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【AI 技術導入ガイド】Azure OpenAI Serviceとは?ビジネスを加速させる活用事例と導入メリットを解説
企業のデジタルトランスフォーメーション( DX )が加速する中、 Azure OpenAI Service への注目が高まっています。しかし、「よく聞く ChatGPT と何が違うの?」「自社のビジネスにどう活かせるのだろう?」といった疑問をお持ちの担当者様も多いのではないでしょうか。
本記事では、そんな疑問にお答えすべく、 Azure OpenAI Service の基礎知識から、具体的なビジネス活用事例、導入によって得られるメリットまで、AIに関する専門知識をお持ちでないご担当者様にも分かりやすく解説します。自社での AI 活用を検討する第一歩として、ぜひご一読ください。
Azure OpenAI Service とは
まずは、 Azure OpenAI Service がどのようなサービスなのか、その定義や注目される背景、そして多くの人が利用している ChatGPT との違いについて見ていきましょう。
Azure OpenAI Service の定義
Azure OpenAI Service とは、 Microsoft のクラウドプラットフォーム「 Microsoft Azure 」上で、 OpenAI 社が開発した高性能な AI モデルを利用できる法人向けのサービスです。
これには、人間のように自然な文章を生成する「 GPT-4 」や、指示内容から画像を生成する「 DALL-E 3 」、音声をテキストに変換する「 Whisper 」などが含まれます。
単なる AI ツールというよりは、企業の個別のニーズに合わせて AI をカスタマイズし、自社のアプリケーションやサービスに組み込むための「プラットフォーム」と捉えると良いでしょう。
なぜ今、Azure OpenAI Service が必要とされるのか
近年、多くの企業で業務効率化や新たな顧客体験の創出、データに基づいた迅速な意思決定が経営課題となっています。こうした課題を解決する強力な手段として、生成 AI に期待が寄せられています。
中でも Azure OpenAI Service が注目されるのは、「自社の機密情報や顧客データを安全な環境で AI に活用したい」という企業のニーズに応えられるためです。一般的な AI サービスでは情報漏洩のリスクが懸念されますが、 Azure OpenAI Service は Microsoft Azure の堅牢なセキュリティ基盤の上で成り立っており、安心して利用できる点が大きな理由です。
ChatGPT との違い
ChatGPT も OpenAI 社が開発した AI ですが、 Azure OpenAI Service とはいくつかの重要な違いがあります。
項目 | Azure OpenAI Service | ChatGPT (コンシューマー版) |
---|---|---|
セキュリティ | 極めて高い。 | 限定的。 |
カスタマイズ性 | 高い。 | 限定的。 |
他サービス連携 | 優れている。 | 限定的。 |
料金体系 | 従量課金制。 | 月額定額制。 |
SLA(品質保証) | あり。 | なし。 |
最も大きな違いは、セキュリティとカスタマイズ性です。 Azure OpenAI Service は、企業が自社のデータを安全に、かつ最大限に活用して、ビジネスに特化した AI ソリューションを構築するためのサービスと言えます。
Azure OpenAI Service の仕組み
多くのご担当者様が「自社のデータを安全に、かつ高度に活用したい」と考える一方、「具体的にどのような仕組みでそれが実現されているのか?」という疑問をお持ちではないでしょうか。Azure OpenAI Serviceが、なぜ企業の要求に応えられるのか。その背景にある3つの重要な「仕組み」を解説します。
1. 最新AIモデルを、高信頼なクラウド基盤で提供する仕組み
OpenAI社が開発するGPT-4などの最先端AIモデルは、そのままの形で提供されているわけではありません。世界中の大企業が利用するMicrosoft Azureという高信頼なクラウド基盤上で、安定して稼働するように最適化されています。企業は複雑なサーバー管理や運用を気にすることなく、APIという窓口を通じて、いつでも高性能なAIを呼び出すことができるのです。
2. 社外に出さない、閉じたネットワークでデータを守る仕組み
