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DXビジョンとして「デジタルの力で、世界中の現場を快適に、携わる人々を幸せに」を掲げ、全社一丸となってDXを推進する住友重機械工業株式会社(以下、住友重機械工業)。
同社は2022年からグループ会社を含む社員約9,000名を対象とした大規模な「DXリテラシー教育プログラム」に取り組んでいます。全社員を対象とした背景には、「1人では変革は起こせない」「DX推進には風土醸成が不可欠」という考えがありました。
受講に向けた動機付けの徹底と、ICT部門・人事部門の緊密な連携により、社員のリテラシー保有率を大幅に向上させるという成果を収めています。大規模組織ゆえの障壁をいかに乗り越え、実務に活かせる学びを実現したのか。ICT本部 DX推進部 グランドデザイン統括グループの髙野 光浩 様、松本 大輔 様、人事本部 人材育成センターの浄閑 直也 様にお話を伺いました。
課題・背景
解決策・実施した研修
効果・成果
住友重機械工業 髙野様(以下、髙野様):まず、全社的なDXグランドデザインを策定し、その中で「デジタルの力で、世界中の現場を快適に、携わる人々を幸せに」というDXビジョンを示しています。

DXとはつまり「デジタル変革」であり、変革は一部の人間だけで成し遂げられるものではありません。少数の専門家だけを育成しても、周囲の理解や協力がなければ実務は変わりません。DXを推進するには、組織全体のリテラシーを底上げし、風土を醸成することが欠かせないという課題感がありました。
そこで、2022年度からDXリテラシー教育を開始しました。初年度の実施を通じて見えてきたさらなる課題は、風土醸成は1年だけで成し得るものではなく、何年もかけて継続して取り組んでいく必要があるということです。
各社員のDXリテラシーを客観的に把握した上で、毎年向上させていけるような教育プログラムを組み立てる方針を掲げ、リテラシーを正確に計測できる教材を探す中で、キカガクのDXリテラシーアセスメントに出会いました。
髙野様:事前アセスメントで個々の弱点を可視化し、それに応じたeラーニングを受講、最後に再度アセスメントで定着度を測定するという構成のプログラムです。対象は、グループ会社を含む国内のほぼ全社員にあたる約9,000名です。教材には、キカガクの「DXリテラシー標準アセスメント」および「問題演習型DXリテラシー向上コース」を利用しています。

髙野様:教育を受ける前の「マインド」の醸成に注力しました。いくら効果的な教材を用意しても、受講者がその必要性を感じていなければ効果は半減します。そこで、社長やICT本部長からのメッセージ発信や、DXの重要性をイメージしてもらえる動画を制作するなど、動機付けのためのコミュニケーションを徹底しました。
住友重機械工業 浄閑様(以下、浄閑様):人事の立場からも、強制ではなく「納得感」を重視しました。なぜ今、私たちにデジタルが必要なのか。その意義に腹落ちすれば、社員は自発的に動き出します。この「自発性」を引き出すことこそが、大規模な教育を成功させる鍵となります。

髙野様:人事部門との連携は極めて重要でした。弊社では、人事本部に加えて、各事業部門にも人事担当者が配置されています。
私が所属するICT本部と浄閑が所属する人事本部が密接に連携し、さらに各部門の人事担当者を通じたネットワークを活用することで、進捗管理や受講促進をきめ細かく実施しました。この多層的なフォロー体制が、高い受講完了率に繋がったと考えています。
浄閑様: 各部門の責任者や人事担当者を巻き込み、受講率の向上を「部門の責任」として明確にしたことが大きいです。事務局から一方的に促すのではなく、現場に近い担当者からリマインドをかけてもらう体制を整えました。
その際、部門ごとの受講率を「見える化」して共有しました。「今のあなたの部門は何%です」と具体的な数字を示すことで、良い意味での競争意識を醸成し、会社としての本気度を伝えることができました。他部門と比較しての数字を見せることで、自部門ももっと頑張ろう、数字を上げよう、という意識付けができていたように思います。
住友重機械工業 松本様(以下、松本様):執行責任者などの、役員クラスが集まる場でDX教育プログラムについて説明することができたのも大きかったです。どういう目的で、どういう目標設定をして、どういうことをやるのか。上位役職者に直接プレゼンをしてコンセンサスを得る場を作ってもらえたことで、トップダウン、ボトムアップ両方からのアプローチができたのではないかと思います。

