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【事例:DXアセスメント共同制作】DX人財育成の新基準を作る。トヨタ自動車が実現した全社規模のスキル可視化への挑戦
トヨタ自動車株式会社(以後、トヨタ)は、社内のデジタル人財育成・認定制度の一環として、オリジナルのアセスメントを制作しました。このアセスメントは、経済産業省・情報処理推進機構(IPA)のデジタルスキル標準(DSS)に準拠しながら、トヨタ独自の要件を組み込んで設計されたものです。このオリジナルアセスメントの一部の問題作成を、キカガクが担当しました。
すでに累計14,500人が受検し、多くの社員のデジタルスキル可視化につながっているこのアセスメントの企画・運営を担当されているトヨタ自動車 デジタル変革推進室の石井様、澤様、芝崎様に、取り組みの背景や成果について伺いました。
デジタル人財育成の現状と課題
デジタル領域にさらに注力するために、デジタル人財の評価基準を作り、可視化する
まず、皆様のご所属とお取り組みについて教えていただけますでしょうか?
石井様:私、澤、芝崎の3名ともデジタル変革推進室のデジタル人財育成グループに所属しております。このグループは、全社のデジタル人財育成企画と実施を担当しています。
今回実現されたデジタル人財制度がどのようなものか教えてください。
芝崎様:本制度は、経産省/IPAの「デジタルスキル標準(DSS)」に準拠する形で設計しています。デジタルスキル標準で定義されている5つの人財ロールそれぞれについて、必要な知識やスキルをレベル別に定義しました。また、一部の人財ロールについては元の定義を少しアレンジし、製造業に合わせたロールを設定しています。
社員の方々は、それぞれのロール・レベルに応じたアセスメントを受検し、要件を満たしていると認定された場合にデジタルバッジが付与される仕組みとなっています。この制度構築のために、客観的な評価基準としてのアセスメントが必要となりました。
こういった認定制度を作られた背景を教えていただけますでしょうか?
石井様:当社はメーカーとして長い歴史があるため、ハードウェアの資格認定制度は充実しています。一方で、デジタルスキルを認定する仕組みはまだありませんでした。しかしながら、企業としての競争力をより高め、より良いものづくりをしていくために、デジタル領域へさらに注力していく必要があります。そこで今回のような制度化が持ち上がったのです。
将来的には、デジタルスキルも人事評価制度に組み込んでもらいたいと考えています。そこで、まずは経産省のデジタルスキル標準に則った形で、社外でも通用する認定制度の構築に着手しました。
芝崎様:弊社内にも、既に各分野でデジタル技術を使って活躍している方が多くいらっしゃいます。独自に技術を磨いて貢献している人や、コミュニティを作って勉強会を開催している人など、大きな動きもあります。しかし、そういった方々になかなかスポットが当たらなかった現状がありました。今回の制度設計では、そういった方々のアピールにも使えるようにしたいという思いを込めました。
キカガクを選んだ理由
キカガクとなら理想のアセスメントを形にできる。そう思えた決め手は「寄り添う力」
アセスメントの作成にあたって、なぜキカガクを選ばれたのでしょうか?
石井様:前提として、過去にキカガクの研修を受講した経験があり、データサイエンスに関する深い知見を持っているという印象を持っていました。
さらに今回の商談では、担当の営業の方や実際に問題制作を担当する方が、我々の要望を丁寧に聞き取り、どのように実現できるかを具体的に提案していただけました。いくつかの企業様にご相談しましたが、大変共感を持って寄り添う姿勢を見せてくださり、ぜひ本取組みのパートナーとして一緒に活動させていただきたいと思いました。
澤様:キカガクがもともと提供しているDXアセスメントが魅力的だったことも理由の一つです。DXアセスメントとなると1回あたりの受検時間が1時間以上かかるものもある中で、キカガクは短時間でもポイントを押さえて知識や思考を問えるものになっていました。こういった設計は、社員が勤務時間内に無理なく受検しやすいアセスメントにしたいという我々の考えに沿うものでした。
芝崎様:また、システム面でも柔軟にご対応いただけました。当社には200以上の部署があり、組織改編も頻繁にあります。そのため、各社のプラットフォーム上で受検するのではなく、自社のシステムに組み込め、人事系のデータとも連携していきたいと考えていました。その点、キカガクは問題自体を納品してくれる形で対応してくださり、この要望にも応えていただけました。
キカガクに依頼して良かったと思っていただける部分はありましたか?