Azure OpenAI Serviceは、企業のプライベートなネットワーク内に「設置」することができます。これにより、AIとのやり取りがすべて社内ネットワークで完結し、インターネット上に機密情報が流出するリスクを根本から遮断します。これは、重要な書類を社外に持ち出さず、必ず金庫室の中でだけ閲覧するようなものです。この堅牢なセキュリティの仕組みが、多くの企業に選ばれる理由です。
3. 他社の影響を受けない、データとモデルの「完全分離」の仕組み
企業がAIをカスタマイズするために使用したデータ(社内文書や顧客とのやり取りなど)は、その企業専用の領域に完全に分離されて保管されます。Microsoftがそのデータを、他の企業のためや、ベースとなるAIモデルの改良のために使うことは契約上ありません。各企業が、自分たちだけの閉じた環境で、安全にAIを「自社専用」に育てていくことを可能にする、このデータ分離の仕組みが、本サービスの核となっています。
これらの仕組みにより、企業は「高性能」「高セキュリティ」「高い拡張性」を同時に享受し、安心して自社ビジネスにAIを組み込むことができるのです。
Azure OpenAI Service の活用事例3選
理論だけでなく、実際にどのような活用が進んでいるのか、具体的な事例を見ていきましょう。
大手IT企業:問い合わせ対応の自動化と高度化
大手IT企業では、お客様からの問い合わせ対応に Azure OpenAI Service を活用した AI アシスト機能を導入しています。過去の膨大な問い合わせデータを AI に学習させることで、よくある質問には AI が自動で回答。これにより、24時間365日、お客様を待たせることなくスピーディな対応が可能になりました。また、複雑な問い合わせにはオペレーターが対応しますが、その際も AI が回答候補を提示することで、業務負荷の軽減と回答品質の均一化を実現しています。
大手電機メーカー:社内ナレッジの検索と有効活用
大手電機メーカーでは、全従業員が利用する社内向け AI アシスタントを Azure OpenAI Service で構築しました。社内規定や技術文書、過去の議事録など、社内のあらゆる場所に散在していた膨大な情報を横断的に検索し、必要な情報を対話形式で引き出せるようにしました。これにより、従業員は情報を探す時間を大幅に短縮でき、本来の業務に集中できるようになりました。また、これまで属人化しがちだった知識やノウハウが共有され、組織全体の生産性向上に繋がっています。
大手外食チェーン:商品データ管理の効率化
大手外食チェーンでは、店舗で扱う食材の賞味期限管理に Azure の AI サービスを活用しています。納品される商品の伝票はフォーマットがバラバラですが、画像認識 AI が伝票を読み取り、 Azure OpenAI Service がその中から賞味期限や商品名といった必要な情報を正確に抽出します。この仕組みにより、これまで手作業で行っていた煩雑なデータ入力作業が自動化され、入力ミスの削減と管理精度の向上を実現しました。
Azure OpenAI Service を導入するメリット
活用事例からもわかるように、 Azure OpenAI Service の導入は企業に多くのメリットをもたらします。特にご担当者様が知っておくべき3つの利点をご紹介します。
メリット1:エンタープライズレベルの高いセキュリティ
企業が AI を活用する上で最大の懸念点はセキュリティです。 Azure OpenAI Service は、 Azure の仮想ネットワークや閉域網接続を利用することで、インターネットから隔離されたセキュアな環境で AI を利用できます。また、入力したデータが OpenAI 社のモデルの再学習に使われないことが契約で保証されているため、企業の機密情報や個人情報を含むデータも安心して扱うことができます。
メリット2:既存の Microsoft 製品との優れた連携
多くの企業で利用されている Microsoft 365 ( Teams, SharePoint, Outlook など)や、業務自動化ツールの Power Platform とスムーズに連携できる点も大きなメリットです。例えば、 Teams の会議内容を AI が自動で要約して議事録を作成したり、顧客からのメールの内容を AI が解析して Power Automate で担当者に自動でタスクを割り振ったりと、普段使っているツール上で自然に AI の能力を活かすことができます。これにより、従業員は新しいツールを覚える負担なく、業務の生産性を向上させることが可能です。