髙野様:お互いに目線を合わせて取り組んでいたというのはあります。このDX人材育成に関しては、ICTの課題だとか人事の課題だとかそういう区分けはなく同じ目的を持って進めていたので、自然と連携はうまくできていました。
浄閑様:DXの目的は、ただデジタルツールを導入することではありません。価値創造企業を目指していくためのDXであり、そのためにDX人材を育成する。この上位目的をICT部門と人事部門が共有していたからこそ、部門の壁を越えてタッグを組むことができました。
浄閑様:人事が施策を推進する上で重要な要素のひとつが、「人的資本経営」の観点から、その取り組みを社外にどう示せるかという点です。今回の取り組みは、単なる社内教育に留まらず、全社的なDXリテラシーの向上という具体的な成果を、有価証券報告書にも記載する形で対外的にアピールできるものとなりました。これにより、人材育成への投資の妥当性が明確になり、取り組みとしての評価も高まったと感じています。
また、アセスメントによって個々のリテラシーがスコアとして可視化されたことで、各事業部門のデジタル習熟度を正確に把握できるようになりました。その結果、部門長や管理者との間で共通言語に基づいた建設的な議論が可能になり、より高度な教育を実施する際の対象者の選抜等にも活用できる見込みです。
DXリテラシー教育プログラムにキカガクのサービスを採用した決め手は何でしたか?

浄閑様:最大の決め手は、経済産業省とIPAが策定した「デジタルスキル標準(DSS)」に早い段階で対応していた点です。共通言語としての標準指標を用いることで、教育の妥当性を社内に明確に示すことができると考えました。
髙野様:講座の選定に当たっては、現場視点での「分かりやすさ」も重視しました。全社員約9,000名の中には、ITにほぼ携わったことがない方も多くいます。全社員が受講するならば、これまでITに携わってこなかった方でも理解しやすい内容でなければいけません。
事務局でトライアル受講を行い、非IT職の社員でも挫折せずに学べる難易度と解説の質を備えているかを見極めました。キカガクのコンテンツは、そのバランスが非常に優れていました。
採用にあたって多くのフィードバックやご要望をいただき、弊社側もそれを基にサービスやUI、アセスメント関連の講座をブラッシュアップしてきたという経緯があります。
髙野様:継続的な取り組みとして続けていくためには、受講者一人ひとりの学習体験を良くすることが欠かせません。そこで、受講者からの要望を基に、受講画面のUI改善や、アセスメント結果に沿ったeラーニングコンテンツの拡充などを粘り強くリクエストさせていただきました。
特にUIの部分は、PC操作に慣れていない社員でもストレスなく受講できる仕組みにするためにはどうすれば良いかを考え、何度も議論を重ねました。
キカガクさんの素晴らしい点は、こうした当社の要望を単なる「発注」として受けるのではなく、目的を共有するパートナーとして、膝を突き合わせて議論してくれたことです。ときにはエンジニアや講師、コンテンツ開発の方なども打ち合わせに同席し、改善案の実行をその場で意思決定するなど、非常に協調的なパートナーシップを築けました。

浄閑様:キカガクさんの姿勢で印象的だったのは、毎回こちらの要望を真摯に受け止めてくださることです。困難なリクエストに対しても、その場ですぐに断るのではなく、常に「どうすれば実現できるか」を共に考えてくれました。
松本様:海外拠点での接続トラブルを想定した対応なども、最後まで粘り強く向き合ってくれたことは非常にありがたかったですね。一般的なベンダーであれば「仕様外」と切り捨てられるような局面でも、解決策を求めて共に走り続けてくれました。
髙野様:外部パートナーを選定する際は、単なる「委託先」ではなく、目的意識を共有できる相手を選ぶ必要があります。提示した要件をこなすだけでなく、目的達成のために互いに知恵を出し合える関係性を築けたことが、プロジェクトの成功に繋がったと感じています。
髙野様:動機付けと人事部門をメインとした受講促進の取り組みにより、2024年度の受講完了率は97.2%に達しました。アセスメント結果からわかるリテラシー保有率は2023年度には51.5%でしたが2024年度には84.0%と32.5pt向上しました。数値面での成果は想定以上です。

