【導入事例も紹介】経済産業省が重要視する「リスキリング」とは?

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【導入事例も紹介】経済産業省が重要視する「リスキリング」とは?

新しい技術の台頭や産業構造の変化により、現在の職場で求められるスキルは常に変わり続けています。

それに伴い、労働者が自身のキャリアを維持し、新たな機会を捉えるためには、その変化に適応し、新しいスキルを学び続けることが求められます。ここで注目されるのが、「リスキリング」という概念です。

本記事では、経済産業省が重要視している「リスキリング」について解説いたします。実際の取組み事例を交えて紹介いたしますので、ぜひご参考ください。

リスキリングとは何か?

経済産業省は、「リスキリング」を以下のように定義しています。

新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること

出典:リスキリングとは-DX 時代の人材戦略と世界の潮流-

DX を推進していく上で新しいスキルの習得が必須になってくることもあり、リスキリングと DX 教育はほとんど同義で語られることが多いです。

リスキリングの重要性

出典:世界経済フォーラム「The Future of jobs」

リスキリングの重要性として、昨今テクノロジーの急速な発展や産業の変化により、一部の職種は廃れ、新たな職種が登場しています。

このような変動の中で働く全ての人々が自身のスキルを更新し、新たな仕事に対応できるようにするためにはリスキリングが不可欠です。

上図は、「人間」と「機械」による作業時間の推移となりますが、2020 年には「人間」の作業時間が約 70 % だったのに対し、2025 年には約 50 % と半分近くまでなっています。

自動化で実現される「機械」による仕事範囲の拡大は、労働者の雇用に大きく影響を与えることが想定されています。

レポートによると、2025 年までに、世界の労働者の 15 %が自動化による混乱のリスクにさらされ、平均 6 %の労働者は完全に仕事が機械に取って替わられることが想定されています。

リスキリングとアップスキリングの違い

リスキリングとアップスキリングは、どちらも個人のスキル開発を目指す概念であり、時折混同されますが、それぞれ異なる目的と手法を持っています。

アップスキリングは、既存のスキルを深化や拡大するための学習を指します。

一方、リスキリングは、新たな職種や職務に適応するために、全く新しいスキルを学ぶことを意味します。

アップスキリングは既存の職種での昇進や専門性を向上させるための手段であるのに対し、リスキリングは職業の変更や新たなキャリアパスを追求するための手段と言えます。

リスキリング

新たな職種や職務に適応するために、全く新しいスキルを学習

職業の変更や新たなキャリアパスを追求するための手段

アップスキリング

既存のスキルを深化や拡大するための学習

既存の職種での昇進や専門性を向上させるための手段

経済産業省が推進するリスキリングの取り組み

近年、経済産業省は、技術の進化と産業構造の変化により必要となる新しいスキルを身につけるための「リスキリング」の取り組みを強化しています。

ここでは、その政策の背景、具体的な取り組み、そして成功事例について紹介いたします。

経済産業省のリスキリング政策の背景

経済産業省は、人工知能(AI)やロボット技術といった先端技術の急速な発展が、労働市場に大きな変化をもたらすと認識しています。

一部の職種では自動化が進み、新たなスキルが求められる一方で、新たな産業や職種が生まれ、それに対応するための新しいスキルや知識が必要となります。

このような状況を踏まえ、経済産業省は、従業員が新しいスキルを習得し、職業生涯を通じて雇用可能性を保つためのリスキリングの取り組みを推進しています。

具体的な取り組みとその進行状況

出典:経済産業省の取組

経済産業省のリスキリングの取り組みは、教育・研修制度の拡充、企業との連携、そして情報提供・啓発活動といった形で進められています。

教育・研修制度の拡充では、具体的なスキル習得のための新たな教育プログラムを開発・提供するとともに、その利用を支援しています。

上図を見ていただきますと、日本では人材投資が諸外国と比べ進んでいないこと、また社外学習・自己啓発を行っていない人の割合が約 50 % と自主的に学習を進めていないことがみてとれます。

