株式会社INPEX 様

目次
「既存業務は問題なく回っている。だからこそ、変革の必要性を感じにくい」。そんな課題を抱えていた株式会社INPEX(以下、INPEX)の財務・経理本部。
同本部は、デジタルを武器に自ら業務課題を解消できる「人材の輩出基地」を目指し、業務効率化の思考法から各種ツール活用方法までを網羅した「デジタル・リテラシー講座」を実施しました。新卒から役員クラスまでが共に学び、成功体験を積むことで、組織カルチャーはどう変容したのでしょうか。
プロジェクトを推進した財務・経理本部 コーポレート経理ユニット ジェネラルマネージャーの 山村 直之 様、同ユニット 経理基盤開発グループ マネージャーの 萩原 貴仁 様、そしてDXリードを務める 伊藤 雅俊 様に、その舞台裏を詳しく伺いました。
課題
解決策・実施した研修
効果・成果
INPEX山村様(以下、山村様):DXの推進は会社としての命題ですが、トップダウンでDXのための組織を新設するだけでは、掛け声だけで終わってしまうリスクがあります。
それよりも、ボトムアップで組織内にDX感度の高い人がポツポツと生まれ、その人が周りの人に話したり教えたりすることでじわじわと組織にDXを浸透させていった方が、最終的に目指す姿には早く到達できるのではないか、という仮説の下で始まったのが今回のプロジェクトです。
また、常に大量の数値データを扱い、反復的なプロセスを処理する必要がある財務・経理部門は、デジタル技術との親和性が極めて高いはずだという確信もありました。この部門を、社内各所にDX人材を送り出す「人材の輩出基地」へと進化させる。そのための第一歩が、このデジタル・リテラシー講座でした。

INPEX 萩原様(以下、萩原様):私たちが例え話としてよく使うのが「木こりのジレンマ」という寓話です。「忙しくて斧を研ぐ暇がない」という木こりが、刃こぼれした斧で効率の悪い作業を続けてしまうという話です。
これと同じで、日々の業務が回っている限り、あえて時間をかけて斧を研ぐ=デジタルスキルを磨くモチベーションが生まれにくくなります。しかし、技術面の進歩が著しい昨今において同じやり方を踏襲し続けることは、大きな効率化のチャンスを逃すことにほかなりません。このままでは長期的な沈滞を招く。そんな強い危機感を持っていました。
INPEX 伊藤様(以下、伊藤様):受講生が自らの業務に潜む課題に気づけるような講義プログラムの設計を重視しました。具体的には、業務プロセス整理の思考方法を学んだうえで、ハンズオンで社内標準の各種ツールの活用方法を学ぶという流れです。「このツールのこの機能を使えば、今の作業を劇的に楽にできるのでは?」という自発的な気づきをいかに引き出すかを考え抜きました。
山村様:発案者が本部長(CFO)ということもあり、そこは強力なトップダウンの旗振りがありました。号令はトップから、浸透はボトムから。この組み合わせが重要です。
経営層が「やるぞ」と明言し続けることで、現場の参加意欲や業務調整への許容度が高まります。そうでなければ、意欲のある社員でも、周囲の目を気にして手を挙げられなくなってしまいますから。

萩原様:多くの企業と同様に、Excelの属人化は課題でした。しかし、本質的な課題はツールの使い方ではなく、業務プロセス自体の設計が整理されていない点にあると感じていました。
整理されていないプロセスを無理に自動化しても、メンテナンス不可能な「複雑な負の遺産」を生むだけです。将来的にデータドリブンな組織を目指すなら、こうした根本的な構造からメスを入れる必要がありました。
伊藤様:前年度に実施した第1回の研修は、別の外部ベンダーに協力を依頼し、共同で方向性の検討と講義内容の整備を行いました。こちらも成功と言える結果でしたが、さらに内容をブラッシュアップしたいという想いがありました。第2回以降の講座では、自社だけでは手の届かない最新の知見や網羅しきれなかった領域をアップデートするため、別の専門家をパートナーに迎える方針としました。
山村様:内製化という選択肢もあるのかもしれませんが、外部の専門家による客観的な視点や説得力を活用することが、組織変革においては重要なファクターだと考えました。
伊藤様:単なるツール操作方法の研修ではなく、その基盤となる「思考法(フィロソフィー)」を伝えたいという私たちの趣旨に、最も深く共鳴してくれたのがキカガクさんでした。

山村様:キカガクの皆さんの圧倒的な「熱意」もありました。基礎的な学習から伴走し、共に組織を変えていこうという情熱を持って向き合ってくれる姿勢に、大きな期待を抱きました。
萩原様:多くの企業が定型カリキュラムの提案に留まるなか、キカガクさんだけは私たちの意図を汲み取り、より良くするための具体的なブラッシュアップ案を提示してくれました。その提案力と柔軟性が、最終的な信頼に繋がりました。
伊藤様:私たちが用意した資料をベースに、「なぜこの変更が必要か」という理由とともに、改善提案をいただきました。単なる受発注の関係を超え、パートナーとして喧々諤々の議論を重ねた結果、我々の目的に対して純度の高いプログラムが出来上がったと感じています。
具体的な変更点としては、 研修の冒頭の「BPR(業務プロセス再設計)」について、複雑化した現状(As-Is)を可視化し、無駄を削ぎ落とした理想(To-Be)をまず描くワークを追加。ツールの活用前に「その業務は本当に必要か」を問い直し、参加者の気付きを深めるような構成にしました。