メリット3:ビジネスに合わせた柔軟なカスタマイズ
前述の RAG や AI エージェントにより、自社のビジネスに合わせて AI を高度にカスタマイズできます。業界特有の専門用語を理解した高精度なチャットボットを開発したり、自社の設計図や技術文書に基づいた回答ができる専門家 AI を構築したりと、汎用的な AI サービスでは実現できない、自社ならではの競争優位性を生み出すことができます。
Azure OpenAI Service 導入時の注意点・ポイント
多くのメリットがある一方で、導入を成功させるためにはいくつか押さえておくべきポイントがあります。
ポイント1:スモールスタートでPoC(概念実証)から始める
いきなり全社的な大規模導入を目指すのではなく、まずは特定の部門や業務課題にスコープを絞って「 PoC( Proof of Concept:概念実証)」から始めることが重要です。小さな成功体験を積み重ねることで、AI 活用の効果や技術的な課題を具体的に把握し、社内の理解を得ながら段階的に適用範囲を拡大していくのが成功のセオリーです。
ポイント2:プロンプトエンジニアリングの重要性を理解する
AI から期待通りの、あるいは期待以上の成果を引き出すためには、的確な指示(プロンプト)を与えるスキル、すなわち「プロンプトエンジニアリング」が不可欠になります。どのような情報を与え、どういう役割を定義し、どのように質問すれば精度が上がるのか、社内でノウハウを蓄積し、共有していく体制づくりが求められます。
ポイント3:コスト管理の意識を持つ
Azure OpenAI Service は、API の呼び出し回数や処理したデータの量に応じて課金される「従量課金制」です。非常に便利である反面、無計画に利用すると想定外の高額な費用が発生する可能性があります。PoC の段階で利用量とコストの相関を把握し、本格導入時には利用状況を継続的にモニタリングするなど、コストを意識した運用計画を立てることが不可欠です。
まとめ
本記事では、 Azure OpenAI Service の概要から、その仕組み、具体的な活用事例、そして導入のメリットと注意点について解説しました。
Azure OpenAI Service は、エンタープライズレベルの高いセキュリティと、ビジネスニーズに合わせた柔軟なカスタマイズ性を両立した、法人向けの強力な AI 活用プラットフォームです。問い合わせ対応の自動化から社内ナレッジの有効活用まで、その応用範囲は広く、企業の生産性向上と新たな価値創造に大きく貢献します。
導入を成功させる鍵は、スモールスタートで成功体験を積み重ね、自社に合った活用法を見極めていくことです。この記事が、貴社の AI 活用推進の一助となれば幸いです。
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株式会社キカガクでは、 Azure OpenAI Service をはじめとする生成 AI の導入・活用支援を行っております。
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目次
- Azure OpenAI Service とは
- Azure OpenAI Service の定義
- なぜ今、Azure OpenAI Service が必要とされるのか
- ChatGPT との違い
- Azure OpenAI Service の仕組み
- 1. 最新AIモデルを、高信頼なクラウド基盤で提供する仕組み
- 2. 社外に出さない、閉じたネットワークでデータを守る仕組み
- 3. 他社の影響を受けない、データとモデルの「完全分離」の仕組み
- Azure OpenAI Service の活用事例3選
- 大手IT企業:問い合わせ対応の自動化と高度化
- 大手電機メーカー:社内ナレッジの検索と有効活用
- 大手外食チェーン:商品データ管理の効率化
- Azure OpenAI Service を導入するメリット
- メリット1:エンタープライズレベルの高いセキュリティ
- メリット2:既存の Microsoft 製品との優れた連携
- メリット3:ビジネスに合わせた柔軟なカスタマイズ
- Azure OpenAI Service 導入時の注意点・ポイント
- ポイント1:スモールスタートでPoC(概念実証)から始める
- ポイント2:プロンプトエンジニアリングの重要性を理解する
- ポイント3:コスト管理の意識を持つ
- まとめ
- ご案内
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