芝崎様:我々の要望を、精度高くアウトプットに反映していただけました。
受検者が「受けてよかった」「学びがあった」と感じられる問題を作るために、実践的で実際の業務改善につながる知識を問う問題にしたいと考えていました。ただ、そういった問題を実際に作るのは非常に難しく、生成AIなどに手伝ってもらうことはできても結局は人の頭で考えないと良い問題になりません。しかも今回はアセスメントとして複数回受検することも想定されるので、複数の問題パターンが必要です。
難易度が高く手間もかかる要求でしたが、長文問題ではストーリー性を持たせ、「あなたは工場の品質管理担当です」とか「製品の販売管理担当です」など、様々なパターンで解きがいのある問題を作ってくださり、私たちのフィードバックを基に何度もブラッシュアップしてくださいました。
石井様:キカガクの提案力と実行力には本当に感謝しています。今回は、データサイエンティスト、データエンジニア、データビジネスストラテジストといった異なる人材ロールにおいて、それぞれの特性を踏まえた実践的な問題を作成していただきました。問題の難易度も適切で、弊社が定義したレベルに合った設問設計ができていたと考えています。
アセスメントの効果と社内からの評価
累計1.4万人が受検。口コミでも広がる高評価なアセスメントに
実際に運用してみての手応えはいかがでしょうか?
石井様:弊社は社員が約70,000名おりますが、累計14,500名以上の方が受検し、合計で9,100個以上のバッジを発行することができました。
芝崎様:受検者からのアンケートでも、「これをきっかけにデジタルスキルについてさらに勉強していきたい」「アセスメントの結果をプロジェクトへのアサインなどのチャンスに繋げてもらいたい」といった前向きな声をいただいています。受けるだけで勉強になるからと、周りに受検を勧めてくださる方も多くいらっしゃいました。
また、当初からの目的でもある、社内のDX人財の人数を明確化できたという効果もありました。公的機関などからデータサイエンティストの人数について問い合わせをいただくようなケースもあるのですが、そういったときに根拠を持って明確な数字を報告できますし、自社のリソースを把握する人的資本経営の実現という観点でも良かったと考えています。
澤様:また、この取り組みが『第2回 オープンバッジ大賞』において「企業部門 奨励賞」を受賞しました。このアワードは、文部科学省、経済産業省、デジタル庁などが後援しており、優れたオープンバッジの取り組みが選出されています。
特に評価されたのは、経済産業省・情報処理推進機構(IPA)が定めるデジタルスキル標準(DSS)との整合性持つことで客観性を保ちながら、実践的なスキル評価を実現している点です。第三者から見ても価値が高いと判断いただけたことはありがたいです。
今後の展望
自動車業界全体のDX推進へ。デジタル人財のスキル可視化・育成の輪を広げていきたい
今後の展望についてお聞かせください。
芝崎様:まずは、今回のデジタル人財の定義と認定制度を社内でさらに展開し、重要かつ価値のあるものとしてより多くの方にアセスメントを受検していただきたいです。
石井様:本認定制度にまつわるインセンティブ設計も進めていきたいと考えています。評価などのインセンティブだけでなく、一定レベル以上のバッジ保有者限定のセミナーや特別なコンテンツへのアクセスといったより学ぶモチベーション向上につながるようなインセンティブも検討しています。
さらなる展望として、この取り組みを企業の枠を超えて大きく広げていきたいです。まずはトヨタ本体に加えてグループ企業へと展開していく予定ですが、最終的には、日本全体で、自動車業界はもちろん、業界を越えて活用できるような基準になるのが理想です。デジタルスキルを高めていく共通の基準として機能するようになれば、日本のデジタル競争力強化に貢献できるのではないかと考えています。
澤様:デジタルとものづくりの融合は、もはや選択肢ではなく必須だと考えています。ソフトウェアやデータ、サービス、ビジネス的な価値提供など、総合的なデジタルスキルを持つ人財を育成することで、業界全体の競争力向上に繋げていきたいと思います。
最後に
最後までお読みいただきありがとうございました。
キカガクでは業界業種問わず 1000 社以上の企業に導入いただき、DX 人材育成における様々な課題解決をご支援しております。
業界業種多種多様な業界 20 社以上の育成事例もご紹介しておりますので、ご興味のある方はぜひご参考ください。
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