萩原様:データ活用を見据えた「データの持ち方」も今回の研修で最も重要な「種まき」の部分でしたので、重点を置きました。研修では、属人化したExcelから脱却し、「コンピューターが食べやすい形にデータを整えること」の重要性を説いてもらいました。具体的には、縦持ちデータなどの「綺麗なデータ構造」を共通言語化することです。
伊藤様: 架空の例題ではどうしても「自分ごと」になりにくいため、実際の業務データや社内での事例をグループワークやワークショップのテーマとして採用しました。自社のデータを自らの手で可視化・自動化する経験を通じて、ツール習得はあくまで課題解決の「手段」であることを再認識してほしかったのです。
山村様:第1回で確立した研修の良さを活かしつつ、キカガクさんの知見によって「なぜそのデータの持ち方が必要なのか」という理論的・根本的な視点が強化されました。その結果、非常に納得感の強い、実務に直結するプログラムへとブラッシュアップされたと感じています。
伊藤様:現場の担当者が手を動かすのはもちろんですが、指示を出すラインマネジメント層が「デジタル技術で何ができるか」を理解していなければ、適切な指示は出せません。共通言語を持つことで、組織としての改善スピードを上げる狙いがありました。実際に役職者からも「判断の解像度が上がった」という前向きな声をもらっています。
山村様:現場の若手からは「役職者こそ受けるべき内容だ」という感想もあり、組織全体の目線を合わせる非常に良い機会になりました。
萩原様:私は今回の取り組みを「種まき」だと捉えていますが、すでにいくつか「小さな花」が咲き始めています。最も分かりやすい成果は、業務の即時改善です。業務を改善しようという思考が生まれ、これまで数時間を要していたデータの転記作業が研修中に作成した改善施策によってボタン一つ、わずか数分で完結するようになった事例が出ています。
山村様:また、停滞していた開発プロジェクトが、研修での学びを機に再始動した例もあります。何より大きいのは、現場に「自分たちの手で業務を変えられるんだ」というポジティブな空気が生まれたことです。単なるスキル習得を超えて、業務への向き合い方そのものが前向きに変化したと感じています。

萩原様:既存のものを一気に変えるのは難しいですが、「将来を見据えたデータの持ち方」という概念が社員の頭に植え付けられたことも大きな収穫です。表の作り方や項目の命名規則など、足元の地味な部分ではありますが、非常に重要な改善です。データの構造化の概念といった基礎が共通言語になったことで、データの利活用に対する認識が組織全体で底上げされました。
山村様:受講者の口コミが大きかったと思われます。どのような内容だったのかを聞いた人が「自分でもできそうだ」「その分野は弱いから受けてみよう」と思ってくれたのではないでしょうか。
伊藤様:特に第1回は、内容もよくわからない企画が立ち上がって、そこに手を上げるのは勇気が必要だったのではないかと思います。しかし、その第1回目の参加者が周りにポジティブなコメントを伝えてくれたからこそ、2回目、3回目と熱量が高まっていきました。
2回目、3回目については、応募締め切り後に入社した当年の新入社員から「どうしても受けたい」と直訴があり、急遽枠を広げたこともありました。
萩原様:講座の成果を社内で可視化したことも効果的でした。講座で習得した業務改善思考とツールを使って実際に作ったアプリケーションなどを発表する会では、CFOからも驚きと激励の声がありました。
また、年末に実施した財務・経理本部の社内イベントで特に優秀だった事例を表彰するなど、成功体験を盛り上げる動きもしています。
山村様:我々はいろいろな部署と接点を持つので、財務・経理部門が「デジタルを使いこなして業務を楽にしているらしい」という噂が他部署に波及し、全社的なDXの機運が高まっていく。そんな未来を目指しています。まずは自分たちの足元を固め、この成功体験をINPEX全体の変革へと繋げていきたいと考えています。

伊藤様:今回の研修で作られたツールを「一過性の成功」で終わらせないことが重要です。現場の人間が自らシステムを補完・強化できる基盤を維持するために、今後はガバナンスと教育を両立させていく必要があります。
「作ったはいいがメンテナンス不能」という事態を防ぎつつ、信頼性の高いデータを生み出し続けるプロジェクトに、腰を据えて取り組んでいく考えです。
萩原様:その通りです。AIを真に使いこなすためには、その前段階として「AI-Ready」なデータが蓄積されていることが大前提となります。形式がバラバラなデータでは、AIの恩恵を最大化できません。今回の研修で浸透した「データの構造化の作法」が活きてくる部分です。
山村様:一方で、AIが進化しても「数字の違和感」に気づく人間特有の感性は、我々財務・経理に不可欠なものです。デジタルによる正確性と、人間による高度な判断業務。これらを高次元で融合させることが、次世代の財務・経理職が担うべき役割だと考えています。
伊藤様:キカガクさんには、単なる研修ベンダーではなく、私たちの組織変革を共に歩む「真のパートナー」としての伴走を今後も期待しています。今後は、新入社員教育におけるデジタルリテラシーの標準化や、より高度なAI活用スキルの習得に向けた連携を深めていきたいですね。

最後までお読みいただきありがとうございました。
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第一三共株式会社

全新入社員をDXの担い手に。2ヶ月の研修がもたらした、新人が起点となる業務変革の連鎖
株式会社ブリヂストン

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