そのような背景もあり、企業との連携では企業が自社の従業員のスキル開発に投資することを促し、それを支援する政策を展開しています。

情報提供・啓発活動では、リスキリングの必要性や利点、具体的な方法等を広く伝えることで、リスキリングの取り組みを促進しています。

リスキリングのメリット

では、リスキリングによるメリットはどのようなものが得られるでしょうか。ここでは考えうる 3 点についてご紹介いたします。

人材不足の解消

出典:企業 IT 動向調査 2022

こちらは企業 IT 動向調査に掲載されております、売上高別人材不足対策です。

どの規模の売上の企業も、不足スキルを持った人材の採用と外部リソースの活用により人材不足を補っており、リスキリングが進んでいないことがわかると思います。

ただ、先程の人材不足のデータを見ていただいて分かる通り、不足スキルを持った人材の採用というのはとても難しいです。

外部リソースの活用は継続し、どこで補うかで注力されたのがリスキリングになります。

実際に社内で IT 人材を育成すれば、もともとのドメイン知識、つまり自社事業に精通した IT 人材を多く揃えることができます。

また、雇用機会の維持にもつながるので、人材の効率化を図れるメリットもあります。

業務の効率化

リスキリングによる社内全体での DX 推進が行われることで、社内での IT リテラシーが向上し実務課題を現場レベルで発見し、効率化や自動化が期待できます。

例えば、データ活用のスキルが身に付けば、これまで検討や調査にかかっていた時間が短縮され他の業務に使える時間が増えますし少ない時間で質の高い仕事ができると、残業や休日出勤が減り従業員のワークライフバランスの実現も期待できたりもします。

新たな価値の創出

新しいスキルを身につけることで、身の回りに起きている課題に対して違った視点で見られるようになり、業務改善や新しいサービスにもつながってきます。

商品・サービスを開発するときに独創的な発想を取り入れたり、業務の進め方を新たな形にしたりするなど、社内に良い変化を生み出せるようになります。時代の変化が目まぐるしくなっているため、アイデアを取り入れながら変化し続ける姿勢が企業に求められます。

リスキリングへのアプローチ:個人と企業のための戦略

リスキリングは、今後ますます重要になってくる取り組みです。

個々の職業生涯を通じての適応力向上という観点から、または組織全体の競争力を維持し強化するための戦略としても考慮していく必要があります。

ここでは、個人がリスキリングに取り組むための具体的なステップ、企業がリスキリングを推進するための戦略、そしてリスキリングに関連する課題とその解決策について紹介いたします。

個人がリスキリングに取り組むためのステップ

リスキリングへの取り組みは、まず自分自身のキャリアに対する理解から始めます。

自身の現在のスキルセット、目指すキャリアパスを整理し、それに基づいてリスキリングにて学ぶべきスキルを特定することが重要です。

また、必要な新しいスキルを習得するための学習計画を立て実践していくことも重要です。

オンラインコース、書籍、ワークショップなどの様々な学習リソースを活用し、学習したスキルを実際の職場で実践しながらスキルを磨き続けることが求められます。

企業がリスキリングを推進するための戦略

企業がリスキリングを推進するための戦略は、その企業のビジネスモデルや従業員のニーズにより異なりますが、共通する要素としては、まず組織全体のスキルギャップを理解し、必要なスキルを特定することがあります。

次に、そのスキル習得を支援するための教育・研修プログラムを提供し、従業員のリスキリングを奨励します。そして、リスキリングの効果を定期的に評価し、必要に応じてプログラムを更新します。

リスキリングにおける課題と解決策

リスキリングは多くの潜在的な課題を伴います。

例えば、必要なスキルの特定、リスキリングプログラムの時間や費用、そして新たなスキルの実務への応用などが挙げられます。

これらの課題に対する解決策として、スキルギャップ分析の導入、柔軟な学習スケジュールの提供、企業内のリスキリングプログラムの補助金制度、そしてリスキリング後のキャリアサポートなどが考えられます。

リスキリングで活用できる補助金・助成金は以下のブログでまとめております。ぜひご参考ください。

【個人と企業事例紹介】リスキリングで使える補助金・助成金まとめ
【個人と企業事例紹介】リスキリングで使える補助金・助成金まとめ

リスキリングの企業事例

ここまででリスキリングとは何か、また導入する上でのメリットをご紹介いたしました。本章では、リスキリングをどのように進めているのか国内外の事例をご紹介していきます。

国内外の事例

海外では 10 年程前からリスキリングの考え方が始まっており、成功している事例も少なからずあります。日本でも 2020 年を境にリスキリングの流れが大企業を中心に動きだしています。

