を感じました。特にキカガクと密に連携し、現場の実態に即した仕組みを構築できたことが印象深いです。
今後は得られたノウハウを「成功の型」として体系化し、全社展開を推進します。引き続きキカガクの知見を共有いただきながら、本制度を共に磨き上げていきたいと考えています。
川口様:今後は、市民開発にとどまらず、生成AIやエージェントAIの現場実装など、テクノロジーの進化に合わせたさらなるアップデートが求められます。現場のDXをもう一段上のフェーズへと進めるために、新しい技術をわかりやすく翻訳し、私たちのコミュニティへ浸透させていくための伴走を、引き続き強く期待しています。
後藤様:現場の業務に寄り添ったテーマ設計から、最後の定着までを一気通貫で支えてくれるキカガクの伴走は、現場にとって強力な支えです。
本格運用が始まれば、ときには活動が停滞してしまう時期もあるかもしれません。そんな時こそ、変わらぬ温かさで寄り添い、挑戦しようとするメンバーの背中を優しく押してほしい。キカガクのその泥臭い「人への伴走」が、九州電力のDXを躍進させる助けになると思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。
キカガクでは業界業種を問わず 1000 社以上の企業に導入いただき、DX 人材育成における様々な課題解決をご支援しております。
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また、弊社キカガクが提供しているサービスの特徴やコース詳細についての資料は下記になります。コースごと学習内容の詳細やスケジュール等や今回ご紹介してきれていないコースやサービスもご用意あります。DX 研修を検討されている方のご参考になれば幸いです。
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