また、本取り組みは、一般社団法人PMI日本支部が主催する「PM Award 2025」において、優秀プロジェクト賞および特別賞としてアジアパシフィック賞を受賞いたしました。外部アワードでの高い評価も、本プロジェクトの成果を裏付けるものとなりました。
※「PM Award 2025」受賞の詳細は、以下住友重機械工業様のプレスリリースよりご覧いただけます。
「DXリテラシー教育およびマインド醸成プロジェクト」が「PM Award 2025」優秀プロジェクト賞および特別賞アジアパシフィック賞を受賞
髙野様:明確な変化を感じています。アセスメントの結果が想定以上に低いことに危機感を持ったという声は多く、自発的に学習を進める方法はないかと事務局に問い合わせてきた受講者もいました。
逆に、講座を受講してアセスメントの結果が向上し、それがDXに対するモチベーションにつながったという声もあります。3年ほど継続していると、アセスメントの評価もBからA、AからSと上がっていき、自分の成長を感じるようです。
ICT本部の相談窓口に、DXリテラシー教育の受講をきっかけに自ら現場の課題や解決策を相談してきてくれる社員も出てきており、確実な手応えを感じています。
浄閑様:管理職層からも「Sランク以上の高いスキルを持つ人材を教えてほしい」といった声が寄せられるようになりました。アセスメントの結果を、適材適所の配置や個々の育成計画に活かす動きが出てきています。教育が単なる「学習イベント」に留まらず、組織を強くするための戦略の一部として機能し始めている手応えを感じています。
髙野様:全社的な底上げは進んだので、次はリテラシーを「実務に応用するスキル」へと引き上げる段階です。現在はDSSに基づき、ビジネスアーキテクトやデータサイエンティストを育成するプログラムを強化しています。既にキカガク様とDX推進人材の役割を体験する講座の開発を進めており、適性に応じた選抜教育を次なるステージとして始動しています。
松本様:今後はICT・人事だけでなく、事業部門を加えた「三位一体」の体制をより強固にしていきます。理想は、各部門が自律的に現場に必要な人材を定義し、主体的に教育を回せる状態です。この自律的なサイクルこそが、DX投資を確実な「価値創出」と「利益」に繋げる鍵になると考えています。

髙野様:捉えどころのない「風土醸成」に単年度で成果を求めるのは困難です。しかし、数年間の継続とアセスメントによる客観評価をセットにすれば、組織は確実に変わると確信しています。マインド醸成から部門間連携まで、全体を仕組みとして設計することが成功への近道だと思います。
浄閑様:「DXは人」と言われる通り、人材育成なしにプロジェクトの成功はありません。現場の忙しさを理由にせず、全社的なビジョンを「上位目的」として共有して一歩踏み出す。その後のデータに基づいた改善の繰り返しが、組織を変える唯一の方法だと私たちは実感しています。
松本様:取り組んで分かったのは、変わることを望んでいる社員は想像以上に多いということです。約9,000名という規模であっても、意欲に応える場を提供すればポジティブな反応は必ず返ってきます。社員の期待に応え、草の根から風土を変えていく。その第一歩をぜひ踏み出していただきたいです。

最後までお読みいただきありがとうございました。
キカガクでは業界業種を問わず 1000 社以上の企業に導入いただき、DX 人材育成における様々な課題解決をご支援しております。
20 社以上の育成事例もご紹介しておりますので、ご興味のある方はぜひご参考ください。

また、弊社キカガクが提供しているサービスの特徴やコース詳細についての資料は下記になります。コースごと学習内容の詳細やスケジュール等や今回ご紹介してきれていないコースやサービスもご用意あります。DX 研修を検討されている方のご参考になれば幸いです。
ご担当者
DXスキル種別
ビジネスアーキテクト
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サイバーセキュリティ
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デザイナー
課題
全社のリテラシーを向上させるとともに、学んだ知識を実務に生かせる人材を育成したい
DXリテラシーレベル
入門
業界
機械
導入したソリューション
DXアセスメント導入したeラーニング
問題演習型DXリテラシー向上コース
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株式会社ブリヂストン

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