以下、国内外含めた事例をご紹介いたします。

AT&T

(国外)

AT & T では 2008 年の段階で IT 人材不足の現状に
取り組まなくてはいけない事実を認識しており、
2013 年にはリスキリングに着手。
従業員が今後、身につけるべきスキルの見直しを行い、
2020 年までに 10 億ドルを投資し、
10 万人のリスキリングを実施し、社内技術職の 80 %以上を社内異動によって充足。

Amazon

(国外)

一人当り 75 万円かけ、2025 年までに
米アマゾンの従業員 10 万人をリスキリングをすると発表。
非技術系人材を技術職に移行させる仕組みや、
技術系人材を更にスキルアップさせるための環境を用意。

ウォルマート

(国外)

VR を用いて、
イベントや災害対応などの疑似経験を積める環境の整備と、
小売の DX に対応できるスキルの習得を店舗従業員にできるように
バーチャル環境の整備。

マイクロソフト

(国外)

コロナ関連による失業者 2500 万人を対象にリスキリングを無償支援。
LinkedIn、GitHub とともに無償でリスキリング講座を提供。

富士通

(国内)

変革の為の投資として、高度人材の獲得と内部強化(リスキリング)に注力。
社内 DX の更なる促進に向け、
データの徹底活用に向けたプロセスやシステム刷新によるデータドリブン経営の強化。
全社員(13 万人)が DX 人材になることかつ、
オフィスのあり方や働き方の見直しを図る DX 人材への進化 & 生産性の向上、
DX Officer を中心に全社・部門の変革テーマへの取り組む。
また、お客様と従業員の「VOICE」を収集し経営判断や施策実行をする全員参加型、
エコシステム型の DX 推進を行っている。

日立製作所(国内)

国内グループ企業の全社員約 16 万人を対象に、DX 基礎教育を実施。

住友商事(国内)

1000 人に AI を基礎から学ぶオンライン教育を実施。

三菱商事(国内)

1000 人に年次年齢問わず希望者を募り受講。

丸紅(国内)

50 人に技術的にも AI を扱えるように実践講座の提供。

まとめ:未来を見据えたリスキリング

テクノロジーの進化、産業構造の変化、そして働き方の多様化といった要素が、私たちの職業環境を大きく変えつつあります。

このような背景のもとで、リスキリングは個人や組織、社会全体にとって重要な戦略となっています。

本章では、リスキリングが未来の労働市場に与える影響、経済産業省が見据えるリスキリングの未来、そして進化し続ける市場環境に対応するためのリスキリングの進め方について紹介いたします。

リスキリングが未来の労働市場に与える影響

リスキリングは、個々の労働者に新たなキャリアの可能性を開き、より柔軟で適応力のある労働力を形成することで、労働市場全体にも大きな影響を及ぼします。

労働者が新しいスキルを習得し続けることで、企業は新たなビジネスチャンスを追求しやすくなり、経済全体の生産性や競争力も向上すると予想されます。

また、リスキリングは労働者が自身のキャリアをコントロールし、終身雇用の枠組みから脱却するための一助ともなり得ます。

経済産業省が見据えるリスキリングの未来

経済産業省は、技術の進化とともに変化する職業環境に対応するため、リスキリングの取り組みを今後も強化していく方針を示しています。

具体的には、教育・研修制度の更なる充実、企業との連携強化、そして情報提供・啓発活動の拡大といった施策を進めていくことで、リスキリングの取り組みを一層深化させていく予定です。

進化し続ける市場環境に対応するためのリスキリングの進め方

市場環境が変化し続ける中で、リスキリングの取り組みを進めるためには、個々のスキルニーズの把握とそれに対応した学習リソースの提供、そしてスキル習得の機会を平等に提供することが重要です。

具体的には、新たなテクノロジーやビジネスモデルに関する教育・研修、自己学習を支援するリソースの提供、そしてリスキリングの取り組みを社会全体で支援・推進することが求められます。

本記事を参考に、リスキリングが未来の労働市場に与える影響、経済産業省のリスキリングへの見解、そして市場環境の変化に対応するためのリスキリングの進め方について理解を深めていただき、効率的かつ最適なリスキリング戦略を取り組んでいただければと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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